少尉は、少しがたぴしゃと軋む風防ガラスを、まるでベランダのガラスを開けるように、するりと開いた。勢いの強い風が、ゴウーッと耳が痛むほど音を立て、操縦席の中になだれこんできた。
努力の甲斐なく、風防ガラスを開けられてしまったソラは、勢いのある風に軽々と舞い上げられ、風防ガラスの内側にドスン、と背中から叩きつけられた。
「さぁ、どこにでも飛んでおいき」少尉は、風に吹かれて目を細めながら、青い鳥をそっと持ち上げ、外に腕を伸ばした。
「どうして? 私の声が聞こえないの? 一緒に帰ろうよ。お願い――」
ウミの声は、少尉に届いていた。そしてその小さな姿も、少尉は目にしていた。
「こんな小さな神様がいたなんて、知らなかったよ」と、少尉は目を細めたまま言った。「ありがとう。もしも願いを叶えてもらえるなら、この戦争を早く終わらせてほしい……」
巻き上げる見えない風の圧力に押しつけられ、青い鳥とウミは、飛行機の外に飛び出していった。
「ウミ!」
ソラは迷わず、風防ガラスの縁に手を掛けて飛行機を蹴ると、グルグルと回りながら離れていく青い鳥に向かって、勢いよく飛び出していった。
パッチリと開けられた青い鳥の目が、赤く光った。風に舞い上げられ、宙に放り出された体が、嘘のように動きを止めた。
青い鳥の首に手を回し、ギュッと目をつぶっていたウミは、ゴウゴウと吹きつける風の音が止んだのに気がつき、ハッと目を開けた。
青い鳥が大きく翼を広げ、羽ばたくことなく、空中に浮かんでいた。ウミが顔を上げて見ると、痛めている片方の羽根が、半ばまでしか開いていなかった。
「大丈夫?……」青い鳥の顔を見ながら、ウミが心配そうに言うと、
「ウミ!」
ソラの声が聞こえた。
ウミが振り向くと、右手をうんと伸ばしたソラが、磁石で引きつけられるように近づいてきた。
「お兄ちゃん」と、ウミは言いながら、ソラに向かって片手を伸ばした。
二人の指先がわずかに触れると、すべての景色が真っ白く染まってしまうほどの光が、辺りを覆い尽くした。
努力の甲斐なく、風防ガラスを開けられてしまったソラは、勢いのある風に軽々と舞い上げられ、風防ガラスの内側にドスン、と背中から叩きつけられた。
「さぁ、どこにでも飛んでおいき」少尉は、風に吹かれて目を細めながら、青い鳥をそっと持ち上げ、外に腕を伸ばした。
「どうして? 私の声が聞こえないの? 一緒に帰ろうよ。お願い――」
ウミの声は、少尉に届いていた。そしてその小さな姿も、少尉は目にしていた。
「こんな小さな神様がいたなんて、知らなかったよ」と、少尉は目を細めたまま言った。「ありがとう。もしも願いを叶えてもらえるなら、この戦争を早く終わらせてほしい……」
巻き上げる見えない風の圧力に押しつけられ、青い鳥とウミは、飛行機の外に飛び出していった。
「ウミ!」
ソラは迷わず、風防ガラスの縁に手を掛けて飛行機を蹴ると、グルグルと回りながら離れていく青い鳥に向かって、勢いよく飛び出していった。
パッチリと開けられた青い鳥の目が、赤く光った。風に舞い上げられ、宙に放り出された体が、嘘のように動きを止めた。
青い鳥の首に手を回し、ギュッと目をつぶっていたウミは、ゴウゴウと吹きつける風の音が止んだのに気がつき、ハッと目を開けた。
青い鳥が大きく翼を広げ、羽ばたくことなく、空中に浮かんでいた。ウミが顔を上げて見ると、痛めている片方の羽根が、半ばまでしか開いていなかった。
「大丈夫?……」青い鳥の顔を見ながら、ウミが心配そうに言うと、
「ウミ!」
ソラの声が聞こえた。
ウミが振り向くと、右手をうんと伸ばしたソラが、磁石で引きつけられるように近づいてきた。
「お兄ちゃん」と、ウミは言いながら、ソラに向かって片手を伸ばした。
二人の指先がわずかに触れると、すべての景色が真っ白く染まってしまうほどの光が、辺りを覆い尽くした。