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コスタリカの伝説 “La carreta sin bueyes”(牛なし牛車)の著者 Mario González Feo

2021-03-21 11:02:37 | 名前
 『コスタリカの伝説集』(Leyendas Costarricenses)は全96話からなるが、それぞれ著者が異なる。 “La carreta sin bueyes”(牛なし牛車)というタイトルの話が3話収録されているが、そのうちの一つの著者が Mario González Feo(マリオ・ゴンサレス・フェオ)氏である。
 個人名の Mario(女性形は María)は日本でもおなじみである。父の父姓の González もありふれた姓の一つである。母の父姓の Feo ははじめてお目にかかった。
 feo は基本語彙の一つで、bonito(きれいな、かわいい等)の反意語である。小学館『西和中辞典』には次のように記されている。

 形容詞:1 醜い、醜悪な、不器量な
     2 不快な、ひどい、汚い
     3 見苦しい、みっともない
     4 険悪な、厄介な、始末に負えない
     5 卑劣な、卑怯な
     6 (トランプ)札が無役の、かすの
 名詞 : 侮辱、辱め
 副詞 :ひどく、まずく、下手に

 どうして、こんな悪い言葉が姓になったのだろうか。“Mis apellidos” というサイトによると、起源はポルトガルで、 don Gil Anes de Ataide という偉いお方の容姿が芳しくなかったとのこと。スペイン語では次のように遠慮がちに書かれている。
 físicamente no fue muy agraciado por la Naturaleza(肉体的には自然=神にあまり愛されなかった) 
 それで feio というあだ名がつけられ、それが姓になったというわけである。ただし、この姓は古くからある由緒正しい姓なのである。これが、カナリア諸島経由でスペイン本土に伝わり、Feo という姓になったらしい。
 
 【ある Feo 家の紋章】

 さて、スペインにおける Feo 姓について調べてみたら、ランキングは第3917位。多くはないが、珍名というほどでもない。父の父姓としている人が1127人、母の父姓としている人が1202人、父の父姓も母の父姓も Feo という人(Feo Feo)は23人ということだった(“Historia Apellidos España”)。美人ならともかく、普通以下の人では気の毒である。
 コスタリカの伝説集の Mario González Feo 氏は写真付き身分証明書がネットで見つかった。
 
 生年は1897年で、1968年に亡くなっているので、個人情報何とかは問題ないのだろう。
 写真で見る限りでは、全然 feo (不細工)ではない。コスタリカでは最後の Feo 姓の人物だったらしい。
Que se mueran los feos” (不細工な奴らは死んでしまえ)という歌があるが、これは別に Feo 氏のことを歌ったものではない。
 余談だが、1960年代後半、大洋ホエールズなどに在籍したアグウィリーという選手(「フランシス・アグウィリー」)がいた。1965年と1969年にはアグリーという名で登録されていた。Ugly という姓があるのかと思ったが、そうではなかった。

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