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夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「山の宿・二」

2007-10-02 21:09:24 | 自作の小説

彼が抱いた不審な気持ちは 朝食の匂いでそらされた

キンピラ牛蒡 ひじきの煮たの だし巻き卵 よくある冷たいものでなし 湯気たてている
大体に仕上がったものを小鍋で温め出すようになっているのだった
蜆の味噌汁が胃に優しい

「洗濯物出して下さいね」智夜子は言う

バナナとリンゴと黒砂糖入りのヨーグルトドリンクを勧めた

「少しいった先に小さな沼があります ずっと木陰を行く道なので歩きやすいですよ」
運動することも勧めるのだった

彼はだが森に今日は知らず陰鬱なものを覚える

森の奥に何か感じる
しかもそれは彼を呼ぶのだ

ざわざわ枝葉が揺れる
びっしりみっしりと頭上に茂ったものの中を何かが渡っていく
踏む土の中で動いているものがある

歩きながら彼は頭の中で繰り返していた
「美味しい血 美味しい血 美味しい血」

何故だろう 確かに世は健康ブームだが

森の奥に祠があり彼は素直に入っていく

扉は閉ざされた

中で何があったのか
よろよろと彼はでてきた

何やら不思議な歩き方をしている

それでも部屋へ戻っていった

風呂の中で彼は気付く―自分は何をしていたのだろう―と

散歩していたのでは なかったろうか

目眩を覚え 風呂を上がると 智夜子が待っていた

「疲れのとれるマッサージいたしますよ」
指の動きが眠気を誘い 彼は又眠る

「お食事の時間ですよ」

痺れたような体を何とか動かし 起き上がる
焼き肉の用意がしてあった

「後で片付けにまいります」

智夜子は元気だった
大皿に盛られた肉 野菜を一人焼いていく

みはからっていたように 食べ終わった頃 智夜子は戻ってきた

宿特製の薬用酒を勧める

不思議な匂いに奇妙な味
それが体の中を流れていくのを感じる

急速に彼の中では{自分}が 失われつつあった

幾日経ったか 智夜子が言う
「お客さん 随分痩せられましたよ」

鏡を見せられた 確かに以前はあると思わなかった鎖骨が あばらが判る

彼は夢を見た

巨大な何かが のしかかってくる

智夜子の声がする
「がつがつしては駄目よ 長持ちしないから
加減しないと」

奇妙な笑い声

布団が波打つ 畳が揺れている 波のように ひたひた押し寄せてくる
なんだろう と 思ううち倦怠感に呑まれ 意識は消えていく

それでも彼は帰ることを思い始める

働かねば 生活が成り立たぬ

智夜子は止める 「もう少し お元気にならなくてはね」
そしてまた飲み物を勧める

―何なのだろう これは―思うのに彼は逆らえずにいる


佐々木譲著「制服捜査」新潮社

2007-10-02 19:12:25 | 本と雑誌

佐々木譲著「制服捜査」新潮社
佐々木譲著「制服捜査」新潮社
舞台は北海道 駐在所へ単身赴任した川久保は慣れない土地で やや閉鎖的でもある人々相手に何とか 正義を貫こうとする

隠蔽体質ある地元の有力者たち

時に苦い思いもするが 彼は真実を求めていく

25年の経験は たとえおかしな人事にあっても 挫けず 自分にできる仕事を精一杯片付け 立ち向かわせる

一話進むごとに味方ができてくる展開なのが 読んでいて良いです


畠中恵著「つくもがみ貸します」角川書店

2007-10-02 14:10:17 | 本と雑誌

畠中恵著「つくもがみ貸します」角川書店
畠中恵著「つくもがみ貸します」角川書店
喋る古道具達―とくれば作者お得意の畠中ワールド

頼りないようで すっとぼけているけど頭は切れる清次

ひとつ年上のお紅

清次はお紅が好きだけど 言い出せず
お紅はわけあって江戸を離れた男の行方を気にしている
古道具も置く損料屋 出雲屋
そこへいついた つくもがみ達

珍妙な事件に おせっかいな面々が 活躍する

こんな話す道具(つくもがみ)さん 欲しいです

表紙 本文イラストの つくもがみさん達が とても可愛いです


佐藤愛子著「犬たちへの詫び状」文春文庫

2007-10-02 10:04:54 | 本と雑誌

佐藤愛子著「犬たちへの詫び状」文春文庫
佐藤愛子著「犬たちへの詫び状」文春文庫
佐藤愛子著「犬たちへの詫び状」文春文庫
佐藤愛子著「犬たちへの詫び状」文春文庫
佐藤愛子著「犬たちへの詫び状」文春文庫
今迄暮らした犬
作者が理想とする犬
生き物との共存

人間の在り方

北海道の夏の家

馬のこと

思い入れのある あれこれ

楽しいイラストつきです

あっさり ざっくばらん
だけど なんか いろんなしがらみ突き抜けたようで 心地よいです


柴田よしき著「ア・ソング・フォー・ユー」実業之日本社

2007-10-02 07:32:25 | 本と雑誌

柴田よしき著「ア・ソング・フォー・ユー」実業之日本社
花咲慎一郎 無認可の保育園園長にして私立探偵

危ないスジでみかけは綺麗だが凶暴な男(山内)に借金あり

別れた妻 麦子は弁護士

今はハリウッド・スターとなった女性の依頼は 高校生だった男をさがすこと
彼女の目的は―「ブルーライトヨコハマ」

オカメインコを捜す美女
挙動不審な彼女の婚約者「アカシアの雨」

赤ちゃんを捨てたコ捜しを続ける花咲

色々浮かび上がる経緯は「プレイバック パート3」

盗まれた骨は何処にあるのか「骨まで愛して」

山内の弱みを教えようとする秘書 外見は完璧な美女だが 実は元は男の長谷川
山内と長谷川から 珍獣かおもちゃ扱いされている花咲
それも今迄のあれやこれやで彼の人となりが認められているから

過去やむにやまれぬ経緯で 先輩刑事を射殺し 警察を辞めた花咲
妙ないきがかりから無認可の保育園を託され
その運営費用を賄う為に探偵業で時に命をはっている

著者は女性 幅広いジャンルの小説を書かれています