「弥勒の月」より始まる「弥勒」シリーズ
「鬼を待つ」に続く10作目
かつては武士であった遠野屋
謎を解くことに愉しさを見出す同心の木暮信次郎
この二人の冷や冷やするようなやり取りに気を揉む 木暮の手先を務める伊佐治
今回の事件は
殺された夫婦は ひどく驚いた表情をしていた
やがて殺した人間は分かるがー謎は全て解けていない
すっきりしない気持ちを遠野屋も伊佐治も抱く
意外な黒幕はちゃんと描かれている
木暮が幼い頃に亡くなった母
その母はどのような人間であったのか
物語を読み終えてみれば 謎を見通す言葉の手がかりは物語のそこかしこにきちんと書かれている
凄惨な遠野屋の過去
商人として店の主人として堅気の世界にとどまろうとする遠野屋
その形を維持できるか 遠野屋の葛藤を残酷な面白がり方しているような木暮
いざとなれば背中合わせに戦うこともできる
できるが 危うさも含む
解説は文芸評論家の末國善己さん