山本あけみ「緑ゆたかな環境を子どもたちへ」

建築士や生活者として、都市計画・公共施設マネジメント・地球温暖化対策・SDGsなど、独自の視点で日々発信

平成25年第4定例会 一般質問のご報告「杉並区における子どもの育つ環境について」

2013-11-26 | 議会・一般質問のご報告

11月20日に一般質問で議場に立ちました。

テーマは「杉並区における子どもの育つ環境について」、

児童館をはじめとして区立施設再編整備計画への質疑・提案を併せての質問としました。

動画→11月20日http://www.gikai.city.suginami.tokyo.jp/vod/vodtop.htm

児童館再編に絡み、乳幼児期の子育てに関しては区長答弁をいただきました。

質問と答弁の要旨、そして質問の全文を掲載いたします。

 

<要旨>

質問1

コミュニティスクール指定校での地域との連携と成果は?保護者・地域への周知は?

答弁1

子育て環境について自由討議・ワークショップ等協議会を開催し区内では文部科学大臣賞の受賞歴もある。教育委員会では学校運営協議会連絡会を開催し、先進的モデル校での活動などの周知をし、保護者・地域と一体となった取り組みを支援。

質問2

次年度から始まる「土曜授業」の概要と「すぎなみ地域大学」や「すぎなみ大人塾」で学びを深めた人材を各学校の学習活動に活かすには?

答弁2

地域・保護者の協力を得やすい土曜日の特性を活かし、学校・地域の実情に応じた学習活動を全区立小・中学校で月1・2回程度実施の準備を進めている。

「すぎなみ地域大学」や「すぎなみ大人塾」で学びを深めた地域人材活用は教育ビジョンの趣旨に沿う。ねらいに基づき創意工夫した学習活動実施に向け、情報提供し地域人材積極活用を指導し「家庭・地域、学校のつながりを重視した、共に支える教育」を推進。

質問3

児童館の「ゆうキッズ事業」の評価と、区立施設再編整備での事業展開の方向性は? 

答弁3(区長)

子育てをめぐる環境は厳しく、都市部の核家族化や地域のつながりの希薄化により不安や孤立感を覚える家庭は少なくない中、この事業が果たしている役割は大きい。

乳幼児の保護者はこの事業で気軽に集い情報交換を行い、利用者数も増加傾向にある。

今後は実施箇所数・実施時間及びプログラム拡充を図る。また、今後整備する(仮)子どもセンターで総合的・一体的な子育て支援を実施し保護者利便性向上と効果的な展開を考えていく。全ての保護者の方々が心安らかに、喜びを感じながら子育てができる環境づくりにまい進していく。

質問4

本年度開始の「中学生海外交流事業」で「夢に向かい、志をもって自らの道を拓く」ために必要な資質の形成を目指すとし、10月オーストラリアウイロビー市で実施された事業で参加生徒と引率教師の学びや啓発面での成果は?また、教師の今後の成長にも着目した人選をするべきと考えるがいかがか?

答弁4 

派遣生徒は英語に慣れ親しむだけでなく、自らの課題解決へ取り組み、人とのかかわりや互いの文化を積極的に受け止めることを学び、引率教員は現地校の授業や教育施設での職員交流を通し教育の考え方・指導の在り方を学び大いに啓発された。教員の学びの場として有効な事業であると評価し、今後とも引率教員の資質・能力の向上や啓発を考慮した人選を行う。

質問5

東京都の「有給休暇を利用した海外留学制度」を教師が活用する意義とは?今後、周知をさらに進めるとともに、派遣を推奨していくべきと考えるがいかがか?

答弁5

実際に海外に行き、諸外国の教育事情について見識を深め、教科指導法について体験を通して学ぶことは大きな効果が期待でき、今後も海外留学制度をはじめ派遣事業について情提供し周知を図る。

 

<全文>

 私は民主・社民クラブの一員として、通告に従い区政一般について質問をさせていただきます。

質問項目は、

・コミュニティスクールについて

・社会教育事業について

・子どもの育ちについて

・教師の研修について、です。

 さて、「現代の杉並区における子どもの育つ環境とは?」という問いかけに対して、皆様はどの様なお答えをされるでしょうか?

 財務省は本年8月、国の借金残高が1.000兆円を突破したと発表しました。単純計算をすると、全ての国民1人あたり約792万円の借金を抱えていることになるということです。

 私が産まれた昭和40年には借金はゼロであったことを考えるとその大きさに驚き、ほんの8年前に500兆円を超えてからの一層の増加率には目を覆うばかりです。人口減少社会を迎え現役世代への負担割合が増え、また、借金抑制への動きを未だに感じることが出来ないことを考え併せると、「本当に自分たちの子どもの世代に残していく社会がどうなっていくのか。」という暗澹たる思いに駆られます。

また、地球規模の温暖化による自然災害の脅威も増加の一途であり、先日のフィリピンレイテ島では、スーパー台風により島全体が壊滅的な打撃を受けるなど、深刻さは増すばかりです。

 私は子育て世代の一人ですが、これまでの子育てを通じて持った実感は、残念ながら現代は、子どもは少数派なのだということでした。少子高齢化の本格的な到来を向かえることは頭ではわかっていましたが、実感として持つことになるとは予想が出来ませんでした。

 まちを行きかう子ども、公園で遊ぶ子ども、レストランで食事をする子どもなど、私の幼少期に比べると子どもを見かける事が少ない事が日常の風景となりました。

その様な状況下で、教育においては大学全入時代を向かえる一方で、大学教育のあり方自体の大幅な意識変革を求める動きが深まって来ています。

「生涯学び続け、どんな環境においても“答のない問題”に最善策を導くことができる能力」を育成していくという様に、これまでの大学入試を最終目標としてきた体制自体が大きく変わろうとしています。

成長社会から成熟社会へ向かう過渡期である現在、情報処理能力を問われる従来の詰め込み型教育からこれからは情報編集力、つまり世の中にあふれんばかりに氾濫する情報からそれぞれが必要なものを選び出し、つなげていく能力が問われていくのだと思います。人類の有史以来、農業・産業に続く第3の大きな革命と言われる「情報のデジタル化」の進行を、身を以て体現してきた世代である私にとっては、この教育目標の変化は至極納得のいくものではありますが、大きな変革のさ中、一体自分の子どもにどの様な教育をするべきかと迷う保護者も多くいるのでは、と考えます?

また、学校現場においてもいじめや不登校など、わが子が当事者となった場合に、保護者としてどの様に対処していけば良いのかなど悩ましい課題も山積です。

 そういった背景のもと、当区の学校現場で現在取り組みが進んでいるコミュニティスクールについては期待が集まるところです。

 コミュニティ・スクールは、学校と保護者や地域の皆さんがともに知恵を出し合い、一緒に協働しながら子どもたちの豊かな成長を支えていく「地域とともにある学校づくり」を進める仕組みです。

 この制度を改めて振り返ると「この取り組みを進めることにより、学校現場において学校や親子という縦の関係の中に、様々な価値観を持った地域の多様な人々が関わることでバイアスつまり斜めの関係性が生まれ、そのことによって子どもにも多種多様の価値観が生まれる。そして例えいじめの当事者や不登校などの孤立感を持つような状況になっても、自分で解決をしていける強さを身につけることが出来る。」としておりまた、「コミュニティスクールの実効性を高めるには自発的な参加が重要。」だとあります。

当区においても、着実に取り組みを進めてきているとのことですが、

そこで、お尋ねいたします。

Q.まず、コミュニティスクールに指定された学校では、地域との連携を通してどのようなことが行われたのか、その成果についてお伺いします。

.次に新規に指定された学校では、その活動がまだ保護者や地域に周知されていないように感じます。今後教育委員会として協議会にどのように働きかけていくのかお伺いします。

Q.この項の最後に、杉並区総合計画では、平成33年度までに全小中学校をコミュニティスクールに指定することになっていますが、全校指定に向けどのように進めていくのかお考えをお伺いします。

 

次に社会教育事業についてお尋ねを致します。

 区では「杉並区教育ビジョン2012」の目標を

「共に学び 共に支え 共に創る杉並の教育」とし生涯に亘って学び続け、

その成果を豊かな社会の実現に役立てることができる「仕組みを整える」ことが求められているとしています。

 私が見聞きししただけでも杉並区ではこれまで、

・原水爆禁止署名運動など「人権を守る分野」、

・「子どもと歩む分野」では、子ども文庫を通して児童の感性や知と心を適正に育成するのに相応しい書を精選しそれを促す活動や、

・「生活や環境を豊かにする分野」ではごみ問題解決や安全な食を求める活動

・また行政主導ではなく自らまちづくりを率先して行ったものなど、広く社会貢献をも視野に入れた活動を多くの区民が自主的に行ってきました。

 

 先日これらの活動を「つながる」と題しまとめた書が発刊されましたが、その巻末の年表には、昭和20年杉並区内での最大の空襲と敗戦を迎えた事から始まり、本年に至るまでの全ての年にあった活動の歴史が刻まれており、改めて杉並の社会教育・市民活動の奥深さを痛感します。

ここで、現在区で行っている事業についてお尋ねを致します。

Q.社会教育センターのすぎなみ大人塾の現状と、受講生がその学びをどのように活かし、どのような成果があがっているのかお伺いします。

Q.すぎなみ地域大学についても、講座の実施状況と、受講生が学びの成果を区政にどのように活かしているのか、その成果とはどの様なものかお尋ねします。

 これらの参加者には個別の問題意識を深く掘り下げ、地域防災や子どもの健康増進、また、日常生活に埋もれてしまいそうになった時に小さな気づきを与えてくれるアートとのふれあいの場を作る、など多岐に亘り意欲的に活動の

幅を広げている方が多数いらっしゃいます。

 今般廃止が発表された科学館などで、こういったアートを作り上げる人材を活かして期間限定で環境ミュージアムなどを作り、教育の場にする事も可能であると考えこれを提案します。

科学館の空間全体を作品と見立て、インスタレーションという現代アートの手法の一種を用い、机上の座学ではなく、環境問題をアートとして感じる仕掛けを作ることが出来ると思います。

 また、一方で、学校教育においては一昨年来「土曜授業」の各自治体での取り組みが始まっています。社会教育事業で意欲的に活動をしている地域の方々の成果を区内に還元する仕組みを整備して欲しいという観点からお伺いします。

Q.次年度から始まる「土曜授業」について、その概要はどういったものか?

  また、「土曜授業」において、「すぎなみ地域大学」や「すぎなみ大人塾」で学びを深めた人材を各学校の学習活動に生かすことができると考えるが区の考えをお伺いします。

 

次に、子どもの育ちについてお尋ねをいたします。

少子高齢化に加え、都市部を中心に核家族化等が進む中で、「子育ての孤立化」が大きな社会的課題となっています。私も頼る人が会社勤めの夫しかいない乳児の子育て期には孤立感を味わっていましたが、先輩ママのほんのちょっとした一言で気持ちが救われたのを覚えています。

 先日、我が会派の河津りえ子議員からもひととき保育でのつどいの広場に関しての質疑がありましたが、区は、子どもを育てるすべての家庭や保護者が孤立化することなく、地域で安心して子育てができるよう、地域社会全体で子どもの育ちと子育てを支え合う仕組みづくりを進めており、大きく期待をしているところです。

 質問の冒頭で私は子どもが少数派と申しましたが、それは決して少数派だからないがしろにしても良いと申し上げたのではなく、まさしく真逆であり、これからの困難が予想される次世代を、担っていってもらう人材を、あらゆる社会資本をかき集めてでも育成していくという観点においても子どもや保護者に対し、より実効的な施策を講じて積極的に支援をしていくべきものと考えています。

 現在、各児童館で実施している「ゆうキッズ事業」もそのための重要な取組の一つであります。私もこれまで「ゆうキッズ」を利用する多くの保護者から話を聞いており、保護者にとっても、また、その保護者に育てられている子どもにとっても大きな意義のある事業と認識して来ました。

 そうした中で、このたび区は、「区立施設再編整備計画素案」を明らかにしましたが、これに掲げられている「児童館の再編」については、「再編イコール児童館廃止」というように誤って受け止められている面がありました。子育て中の保護者から「ゆうキッズ事業も止めてしまうのではないか」、「乳幼児の親子が気軽につどう場が無くなってしまうのは大変困る」というように不安な気持ちになって居ることを知り、大変心を痛めて来ました。

 この間の区議会等での区の説明は、決してそのようなことでなく、むしろ、子育て支援の取組を拡充、充実させる方向性であると認識しておりますが、改めて、確認させていただきたいと思います。

Q.区は児童館における「ゆうキッズ事業」をどう評価し、区立施設の再編整備の中で、今後どのような方向性をもって事業展開を図っていくつもりなのか、見解を伺います。

 「ゆうキッズ事業」は平成27年度からの実施が予定されている「子ども・子育て支援新制度」の中で、区市町村が実施する地域子育て支援事業のうちの「乳幼児親子のつどいの広場事業」に位置付けられるものです。このほかにも地域子育て支援事業には、「各種の子育て支援サービスの利用相談や情報提供」「一時預かり保育」などがあります。

 この間、区が、田中区長を先頭に、保育の待機児童対策に特別の力を注がれていることには大変力強さを感じておりますが、今後は、これらの取組を含め、保護者の方々にとって一層利用しやすく有意義な事業実施を図ることが望まれます。区が児童館再編の中で打ち出した(仮称)子どもセンター構想は、これらの考えによるものと考えております。

Q.区はこの新たな事業を子育て支援施策の中でどのようなものとして位置付け、子どもの育ちを支えていこうとしているのか見解を伺います。

 新たにすべて整えるのではなくて、例えば高井戸地域区民センター1階のくつろぎの部屋の一部に小上がりをつくり、乳幼児親子が自由に持参したお弁当を食べるスペースを作ることで、大規模な改修でなくても多世代交流型の乳幼児親子の集う場を作ることが出来ると考え、これを提案いたします。

 

次に、教師の研修についてお尋ねします。

 当区の本年度の予算を「次世代に夢と希望を拓く予算」として子どもの育ちを重要と考え、具体的で先進的な事業を始めた事に大きく敬意を表します。

そこで質問です。

本年度開始された「杉並区中学生海外交流事業」において「夢に向かい、志をもって自らの道を拓く」ために必要な資質の形成を目指すとし、先月オーストラリアウイロビー市で実施された事業において、参加生徒と引率教師の学びや啓発面での成果についてお伺いします。

 私はこの事業において、先の決算特別委員会で、現場の教師の学びの場としても重要と訴えました。教師の目の前で教え子たちが海外の交流を通して大きく成長をしていく姿を見ること、また、日常の教育現場を離れて日本とは違う価値観で生徒と係わる現地の教育のあり方を見聞することは、教師にとっても大いに学ぶ事が多いと考えます。

そこで質問です。

Q.今年度は事業初年度であったことから、主に留学経験を持つ教師が同行したと伺いますが、次年度以降、派遣教師を決定するに当たっては、経験や生徒指導力を中心に選出するだけではなく、教師の今後の成長にも着目した人選をするべきと考えますが区の考えをお伺いします。

 昨年来、教師が教育についての見識を広める目的に行う、海外の教育視察・研修派遣に大きな成果が期待できることを提言し、区からは積極参加を働きかけると答弁がありました。

 私は20年間に亘ってインテリアの専門職として働いてきましたが、最初から設計力が身についていた訳はなく、建築士の資格を持っていてもそれだけではほんのスタート地点に立っただけであり、それに加えて常に広い視野を持って経験を積むことがスキルアップに繋がることを実感してきました。

 次世代を育成する重責を担う教師こそ、社会を支える最も重要な専門家の一人として、あらゆる機会を通じてスキルアップに努めることを望み、それが杉並の教育を牽引する力となると信じ、より一層の推進を望みます。

 

Q.改めて東京都により行われている「有給休暇を利用した海外留学制度」を教師が活用する意義について、区の考えを伺います。

Q.また、東京都の「次世代リーダー育成道場」という都立高校生を支援する新たな仕組みの中の「かわいい子には旅をさせよプロジェクト」でも、高校生海外留学推進に力を注いでいますが、高校生となり海外に目を向けるようになるためには、それ以前にいかに海外に開かれた指導者の下で教育を受けてきたか、ということにも大きく影響されると考えます。

学校の夏休みを利用した、例え1,2週間であっても、教師のスキルアップに大きく貢献していくと思われますが、今後、区として「海外留学制度」の周知をさらに進めるとともに、派遣を推奨していくべきと考えますがいかがでしょうか。

 

ここまで、子育て支援の重要性や各施策の横断的な活用についてシュシュ申し述べて参りました。

冒頭に挙げましたように、少子高齢化の本格的な到来によって次世代を担う子ども達の将来はややもすると悲観的な側面を持っていることは否定できません。

今私達に出来ることは教育を持って少しでも力強く課題解決力を備えた大人になっていくことを後押しすることだと考えています。

 

 最後に、「杉並区 区立施設 再編整備計画」に関して端的に1点要望を申し述べます。

それは決算特別委員会での田中区長の答弁にもありましたようにその目標を「区の資産を出来るだけ優良化し、次世代に引き継いでいく。」ことを最も重要視すべきものとし、

区民、そして建築士や不動産取引等の専門家などのご意見を聞き、

あせらず議論を尽くし、立場は違うものの議会や現場の職員を含め一丸となってこの目標に取り組んで行くことを切に要望しまして質問を終わります。

 

以上、長文をご覧頂きましてありがとうございました。