ピッチャー


D810 + AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G

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昨日帰りの新幹線の中での事、いくつか前の席に、プロ野球の元ピッチャーが座っていた。
現在は試合の解説や、バラエティー番組などの仕事をしている人だ。
全盛期は剛速球投手として知られ、某球団のエースピッチャーのひとりとして活躍していた。

車内は比較的空いており、乗客の何人かは気付いたようだが、当人はあまり周りを気にしていない様子だった。
僕がすれ違った時に見ると、あちらも無言でこちらをじっと見ていた。

僕は自分のシートに座り、少し休もうと窓に寄りかかったら、隙間から前のほうにその人の肩が見えた。
あちらもリラックスして、体を斜めにして、壁に寄りかかっている。
肩幅の広い白いワイシャツが見えた。

多分年齢は僕とそう変わらないはずだ。
僕が学生時代に、あの人がデビューしたのを覚えている。
テレビで見たあるシーンが、強い印象として、はっきりと記憶に残っている。
あの人が、ビックリして、後ろを振り返った時の顔・・・

あるテレビ番組で、某大物司会者が、自分の関係するアマチュアのチームを、プロ球団のピッチャーと対戦させる企画があった。
アマチュアがバッターボックスに立ち、プロの投手が投げるのだ。
お笑いではなく真面目な企画で、どのくらい実力に差があるかを試す番組であった。
確か夜遅くに放映されて、夜更かししていた僕は偶然その番組を見た。
その時に投げたのが、まだ二軍に属していたあの人であった。

かなりの速球に、バッターボックスに立つアマチュアバッターたちは、きりきり舞いさせられていた。
皆がバットを振り遅れて、何とか喰らい付こうと必死になっていたのを覚えている。
司会者が、この○○君は今後この球団を背負って立つ若手の大物ピッチャーだ・・と解説していた。
僕は高校野球はほとんど見ないので、その時に初めてその人のことを意識した。

ところが、あるバッターが、その人の投げた球を打った。
振りぬいたバットに、まともにボールが当たり、スカーンと見事にセンター前に飛んでいった。
その時、ボールを振り返って見た、その面食らった顔が、強烈な印象として記憶に残ったのだ。

司会者も感嘆し、今のはどのような基準で見ても完全なセンター前ヒットだ!と言った。
アマチュアがプロの球を完璧に打ち返す・・・そういうこともある、ということだ。
以来僕の中で、その時の驚いた顔が、いつもその人のイメージに付きまとった。

今にして思えば、アマチュアに怪我をさせるわけにはいかないから、手加減して投げるよう言われていたのかもしれないな・・・
シートと壁の隙間から見える肩を見ながら、そんなことを考えていた。
いつまでもそんなシーンを覚えられていては、あの人も困ってしまうだろう(笑)
東京が近付くと、すっくと長身の元エースは立ち上がり、品川駅で先に新幹線を降りていった。
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