大評判の映画は、なんだか巨額の宣伝費に踊らされた感じがして敬遠していたところ、最近の『借りぐらしのアリエッティ』も『告白』も実際に見てみるとなかなか良くできていて、それならと『トイ・ストーリー3』を見に、近くの吉祥寺プラザに出かけてみました。
この映画館の場合、3Dではなく、かつ吹き替え版ながら、映画の中で表示されている文字でまでもが日本語になっているのには驚きました。
夏休みということもあって、大勢の子どもたちが父兄と一緒に映画館に来ていましたが、もしかすると、子供たちよりも父兄たちの方が映画を楽しんだかもしれません!
(1)映画は、おもちゃの世界のお話。いままでおもちゃを使って遊んでいたアンディがとうとう大学生となり、家を離れて寄宿舎に入ることになり、その子が持っていたたくさんのおもちゃの運命が危機に瀕します。ですが、皆の努力によって、ずっと小さい子供の家にもらわれて再び遊んでもらえることになり、目出度し目出度しとなります。
と言ってしまうと身も蓋もありませんが、おもちゃたちがハッピーエンドに至るまでには、実際のところ人間顔負けの紆余曲折があるのです。
イロイロ経緯があって、アンディのおもちゃはまとめて保育園に引き取られます。
保育園児と遊べるようになって良かったと思ったのも束の間、人間がいなくなった夜間の保育園は、ロッツォという熊のぬいぐるみが支配する恐ろしい世界だったのです。ロッツォがそうなるのには一定の事情があったことは描かれていますが、それにしても酷く狡猾な行動をします。
そこを脱出して自由の身になるまでに、これまでのシリーズでは見られなかった大規模な冒険シーンが描かれます。
なにしろ、恐ろしい保育園空の脱出ルートとしてゴミ投棄口をみつけたのはいいのですが、おもちゃたちは、グズグズしている内にゴミ収集車に投げ込まれ、とどのつまりはゴミ焼却炉の中に落とされてしまうのです!サア、一体どうやってこの危機を逃れることが出来たのでしょうか?
この脱出に際しては、おもちゃの一つ一つに重要な役割が与えられていることがトテモ素晴らしいと思いました。たとえば、ミスター・ポテトヘッドは、トルティーヤに変形しながらも偵察行動に力を発揮しますし、ミス・ポテトヘッドも、取り外しのできる目を使って、様々な情報を収集します。また、これまであまり注目されてこなかったエイリアン人形までもが、焼却炉からの皆の救出に大きく寄与するのです。
こうなってくると主人公は誰というも愚か、おもちゃ一つ一つに個性が与えられ、おもちゃであることの意義が認められています。
ですから、当初は、カウボーイ人形のウッディだけが、大学生となったアンディについていくはずでしたが、結局は、元の通り全員が新しい持ち主・ボニーの家に貰われていくことになります。
こういった様々の要素が盛りだくさんに詰め込まれている上に、それが実にすばらしいCGの技術によってスムースな動きをするアニメーションとなっているのですから、見るほうは堪えられません。まさに子供だけでなく大人の目にも十分鑑賞に耐える作品になっていると思いました。
それと、今度の映画を見るに当たって、これまでの『トイ・ストーリー』や『トイ・ストーリー2』をDVDで見直してみましたが、描かれている世界が『トイ・ストーリー3』ではグット広がっていることに驚きました。
『トイ・ストーリー』では、カウボーイ人形のウッディが、新しく仲間になったアクション・フィギュアのバズに嫉妬したことから持ち上がる騒動が描かれていますし、『トイ・ストーリー2』では、おもちゃ店のオーナーに持ち去られたウッディを、バズを中心に仲間が救出するというものです。
これに対して、今回の『トイ・ストーリー3』では、保育園における大規模なおもちゃの世界が描かれるだけでなく、焼却寸前に至るスリルと迫力満点の冒険譚までも描かれているのです!このシリーズの最後を飾るアニメとして実に相応しいと思いました。
(2)この映画で興味をひかれた点の一つは、保育園のおもちゃの世界に築きあげられている強力な監視体制です。
保育園の中には所狭しと監視カメラが設置されていて、そのモニター画像を中央でモンキーのおもちゃが見守っています。変な動きがあると、モンキーからの連絡で車が出動し、同時にロッツォの側近のおもちゃも現れて(その中には、片目の潰れたホラー映画に出てもおかしくはなさそうなキューピッド〔ビッグ・ベビー〕もいます!)、変な動きをしたおもちゃを捕まえ、牢獄のような用具入れのカゴの中に閉じ込めたりします。
これはもうヒトラーも顔負けの恐怖政治といえるでしょう。
ところで、朝日新聞の8月3日の記事によれば、「400万台以上といわれる監視カメラの設置や警察官による身体検査などの施策をめぐり、英政府は全面的な見直しを始めた」とのことです!同記事によれば、「英国で監視カメラが増え始めたのは、都市犯罪が社会問題化した1990年代から」で、「街角の至る所に監視カメラが設けられるようにな」り、「「1人が1日に300回、姿を写される」といわれるほど」なそうです。
ですが、別のサイトの記事によれば、ロンドン警視庁の幹部が、「CCTV〔有線テレビ〕カメラでは、裁判で容疑者を有罪に持ち込むのに十分なほど質の良い映像を撮ることができず、その結果として、犯罪抑止効果をもたらすことにも成功していない。英国におけるCCTV カメラの利用は、膨大な資金の無駄遣いとなっている」との発言を行っているとのこと。
日本の英国に見倣ってかなりの数の監視カメラを設置してきていますが(注1)、そのお手本国が見直しをしようというのですから、ここらで立ち止まってその功罪をヨク吟味してみる必要があるのではないでしょうか(注2)?
(注1)昨年8月19日の日経新聞には、「防犯カメラの製造を手掛けるTOAにも問い合わせると、国内で稼働する防犯を中心とする監視カメラの台数は推定約330万台に達」し、「英国は街路など公共空間を撮影する監視カメラだけで約430万台あり、国民千人当たりにすると約70台にのぼる。日本はTOA推定をもとに計算すると約25台で英国の3分の1の水準」とあります。
(注2)なお、当ブログの6月14日の記事にも関連したことを書きましたので、参考にして下さい。
(3)映画評論家の評価はすこぶる高いものがあります。
前田有一氏は、「3歳時から50歳児まで、見て損なしの文句なし大傑作。ピクサーの本気がつまった「トイ・ストーリー3」は、この夏の最高のチョイスのひとつである」として95点を、
渡まち子氏は、「ピクサーアニメが世界を魅了するのは、映像のクオリティの高さと共に、物語が素晴らしいからというのは、言い尽くされた褒め言葉かもしれないが、あえてここでも繰り返して言おう。ストーリーが本当に素晴らしい」として85点を、
福本次郎氏も、「自分たちが「価値のないもの」のレッテルを張られてしまったと誤解するおもちゃたちが哀れだ。彼らの冒険と人間との関係のなかで、持ち主の思い出がしみついたおもちゃは心を持っているのではと思わせるほど、豊かな感情が描き込まれている」として70点を、
それぞれ与えています。
ただ、前田氏は「具体的にいうと、かつてちやほやされながら捨てられるおもちゃたちには、リストラ渦巻くアメリカの労働者たちの境遇が重ねられている。現在オバマ政権は必死に数字合わせでカバーしているが、かの国の失業率は最悪レベルである」と述べていますが、どうして前田氏は、様々な視点から見ることができるこの作品を、わざわざ焦点を絞り込んで見ようとするのでしょうか?評論家の役割は、視野の狭い一般人に対して、むしろこんな見方もあるよと斬新な切り口を示すことにあるとも言えますが?
★★★★☆
象のロケット:トイ・ストーリー3
この映画館の場合、3Dではなく、かつ吹き替え版ながら、映画の中で表示されている文字でまでもが日本語になっているのには驚きました。
夏休みということもあって、大勢の子どもたちが父兄と一緒に映画館に来ていましたが、もしかすると、子供たちよりも父兄たちの方が映画を楽しんだかもしれません!
(1)映画は、おもちゃの世界のお話。いままでおもちゃを使って遊んでいたアンディがとうとう大学生となり、家を離れて寄宿舎に入ることになり、その子が持っていたたくさんのおもちゃの運命が危機に瀕します。ですが、皆の努力によって、ずっと小さい子供の家にもらわれて再び遊んでもらえることになり、目出度し目出度しとなります。
と言ってしまうと身も蓋もありませんが、おもちゃたちがハッピーエンドに至るまでには、実際のところ人間顔負けの紆余曲折があるのです。
イロイロ経緯があって、アンディのおもちゃはまとめて保育園に引き取られます。
保育園児と遊べるようになって良かったと思ったのも束の間、人間がいなくなった夜間の保育園は、ロッツォという熊のぬいぐるみが支配する恐ろしい世界だったのです。ロッツォがそうなるのには一定の事情があったことは描かれていますが、それにしても酷く狡猾な行動をします。
そこを脱出して自由の身になるまでに、これまでのシリーズでは見られなかった大規模な冒険シーンが描かれます。
なにしろ、恐ろしい保育園空の脱出ルートとしてゴミ投棄口をみつけたのはいいのですが、おもちゃたちは、グズグズしている内にゴミ収集車に投げ込まれ、とどのつまりはゴミ焼却炉の中に落とされてしまうのです!サア、一体どうやってこの危機を逃れることが出来たのでしょうか?
この脱出に際しては、おもちゃの一つ一つに重要な役割が与えられていることがトテモ素晴らしいと思いました。たとえば、ミスター・ポテトヘッドは、トルティーヤに変形しながらも偵察行動に力を発揮しますし、ミス・ポテトヘッドも、取り外しのできる目を使って、様々な情報を収集します。また、これまであまり注目されてこなかったエイリアン人形までもが、焼却炉からの皆の救出に大きく寄与するのです。
こうなってくると主人公は誰というも愚か、おもちゃ一つ一つに個性が与えられ、おもちゃであることの意義が認められています。
ですから、当初は、カウボーイ人形のウッディだけが、大学生となったアンディについていくはずでしたが、結局は、元の通り全員が新しい持ち主・ボニーの家に貰われていくことになります。
こういった様々の要素が盛りだくさんに詰め込まれている上に、それが実にすばらしいCGの技術によってスムースな動きをするアニメーションとなっているのですから、見るほうは堪えられません。まさに子供だけでなく大人の目にも十分鑑賞に耐える作品になっていると思いました。
それと、今度の映画を見るに当たって、これまでの『トイ・ストーリー』や『トイ・ストーリー2』をDVDで見直してみましたが、描かれている世界が『トイ・ストーリー3』ではグット広がっていることに驚きました。
『トイ・ストーリー』では、カウボーイ人形のウッディが、新しく仲間になったアクション・フィギュアのバズに嫉妬したことから持ち上がる騒動が描かれていますし、『トイ・ストーリー2』では、おもちゃ店のオーナーに持ち去られたウッディを、バズを中心に仲間が救出するというものです。
これに対して、今回の『トイ・ストーリー3』では、保育園における大規模なおもちゃの世界が描かれるだけでなく、焼却寸前に至るスリルと迫力満点の冒険譚までも描かれているのです!このシリーズの最後を飾るアニメとして実に相応しいと思いました。
(2)この映画で興味をひかれた点の一つは、保育園のおもちゃの世界に築きあげられている強力な監視体制です。
保育園の中には所狭しと監視カメラが設置されていて、そのモニター画像を中央でモンキーのおもちゃが見守っています。変な動きがあると、モンキーからの連絡で車が出動し、同時にロッツォの側近のおもちゃも現れて(その中には、片目の潰れたホラー映画に出てもおかしくはなさそうなキューピッド〔ビッグ・ベビー〕もいます!)、変な動きをしたおもちゃを捕まえ、牢獄のような用具入れのカゴの中に閉じ込めたりします。
これはもうヒトラーも顔負けの恐怖政治といえるでしょう。
ところで、朝日新聞の8月3日の記事によれば、「400万台以上といわれる監視カメラの設置や警察官による身体検査などの施策をめぐり、英政府は全面的な見直しを始めた」とのことです!同記事によれば、「英国で監視カメラが増え始めたのは、都市犯罪が社会問題化した1990年代から」で、「街角の至る所に監視カメラが設けられるようにな」り、「「1人が1日に300回、姿を写される」といわれるほど」なそうです。
ですが、別のサイトの記事によれば、ロンドン警視庁の幹部が、「CCTV〔有線テレビ〕カメラでは、裁判で容疑者を有罪に持ち込むのに十分なほど質の良い映像を撮ることができず、その結果として、犯罪抑止効果をもたらすことにも成功していない。英国におけるCCTV カメラの利用は、膨大な資金の無駄遣いとなっている」との発言を行っているとのこと。
日本の英国に見倣ってかなりの数の監視カメラを設置してきていますが(注1)、そのお手本国が見直しをしようというのですから、ここらで立ち止まってその功罪をヨク吟味してみる必要があるのではないでしょうか(注2)?
(注1)昨年8月19日の日経新聞には、「防犯カメラの製造を手掛けるTOAにも問い合わせると、国内で稼働する防犯を中心とする監視カメラの台数は推定約330万台に達」し、「英国は街路など公共空間を撮影する監視カメラだけで約430万台あり、国民千人当たりにすると約70台にのぼる。日本はTOA推定をもとに計算すると約25台で英国の3分の1の水準」とあります。
(注2)なお、当ブログの6月14日の記事にも関連したことを書きましたので、参考にして下さい。
(3)映画評論家の評価はすこぶる高いものがあります。
前田有一氏は、「3歳時から50歳児まで、見て損なしの文句なし大傑作。ピクサーの本気がつまった「トイ・ストーリー3」は、この夏の最高のチョイスのひとつである」として95点を、
渡まち子氏は、「ピクサーアニメが世界を魅了するのは、映像のクオリティの高さと共に、物語が素晴らしいからというのは、言い尽くされた褒め言葉かもしれないが、あえてここでも繰り返して言おう。ストーリーが本当に素晴らしい」として85点を、
福本次郎氏も、「自分たちが「価値のないもの」のレッテルを張られてしまったと誤解するおもちゃたちが哀れだ。彼らの冒険と人間との関係のなかで、持ち主の思い出がしみついたおもちゃは心を持っているのではと思わせるほど、豊かな感情が描き込まれている」として70点を、
それぞれ与えています。
ただ、前田氏は「具体的にいうと、かつてちやほやされながら捨てられるおもちゃたちには、リストラ渦巻くアメリカの労働者たちの境遇が重ねられている。現在オバマ政権は必死に数字合わせでカバーしているが、かの国の失業率は最悪レベルである」と述べていますが、どうして前田氏は、様々な視点から見ることができるこの作品を、わざわざ焦点を絞り込んで見ようとするのでしょうか?評論家の役割は、視野の狭い一般人に対して、むしろこんな見方もあるよと斬新な切り口を示すことにあるとも言えますが?
★★★★☆
象のロケット:トイ・ストーリー3
おもちゃたちもよかったですが、
アンディも良い子に育ちました。
>映画の中で表示されている文字でまでもが日本語
これはもうPIXARの常套手段です。
いつごろからそうなのか、他の国ではどうなのか、知りませんが、「CARS」「Mr.インレディブルズ」などでもそうでした。
シリーズを追うごとに 悪くなる作品が多いなか
本作は1、2よりも面白かったですね
ピクサーは裏切りませんね
お気を悪くなさらないよう。
最初に気が付いたのはどの映画だったか忘れましたが、DVDで発見しました。
その部分(日本語が出てくる部分)は英語/日本語切り替えただけで画面=表示も変わるので、びっくりした記憶があります。
クマネズミさんの突っ込みが的確でちょっと笑っちゃいましたw。
しかし前田さんの見方もひとつの解釈で面白いですね。
今はブロガーを含めてたくさんの評論家がいるので逆に解釈を個人単位で絞り込んでいくのも意見の比較や相対化が出来て面白いかも、と思いました。
しかし、あまりに評論家を気取ると作品を素直に楽しめなくなっちゃいますよね!
文句を言うために映画見ているんじゃないんですから。
エレベーターに乗ると、鏡を見て髪の毛をなおしたり、微笑んでみたりするクセがあるのですが、これからは見られている!という意識を持っていないといけませんね!
ラブリーな保育園が刑務所のようで面白かったですね。
各キャラクターがそれぞれの持ち味を使って活躍しているのも良かったです。
「みんな違って、みんな良い」ですね。
子どもより、大人達の方が喜んでいたし、いっぱい泣いてしまったような気がします。
おっしゃるように、「前田さんの見方もひとつの解釈で面白い」と私も思います。
そういうこともあって、出来るだけ前田氏の論評も、私のブログで取り上げるようにしているつもりです。
ただ、あまりにまともな「解釈」が目に付くので、それで飯を食べているのであればもう少し捻って貰わないと、素人の論評よりも劣ってしまうのでは、と思ったものですから……。