「――こんなところまで追いかけさせて、覚悟しなさいよ」
と、Sガールは我に返った途端、真人に向かって拳を振り上げた。「石はどこ? 許さないんだから」
「子供相手に大人げないな」と、真人はSガールの拳を避けながら言った。「ピチピチの水着みたいなスーツを着てるあんたこそ、見た目が子供っぽいけどな」
「あんた、誰?」と、Sガールは首を傾げた。「そこのお兄さんは前にも会ってるけど、もしかしてあんたが、悪魔?」
「だったらどうする。呪われないように、お祈りでもしてみるか」と、真人は笑いながら言った。
「黙れ、この悪魔」と、Sガールは再び拳を振り上げて言った。「見た目は子供だけれど、その腹の中にどれだけの悪業が潜んでいるの」
Sガールの拳が風を切って打ち出された。
正面にいる真人は不敵な笑みを浮かべたまま、微動だにしなかった。
「おまえの相手はおれがする」と、ジローは打ち出されたSガールの手首をつかむと、ねじり上げながら言った。「悪魔退治はその後にしろ」
「頼んだぜ」と、真人は二人と距離を置いた。
「オウ」
と、ジローはうなずくと、Sガールの腕をさらにねじり上げ、海岸の砂利が派手に巻き上がるほど、思い切り地面に押し倒した。
「――痛いわね」と、海岸の砂利に突っ伏していたSガールは、腕をねじり上げているジローの手をもう片方の手でつかむと、力比べをするように、ゆっくりとねじり返していった。
「ほう」
と、離れたところで見ていた真人は、感心したように言った。
「さすが二三世紀の技術だな。だけど、もうそろそろ蓄積したパワーがレッドゾーンに入る頃だろ」
「なに言ってるの」と、Sガールは余裕の笑みを浮かべながら立ち上がると、替わりにジローを海岸にうつ伏せにさせた。「こいつを黙らせたら、次はお前だからな」
「そりゃ楽しみだ」と、真人は挑発するように前に出てきて言った。「オレの計算じゃ、そろそろカウントダウンが始まるぞ」
「チックタック、チックタック、チックタック……」
と、真人は時計が秒針を刻むように、繰り返し言った。