「ここは、あのカワセミの墓だったのか」
と、瞬は言った。言った途端、おかしな事に気がついた。「墓の一つはカワセミとして、先にあったもうひとつの墓は、誰のものなのか――」
「そうか。もうひとつの墓は、カワセミの親の墓だったんだ」
と、瞬が言うと、青い鳥は「チチッ」と、短い声を上げた。
この刀は、あの親子が持っていた刀なんだろう。と、瞬は考えていた。親鳥から子供の鳥に渡り、そして刀は次の――しかし、刀は二代までしか受け継がれなかったことに、瞬は気がついた。
サムライとして生きるよりも、鳥として生きることを、子供達は望んだのだろう。そのほうが、鳥にとっては幸せに違いない。小難しい人間の世界で生きるよりも、大空を飛び交って狩りを生業にする方が、彼らにとっては自然なことなのだから。
と、青い鳥の歩みは止まらず、地面から伸びた刀を咥えると、するりと刀身を引き抜いた。
空間を断ち切るその類い希な剣は、屋外に長年放置されていたにもかかわらず、わずかな錆もなく、刃に受けた光をキラリと怪しげに反射させた。
青い鳥は、誰に習ったわけでもなく、記憶していたカワセミの動きを一通り演武して見せた。
「お前は、あの鳥の剣術を習得したのか?」
と、瞬は声に出して言った。
青い鳥はなにも答えず、カワセミが見せたのと、そっくりに身構えた。
どん―― 。
と、一瞬の暗転の後、景色がすべて変わり、恐ろしげな武器を持った人間が、こちらに向かって襲いかかってきた。過去の映像を見ているのだとわかっているはずの瞬だったが、その迫力に思わず頭を低く身を守ってしまった。かと思えば、耳を覆いたくなるような奇声と共に後ろから襲いかかってきた人間から、かろうじて身をかわして避け、さらに頭の上をかすめ飛ぶ矢を交わし、間髪を入れずに、雨あられと撃ち出される銃弾の雨をくぐり抜けた。
「いつまでも、逃げてばかりはいられないぞ。なにか手を打たなければ、いずれ小さなミスをしたとたん、隙を突かれて命を落としかねない」
と、瞬のすぐ側に、カワセミが持っていたあの刀が、足下から立っているのが見えた。
「早くその刀を取るんだ。カワセミの意志を継ぐのは、もうお前しかいないんだから」
と、瞬は言った途端、唐突に自由になった青い鳥の体で、目の前に立つ刀を引き抜き、休まず襲いかかってくる暴漢達に向かって、反撃の一刀を振るった。
ズドン――。
結果は、火を見るよりも明らかだった。