レーヌスのさざめき

レーヌスとはライン河のラテン名。ドイツ文化とローマ史の好きな筆者が、マンガや歴史や読書などシュミ語りします。

ゲルマニア 風のかたみ 悪女は自殺しない

2015-10-05 08:56:22 | 
ハラルト・ギルバース『ゲルマニア』  集英社文庫

 1944年夏のベルリン。
 オッペンハイマーは元刑事。ユダヤ系だが妻がドイツ人なのでさしあたって無事でいるという身の上、それが突然親衛隊に連れ出され、猟奇殺人事件の捜査を命じられる。解決したところで無事が約束されるわけでもなく、そしてドイツからの脱出計画もまた進められている。臨時に上司となっている親衛隊のフォーグラー大尉とともに、とあるカラ屋敷に捜査のために行った際折あしく爆撃にあってしまい、防空壕に閉じ込められる。気晴らしにレコードをかけてみたら『三文オペラ』--左翼作家ブレヒトの戯曲で作曲家はユダヤ系なので二重に発禁ものーー、しかし初耳だった大尉はけっこう気に入ってしまう、という場面はちょっと皮肉で面白い。
 筋の進行中にパリ解放の知らせもある。もう少しだ、がんばれ、という気持ちになる。続編も出ているというが、オッペンハイマーはどこにいるのだろうか。


ネレ・ノイハウス『悪女は自殺しない』

 創元推理文庫から出ているオリヴァー&ピアのシリーズはこれで3作目だけど、邦訳は必ずしも原書の順番とは限らず、本書が第1作目。舞台は現代ドイツ、フランクフルト近郊のホーフハイム。
 女の死体が発見され、獣医の妻イザベルと判明。美貌だがエゴイストで夫を含む周囲の人々にひどく嫌われていたらしい。その事件に続いて上級検事の自殺が報じられた。
 これまで意識していなかったが、オリヴァー・フォン・ボーデンシュタインの実家は城で、商売熱心な弟が行楽地として売り出していることがここでは出てくる。貴族なんて別世界の存在なので、フィクションに出てくるぶんには楽しい。
 それにしても、この被害者にはまるで同情なんかわいてこない、ざまあみろという感情だけである。嫌な奴はほかにもいて、そいつにもけっこう酷い罰が下っている。


福永武彦『風のかたみ』  河出文庫の新刊

 平安時代。信濃の長者の息子の次郎は、かつて叔母を愛妾として連れかえった中納言のつてを頼って都へ上る。その道中で、高名な笛師、謎の法師と知り合う。実直な次郎は、中納言の屋敷で、従妹にあたる美しい萩姫に恋するが、姫はすでに入内が決まっており、しかし一夜忍んできた左大臣の息子に心を奪われていた。そして盗賊の頭もまた萩姫を狙っていた。
 ・・・怪しい法師は陰陽使いでもあり、気まぐれで次郎たちにお節介をするが、人々の心が錯綜して狙いは大いに外れる。
 華やかさと妖しさの彩る恋絵巻、これは少女マンガにもなる。・・・けど、○○がxxだったという設定(途中でもしやと思ったけど)は、ビジュアルで表現しにくいところだ。
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