団塊的“It's me”

コキロク(古稀+6歳)からコキシチ(古稀+7歳)への道草随筆 2週間ごとの月・水・金・火・木に更新。土日祭日休み

USJ光のパレードを観る少女

2014年06月12日 | Weblog

  幻想の世界か?イヤ現実だ。私は妻と並んで光のパレードを観ていた。

  パレードを観るのが目的だったのではない。妻が所属する学会の懇親会の会場を探していた。やっと妻がパーティガイドに載せられた地図を見ながら「あそこだ」と通りの真向いの建物を指差した。たった2,30メートル。渡れない。パレード中は渡れないらしい。妻が一度出し物と出し物の間隔を縫って横切ろうと私の手を取り引っ張った。アルバイトの警備員が両手を広げて私たちをブロックした。仕方なく最後尾の出し物が通過し終わるまで待つことにした。

  体が大音響に同調して震える。小さな耳の穴から入りきれない音波が脳の機能を低下させる。目は点滅する無数のLED電球の光を浴びてチッカチカ。もう9時近い。腹はペコペコ。一人修学旅行を気取って日中歩き回って脚の筋肉はパンパン。ここへ来るまでに3人の作り笑顔がぎこちない配置された制服に身を固めた女性にパーティ会場『E』を尋ねた。3人それぞれの案内に従ったが『E』にたどり着かなかった。怒り心頭。「東京ディズニーランドと全然違うではないか。ダサイんだよ」と拗ねた。私たちのすぐ前には20代の二人の太めの女性が大音響の音楽に合わせて上半身だけで踊っていた。「チェッ」と舌打ちして斜め前の少女に目が行った。パレードの出し物はちょうどシンデレラだった。

 3メートルくらいの光り輝く台の上に本物の人間、金髪の白人女性がすその長いドレスを着て立っていた。満面に笑みを浮かべている。その数段下の台には背が高い見映えのよい白人男性扮する王子さまが。「子供騙し」だとひねくれた。ふと横の少女が気になった。一人でパレードを観ていたからである。親は?と探したが周りにそれらしき大人はいなかった。女の子は7、8歳に見えた。少女はシンデレラにくぎ付けである。男の子が車や電車に夢中になるように、少女はシンデレラの世界に100%入り込んでいる。ユニバーサルスタジオで観たどのキャラクターより私の心を捉えた。純真、無垢な姿だと感心した瞬間、私は吉田有希ちゃんを思い浮かべていた。このパレードのシンデレラを見入る少女と同じくセックスと一切つながる事のない清純な世界に生きていた吉田有希ちゃんが、犯人の性欲の餌食になり、あげく殺されてしまった。有希ちゃんは東京ディズニーランド、大阪ユニバーサルスタジオで光のパレードを観たことがあったのだろうかと。

 私は自分に怒りを持った。罰当たりジジイと罵った。66歳までダラダラ生きて、これは面白いの、あれはツマラナイと文句ばかり。感謝しらずの典型である。横の少女が吉田有希ちゃんに見えてきた。胸がいっぱいになり目頭が熱くなった。隣の妻も少女に負けないくらいシンデレラに想いを馳せていた。妻の7,8歳の姿を想像した。

  両親が離婚して途方にくれていた私の二人の子供を連れて東京ディズニーランドへ行ったことを思い出した。12歳だった男の子は何もかも忘れてジェットコースターなどの乗り物に夢中になった。8歳の女の子は白雪姫、シンデレラになり切っていた。二人は成人して家庭を持ち子育てに追われている。これ以上何を望むというのか。

  ユニバーサルスタジオへ行けたお蔭で、ゴウツク爺さんの不純な心が一人の少女の姿に洗われた。申し訳なく吉田有希ちゃんの死を悼む。


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