「――もしかして」と、グレイは思いついたように言った。「おまえ達が隠してるんじゃないだろな」
魔女は顔を上げると、眉をひそめて首を傾げた。
「なんだって……」
「おまえ達にとっても、そこは聖地なんだろ」と、グレイは言った。「魔法を使って、ぼく達が見つけるのを邪魔してるんだな。だから、存在を感じても、誰もたどり着けないんだ。ぼく達が人間に戻るのが、くやしいんだろ」
「だまんな、小僧――」と、魔女は舌打ちをして言った。「聖地を守るのは、あたし達の使命さ。誰彼構わず立ち入っていい場所じゃないんだ。そのおかげで、どれだけの仲間が命を落としたと思う? おまえ達の血族だけじゃないんだよ。妙な力を持って生まれたばかりに、理不尽な理由で爪弾きにされてるのは。自分達だけが犠牲者だなんて、身勝手な考えは捨てるんだね」
「やっぱりあるんじゃないか、この町に」と、グレイは心持ち頬を緩ませて言った。「必ず見つけてみせる。おまえ達にも、おまえ達が使う魔法にも、邪魔させやしないからな」
「好きなだけ探せばいいさ」と、魔女は言った。「おまえ達が思ってるような場所かどうか、自分の目で確かめるがいい。あたしが嘘をついているかどうか、命がけで確かめればいい」
「そうするさ」と、グレイは言った。「これで、願いかかなうんだから。狼の力から、自由になれるんだから」
「――だったら」
と、魔女は忠告するように言った。
「だったら、人の世界にこれ以上首を突っこむのはおやめ。仇を討とうだなんて、くだらないことを考えるのは、やめたほうがいい」
グレイは、ちょっと信じられないといった顔をしたが、すぐに言った。
「――山のカラスどもだな。いちいちぼくのやることに口を出すと思ったら、あいつらはあんたのしもべだったのか」
「ほっほ、そのとおりだよ。ここいらの山のカラスは、ほとんどがあたしの家来さ。ひと声かければ、空を黒く覆うくらい、わけはないね」
「へへぇー」と、グレイは頓狂な叫び声を上げた。「人間の悪口なんか、あんたには言えないさ。それほどの力があるなら、なんで神話の時代みたいに、この国を支配してしまわないんだ。得意の魔法で、町にいる人間をすべて石像にしてしまえばいいのに。
ぼくは知ってるぞ。もう魔法には、わずかばかりの力しか残っちゃいないんだ。それを証拠に、たくさんの魔女狩りが行われて、本物の魔女が火あぶりにされたのを知っている。
その時だって、誰もほかの魔女は助けになんぞ来やしなかった。ただ、こそこそと逃げ隠れしていただけなんだ」
「坊主はわかっちゃいないんだ。十字架に掛けられたのは、鼻っ柱だけが強い駆け出しの魔女だったんだ。堂々と人の世界に入りこんで、見つかりっこないと高をくくっていたから、そうなったのさ」