くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

機械仕掛けの青い鳥(35)

2019-05-05 20:44:01 | 「機械仕掛けの青い鳥」
 まぶしい光をまとった青い鳥が、ソラの鼻先をかすめるように通り過ぎ、スクリーンの中へと、頭から飛びこんでいった。
「あっ」
 声を洩らしたソラは、回りが急に明るくなり、なにもかもが白一色に染まったのを感じた。
 ――――……

 チュンチュン、パーン――。
 チュチュン、パパーン――。

 硬い物が破裂する小気味のいい音が、ソラの耳の奥をくすぐるように聞こえてきた。ひんやりとした空気が、首筋から服の中へ入りこみ、凍えるほどではないが、肩をすぼめたくなるほど肌寒かった。吐く息が、うっすらと白い湯気を立てていた。
 目が慣れてくると、ソラは、自分が瓦礫の山の中にいることに気がついた。
「どこ、ここ……」
 と、その場でぐるりを見回したソラは、ぽつりとつぶやいた。しかし内心では、この場所が映画の中に写っていた場所と同じであると、すぐに直感していた。
 建物の壁には、太い錐で穿たれたような穴が無数に開けられ、見える限りの窓には、ガラスが一枚も入っていなかった。わずかにガラスが残っていたとしても、ちゃんとしたガラスは一枚もなく、ひび割れてぎざぎざな形をしたガラスが、かろうじて窓枠にはまっているだけだった。足下には、崩れ落ちた壁の一部や粉々に砕け散ったガラスが、街の通り一面に散乱していた。
 ソラは、はっと思い出したように自分の手足を見ると、顔や体のあちらこちらを確かめるようにさわってみた。映画の中で見たウミと同様、大人の姿から、見慣れた自分の体に戻っているようだった。ただ、着ている服と履いている靴は、自分のものではなかった。大きさもちょうどよく、窮屈なこともなかったが、落ち着いた色の服は着古されていて、どことなく埃っぽかった。
「ウミ!」と、ソラは両手を口の前にあて、大きな声で名前を呼んだ。
 建物に反響する自分の声が、だんだんと小さくなっていき、やがて聞こえなくなった。

「ウミ!」

 どこか遠くの方から、チュンチュン――、という重く小気味のいい音が、時折ぎくりっと、驚かせるように聞こえてきた。

「ウミ――」

 と、扉のない建物の中から、ニョキリと太い腕が伸び、黒い革手袋をはめた手が、大きな声を出していたソラの襟をつかむと、グイッと真っ暗な陰の中へ、引っ張りこんだ。

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