杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

テスラ エジソンが恐れた天才

2021年09月11日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)

2021年3月26日公開 アメリカ 103分 G

1884年、移民としてニューヨークへやってきて、憧れのエジソン(カイル・マクラクラン)のもとで働き始めたテスラ(イーサン・ホーク)だが、直流か交流かで対立し訣別する。独立したテスラは、実業家ウェスティングハウスと手を組み、シカゴ万国博覧会でエジソンを叩きのめす。時代の寵児となったテスラは、大財閥J・P・モルガンの娘アン(イヴ・ヒューソン)と交流し、モルガンから莫大な資金を得て、「無線」の実現に挑戦する。だが、研究一筋の繊細な心が、実業界や社交界と不協和音を立て始める──。

 

電流戦争でエジソンに勝利しながらも、天才であるがゆえに孤独な人生を歩んだテスラの半生を描いた作品ですが、単なる伝記映画ではなく、アンの視点で語られているのが斬新かも。

エジソンとテスラの直流交流戦争は有名で、映画化されたものも多数ありますが、本作は「その後」のテスラを描いている点で特徴的です。

テスラは正教会司祭の父と文盲だけれど聡明な母のもとに生まれ、語学と数学に優れた才能があったようです。

エジソンに交流送電方式を理解して欲しかったけれど、直流送電方式に固執し金を稼ぐことしか考えなかったエジソンは最後まで聞く耳を持ちませんでした。独立したテスラは親友で助手のシゲティ(エボン・モス=バクラック)に外交面を任せ、交流送電方式のラジオやラジコン、モーター、プラグ、高周波、高電圧を発生させる共振型変圧器「テスラコイル」を発明していきます。

米国電気工学者協会(AIFF)でのデモンストレーションを見た実業家ジョージ・ウェスティングハウス(ジム・ガフィガン)が、出資を名乗り出て、彼の協力のもと、テスラは交流電力システムを設計します。

アン・モルガンと出会ったテスラは、彼女から才能を賞賛されますが、アンの父J・P・モルガン(ドニー・ケシュウォーズ)はエジソンを雇い、大邸宅には、エジソンが発明した電気がつけられていました。モルガンの協力のもと、処刑用電気椅子を開発したエジソンは、ウィリアム・ケラー(ブレイク・デロング)という妻を斧で殺害した死刑囚に椅子を使用しますが、惨たらしい結果に終わります。この電気椅子については映画「グリーンマイル」にも登場してその酷い状態の描写が出てきたことを思い出しました

一方、発明家としての成功を得るべく南米に発ったシゲティの代わりをアンが務め、シカゴ万国博覧会でテスラはエジソンとの電流戦争に勝利します。もう一度やり直したいと申し出たエジソンですが、謝罪はなかったため、テスラは断ります。エジソンの会社との合併を諦めていなかったウェスティングハウスのために、テスラは多額の特許使用料契約の破棄に同意します。自分を苦境から救ってくれた恩人への道義的な行為と評価できても、資金面では大きくマイナスとなったことは想像に難くないです。

映画では、エジソンとテスラの女性関係についても対比させています。最初の妻を亡くした後、年若いミーナ(ハンナ・グロス)と再婚したエジソンに対し、アンともフランスの舞台女優、サラ・ベルナール(レベッカ・ディアン)とも進展がなく、独身を通したテスラ。

雷による放電実験で地球定常波を発見したテスラですが、発電所が負荷に耐えきれずに出火して町が停電した際、巡業に訪れていたサラのために、舞台の電気をまず復旧させるエピソードでも、二人の仲はそれ以上に縮まってはいませんでした。

世界規模の無線通信システムの開発に取り組むものの、グリエルモ・マルコーニに先を越され、資金提供を受けていたモルガンに見捨てられ、遂にはアンにも愛想を尽かされてしまうのね。

家族でテニスを楽しむモルガンを訪ね、必死に未来ビジョンを話し続けるテスラの姿は哀れにも映りました。

ノイローゼになったテスラが歌う「Everybody Wants to Rule the World」の歌詞が彼の心情を現わしているラストです。アンは別の男性と結婚し、フランスで子供達のための事業を始めます。テスラは86歳で生涯を閉じましたが、貧しく独身で孤独のまま世を去ったそうです。彼の葬儀には2千人以上の人々が参列したそうです。

テスラは研究に没頭するあまり、周囲と軋轢を生み、孤独が彼について回りました。理解者を得たと思っても彼らは次々去っていきます。エジソンも大概傲慢な発明家に見えましたが、それでも彼の周りから人は去っていかなかった。一体何が違ったのでしょう?

テスラが心惹かれたのは、アンではなく、死への憧憬を抱えるサラだったことも彼の孤独を強調しているように見えました。

ストーリー重視の私には、この作品は少し難解で退屈でもあったかな

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