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くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

狼おとこ(91)

2022-05-10 19:21:58 | 「狼おとこ」

「あんたもだよ」と、ゲリルは素早く振り向くと、銃を撃った。しかし、石柱の上から見下ろしているグレイには、当たらなかった。
「もう見切ったよ。その銃は、そこからじゃ当たらない」グレイが言うと、ゲリルは銃を構えながら近づこうとした。
「おっと、待った」と、グレイは服の下から、手の平ほどの石を取りだした。ゲリルは、その時はじめて気がついた。グレイは、もう狼の姿をしていなかった。

「それ以上近づくと、この石を投げる――」

「小僧、狼男はもうやめたのか?」と、ゲリルは訊いた。「やっぱりおまえは、半端な小僧だよ。牙も生えない、変身もできないんじゃ、“狼おとこ”が精一杯だな」
「もうあんたの銃は通じない。さっきもこの石が守ってくれた。変身は解けたが、まだ五感の鋭さは残っている。銀の弾をこの石で受けるくらい、なんでもないさ」
「――勝ったつもりでいるらしいが、この森から一歩でも外へ出てみろ、おまえは必ず捕まるぞ」
 ゲリルは不敵に笑った。
「まだわからないんだね」と、グレイは同情するように言った。「ここは、獣も人も関係ない、聖なる土地なのさ。ぼくも、ここまで入りこむのははじめてなんだ。本当はここから、どう外へ出ていいのかもわからない。あんたの仲間達は、もうとっくに迷宮でさまよい始めたよ。残ったのは、ぼくらだけさ――」
 ゲリルはグレイの乗った石柱にさっと回りこむように近づくと、頭を低くして銃を構えた。しかし、またしてもグレイは身を翻し、いつのまにか石柱の上からいなくなっていた。
 と、ゲリルの手から銃がもぎ取られた。あわてて取りかえそうとしたが、拳銃を持ったグレイは手の届かないところに立っていた。
「ここでは、ぼくもあんたも、同じだ」と、グレイは拳銃をゲリルに向けた。「この遺跡は、聖なる森に自由に出入りできた古代の人々が、ぼくらにはまったく想像もできない技術で作ったものだ。きっと、この聖なる土地の力を得るためだと思う。その力を、何に使ったのかなんて、誰も知らない。遠い昔のことだもの、忘れられてしまったんだろう。けど、この土地は変わらない。ここは、命の源のような気がする。だからここでは、獣も人も、区別がない――」
「うるさいぞ、小僧。なら、ここは神の領地だというのか」
「神様はそっちの専門だろ。ぼくは、感じることしかわからない。――でも、もしきっとみんなが考えを積み重ねていけば、その時は本当のことがわかるかもしれない」
 グレイは、ぽん――と、拳銃をゲリルの足元に放り投げた。
「ぼくは、あんたが憎い。だからここへ誘ったんだ。あんたの力が及ぶ世界では、ぼくはただの魔物にすぎないから。ここからは、簡単には抜け出せない。屁理屈は通用しない。頼れるのはただ、自分だけなんだ」
 グレイは、ゲリルを見据えながら、ゆっくりと後ろへ下がっていった。姿が月明かりに飲まれ、しかし声だけは、ゲリルの耳に届いてきた。

「あんたは、好きなところへ行けばいい。自分の力で、自由にしていいんだ。ぼくも。正直生きていられるか自信がない。けど、生き残ってみせる。それが最大の復讐だって、友達が教えてくれたから。
 君達だって、動物じゃないか。ぼくは感じるよ。この森は、命に満ち溢れているって。
 じゃ、さよなら――」

 ゲリルは銃を手に取ると、グレイが去っていった星空の向こうを撃ちまくった。弾を撃ち尽くすと、ゲリルは拳銃を放り投げ、膝を突きつつ、月を見上げて吠えた。その声は、しんと静まり返った遺跡に吸いこまれた。断末魔にも似た声は、明るい闇夜にも響かず、雨が地中に吸いこまれるように、静かにかき消えた。

                           おわり。そして、つづく――。

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よもよも

2022-05-10 06:08:27 | Weblog

やれほれ。

毎年の事だけど、

連休明けの仕事きついわぁ・・・。

まぁそれは置いといて、

天気なまたら悪過ぎん??

昨日は仕事から帰ってきて

とたんに寒すぎてストーブつけたけどさ、

花粉症もまだまだ始まったばかりで

寒さにこごえて鼻水が出てるのか

花粉にくぐられて鼻が止まらないのか

考える時間も耐えられないほど寒いし、

時折突風が吹いて窓ばしばしやるもんだから、

部屋でまったりしてたところ地震が来たかって飛び上がる感じだし、

5月も連休終わったら6月でいいんじゃない??

で、もう正月でいいよ。

理想を言えば、カレンダーは5月と1月と8月と9月だけで

毎月大型連休があるみたいなのがいいね。。

はぁ。

Mのつく漫画家が未来は宇宙船に乗って自由に旅ができるようになる

みたいなこと言ってたけど、

そんな時代が早く来て欲しいなぁ・・・。

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