「ふん」と、ガッチがつまらなさそうに言った。「助け出すどころか、入ったとたん、どこに飛ばされるか見当もつかないほど、危険だけどな」
「――」と、又三郎がガッチを見てうなずいた。
「そのために、扉を作った魔女は、王様の扉をこの大きさに作ったのじゃ」と、パフル大臣は言った。「だが、友人同士が互いの国を行き来するだけなら、小さな扉で十分なんじゃよ」
「どうして、扉なんか贈るんだよ」と、ガッチは言った。「お互い行き来するだけなら、ほかにもいろいろ手段があるんじゃないのか。たとえば走るとか、馬に乗るとか、飛行船に乗ったっていいじゃないかよ」――よりにもよって、「ふわふわした夢ん中を通っていくような危険な扉なんて、使わない方がいいだろう」
又三郎は、ガッチの言葉を考えるように聞いていた。
「――わしもそう思うがな」と、パフル大臣は言った。「だが、相手に気に入ってもらえる贈り物をしたい気持ちが、夢の扉になったのじゃ。夢の扉を使えば、わずらわしいことなく、扉を開いたとたん向こうの国に行けるんじゃからな。互いの友情を深めるには、相手のそばにいた方が、気持ちも余計に通じ合うもんじゃろうが」
「――贈り物の扉が、どうして今、ドリーブランドに戻って来たんでしょうか」と、又三郎は言った。「移動するための扉が、誰も移動させることなく、ばらばらになって落ちてきたということは、なにを意味するんでしょう」
「そりゃおまえ」と、ガッチは言った。「――なんでだよ」
と、パフル大臣が言った。「我々の前に現れた時は、ばらばらだったかもしれん。じゃが、ばらばらになる前は、誰かを通していたかもしれんぞ」
「だとしたら、そいつはどこに行ったんだ?」と、ガッチは首を傾げた。「落ちてきた扉は、この国ともうひとつの国とを行き来するための物だったんだろ」
「――やはり、扉を修理するしかなさそうじゃな」と、パフル大臣は言った。
「扉を作った魔女? ですか」と、又三郎は言った。「この城におられるのでしょうか」
と、ガッチは首を振った。「おれはそんな魔女に会ったことはないぞ」
「ほんとうにいるのかよ、そんな魔女が――」
と、ガッチは信じられないように言った。
「間違いなく、おる」
と、パフル大臣は大きくうなずいた。「――じゃが確かに、ここしばらく姿を見たことはないがな」
「――」と、ガッチと又三郎は顔を見合わせた。
「しっかりしてくれよ、大臣」と、ガッチがため息交じりに言った。「ほかに直せるやつはいないのか? 魔法が使えそうなやつなら、城の中に何人もいるだろ」
「そんなに簡単に直せればいいんじゃがな――」と、パフル大臣は思い出したように言った。「そうそう。そういえば、希望の町に、マジリックが来ておるじゃろ」
「マジリック? ああ。あの手品師がどうしたんだよ」と、ガッチが驚いたように言った。