スパニッシュ・オデッセイ

スペイン語のトリビア
コスタリカ、メキシコ、ペルーのエピソード
パプア・ニューギニア、シンガポールのエピソード等

妖鳥 “La Ju Del León”(ラ・フー・デル・レオン)

2021-02-13 18:12:20 | コスタリカ
 メキシコ時代の友人が書いた作品をご紹介します。さまざまな資料を基に再構築した武蔵です。是非ご一読ください。『巌流島の決闘』はあっと驚く結末です。
   
 「コスタリカの伝説集」の中で紹介されている妖怪の一つに “La Ju Del León”(ラ・フー・デル・レオン)というのがある。
  

“La Ju De León” ともいうようである。León は「ライオン」のことで、かつてはスペインに「レオン王国」という国もあった。詳細はウィキペディア「レオン王国」を参照されたい。
 ライオンは現在はヨーロッパには生息していないが、かつてはヨーロッパにも生息していたらしい。ヘロドトスにも記されている。こちらも詳細はウィキペディア「ライオン」をご覧いただきたい。それによると、ライオンは新大陸には生息していない。当然、コスタリカにもいない。 león「ライオン」という言葉がスペイン人によってラテンアメリカにももたらされたわけだが、ライオンそのものはいない。ライオンを実際に見たことがあるスペイン人はほとんどいなかっただろう。ましてや、現地生まれのスペイン人には全くなじみのない動物だろう。
 しかし、ネコ科の猛獣はいる。ピューマやジャガーならいるのである。そこで、 león はピューマ(el puma)を指すようになった。これは小学館『西和中辞典』にも記載されている。トラ(tigre)も新大陸にはいない。似たような動物、ジャガー(jaguar、スペイン語では「ハグアル」と発音)が tigre と呼ばれるようになったわけだ。
 ちなみに、チグリス川(Tigris)の関連語に tigreが記載されている。「チグリス」は「速い川」が原義とか。
  “La Ju Del León” に戻る。Ju がわからない。辞書にも載っていない。“La Ju Del León” をネットで検索すると、画像が現れた。
 
 
 写真の方はフクロウである。そうすると、Ju は「ホーホー」という鳴き声を表しているのではないだろうか。女性単数定冠詞 la がついているのは「声」を表すスペイン語 voz(ボス)が女性名詞だからだろうか。
 “La Ju Del León” について、コスタリカの伝説集には次のように記されている。

 これは大きくて醜い悪魔のような鳥だ。意のままにピューマを操って、先住民や白人を食い殺させる。

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スペイン語とともに考える英語のラテン語彙の世界 (開拓社言語・文化選書)

怪魚 Peje Nicolás(ペヘ・ニコラス)

2021-02-11 11:51:25 | トリビア
 メキシコ時代の友人が書いた作品をご紹介します。さまざまな資料を基に再構築した武蔵です。是非ご一読ください。『巌流島の決闘』はあっと驚く結末です。
   
 コスタリカの伝説に少しだけ紹介されていたのは怪魚“Peje Nicolás” である。
 peje は「魚」という意味だが、一般的に「魚」は pez (ペス)である。ただし、これは自然の状態の魚で、釣り上げられて、食卓に上れば pescado となる。
 英語の fish は関連語である。英語では fish がそのまま動詞にもなるが、スペイン語では動詞は pescar になる。その過去分詞「釣られたもの」pescado がそのまま名詞にもなっている。ちなみに、「漁師」は pescador で、そのイタリア語形がパスタ好きにはお馴染みの pescatore である。
 西洋占星術では「うお座」は英語では Pesces というが、スペイン語では pez の複数形 peces がそのまま星座名にもなる。
 peje という語はメキシコで初めて知った。ミチョアカン州に湖があるが、そこで取れる小魚の名前が pejerrey (ペヘレイ)で、小学館『西和中辞典』には「南米原産。トウゴロウイワシ科に属する魚の総称」とある。から揚げにして食べると美味で、イワシというよりワカサギに近い。
 さて、“Peje Nicolás” だが、『西和中辞典』には記載されていなかった。ネットで調べてみたら、 pez Nicolás でヒットした。
 “Amino”というサイトによると、母と息子の近親相姦によってできた化け物という話があるが、近親相姦の危険を察知した母親が息子をどうこうしたというバージョンもあるらしい。
 画像を以下に紹介する。実在の魚もいるようである。
  
 
  
 
 コスタリカの伝説では次のように述べられている。

 ニコヤ湾の漁師にはよく知られている。サン・イシドロ(San Isidro)山脈の霧深い支脈のビリージャ(Virilla)の東に棲息しているが、悪魔の命令が下ると、海へ下っていき、巨大なイルカに変身して、カヌーを難破させる。悪魔の命令を立派にやり遂げると、オロミナ(グッピーの一種)になって、川を上り、元の山に帰っていく。そして、また悪魔の命令を待つのだ。
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ドン・ガバチョ(Don Gabacho)

2021-02-03 14:38:52 | スペイン語
 メキシコ時代の友人が書いた作品をご紹介します。さまざまな資料を基に再構築した武蔵です。是非ご一読ください。『巌流島の決闘』はあっと驚く結末です。
   
 コスタリカの昔話にはわけのわからない単語がたくさん出てくる。辞書なしにはとても読めない。辞書があっても、掲載されていない言葉もあので、ネットで調べたり、女房に聞いたりしないと、読み進めない。そんなわけで辞書は手放せない。
 で、ふと gabacho という単語が目に入った。発音は「ガバチョ」だが、1960年代半ばのテレビ人形劇『ひょっこりひょうたん島』の大統領の名前が「ドン・ガバチョ」だった。声はインチキ外国語を操る怪優「藤村有弘」。日活アクション映画では中国人(?)の悪役が印象に残っている。
 
 「ドン・ガバチョ」という名前だが、「ドン」はスペイン語では個人名の前につける敬称 don で日本でもお馴染みである。「ガバチョ」は放映当時は「ガバガバ儲かる」のように使われていた「ガバガバ」をスペイン語風に「ガバチョ」にしたものだろうとしか思っていなかった。
 それが、スペイン語にも gabacho という語があるのである(ただし、アクセントは ba にある)。ウィキペディア「ドン・ガバチョ」にもスペイン語 gabacho について次のような記述がある。

  スペイン語でドンは男性に対する尊称であり、en:Gabacho(ガバチョ、バにアクセント)はフランス人に対する蔑称である。

 ただし、小学館『西和中辞典』には次のように書かれている。
 
 形容詞 1 ピレネー山脈に住む、ピレネー山脈の
     2 (口語)《軽蔑》フランス人の、フランス語の
     3 (ハトが)大形で足に羽毛の生えた
     4 (コロンビア)うまくいかない、逆効果の
 名詞  1 ピレネー山脈に住む人
     2 (口語)《軽蔑》フランス人、フランス野郎、フランスかぶれのスペイン人
     3(北米)《軽蔑》アングロサクソン系白人
 男性名詞 1(口語)フランス訛りのスペイン語
      2(メキシコ)外国人、よそ者

 こうしてみると、gabacho はもともとは「ピレネー山脈に住む(人)」の意味だったようだ。さらに、スペインから見れば、ピレネー山脈の向こうはフランスだから、「フランス人」の意も生じたのだろう。さらにアメリカにわたると、「アングロサクソン系白人」の意味になるのが興味深い。hispanic に対する語として、gabacho が使われるようになったのだろうか。
 「フランスかぶれ」の意味になるのはスペイン人に限られるようで、フランスで活躍したピカソなどが Don Gabacho の名にふさわしい。日本人のフランスかぶれは残念ながら、 Don Gabacho とは呼んでもらえないのである。       

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