『新漢方療法』という本に掲載されている投稿記事から、生薬の意外な効果をご紹介しています。
今回は、「ニワトコ」で姉の腎臓炎を根治した岩瀬文子さんの体験談です。
岩瀬さんの姉は、ちょっとした風邪が元で、突如40.8℃という高熱を発し、複数の医師を招いて診察してもらっても原因が分からず、その後、北大病院内科にて腎臓炎と診断されたのですが、その時には25日も経過していたので、心臓の疲労が甚しく、そのため身体は衰弱し、視力まで衰えて人の顔も分からないようになってしまったそうです。
医師の指示で塩気や肉類を禁じられたので、栄養になるものは絶対にさけ、ただ牛乳と小豆や瓜の汁ばかり摂取したのですが、両手両足はもとより顔まで水腫(みずばれ)し始め、10日後には腹膜炎を併発してしまいました。
医師は、いよいよ危しと首を捻って、食塩注射をしたものの吸収せず、非常に不規則な脈であったので、お覚悟なさいと言っただけで、そのまま帰ってしまったそうです。
その時、たまたま隣家の人が見舞いに来て、「医師に見放されたのだから、私が最後の特殊の療法をお知らせいたしましょう。そして必ず責任をもって治してさしあげましょう。」と言ってくれたのです。
その治療法とは、まず心臓強壮剤として鶏卵1個に2、3滴の醤油を入れ、これを2日に分けて服用することで、これによって今まで苦しかった呼吸が急に楽になったそうです。
次に、植木屋より取り寄せたニワトコの皮を煮て、5合の水から3合に煎じたのを1合づつ2時間おきに3回服用すると、急に大量の小便や大便が出て、お腹の方も誠に楽になり、岩瀬さんの姉は危機を脱したそうです。
その後は心臓や腹膜の氷袋も取り外して、豆腐に1割の麦粉を入れたものを今まで冷やしていたところに貼付すると、黄色に変じて邪熱を吸収してくれたので、度々取りかえたところ、7時間後には37.5℃になり、12時間後には平熱の36.7℃となりました。
食事は、2日間は玄米のスープと野菜のスープだけとし、3日目よりは半搗米のお粥と軟らかい野菜を食べ、ニワトコの煎汁は1合程づつ1日に3回服用しました。
すると、5日後には800グラム程も小便が出るようになり、10日後には腹も普通の人の腹のように小さくなり、自然と頭も軽くなり、一旦失明した眼も見えるようになって、1か月後には立って動けるようになるまで回復したそうです。
なお、『薬用植物事典』(村越三千男:著、福村書店:1954年刊)という本によると、ニワトコは、生薬名が「接骨木」(せっこつぼく)、および「接骨木花」(せっこつぼくか)です。
また、『北方植物園』(朝日新聞社:1968年刊)という本によると、ニワトコに接骨木という字を当てるのは、花のせん汁や材の黒焼きが骨折の治療に効果があるからだそうです。
そして、『薬用植物ト其実際的応用治療』(村越三千男:著、新教社:1942年刊)という本には、「接骨木は腎臓炎に特効のある物で、その花と木を煎じて服みますと、軽い腎臓炎なら二十日間位で治ります。」と書かれているので、ニワトコが腎臓炎に有効であることは広く知られていたようです。
以上、3回にわたって『新漢方療法』で紹介されている生薬の意外な効果をご紹介しましたが、この本にはこれ以外にも以下のような体験談が掲載されているので、よかったら国立国会図書館デジタルコレクションというサイトにログインしてご覧ください。
・肺結核を「にんにく」で根治した体験談
・坐骨神経痛を「にんにく」で根治した体験談
・喘息を「寒天の赤砂糖湯」で根治した体験談
・百日咳を「おおばこ」で根治した体験談
・脚気を「夏みかん」で根治した体験談
・胃腸病を「げんのしょうこ」で根治した体験談
・盲腸炎を「はこべ」で根治した体験談
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・蓄膿症を「どくだみ」で根治した体験談
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