水槽から体を半分乗り出しながら、宙に浮かんでいるのをいいことに、広いテーブル中に置かれた料理を、次々とつまみ食いするようにかじりついていった。
「――トッピー、行儀の悪い真似やめなよ」と、顔を赤くしたサトルが、小声で言った。
ちゃんとした食事は、砂漠の町を出てから一度もしていなかった。旅をしながら、ほとんど干しイモだけでがまんしていたサトルは、テーブルの中央に近い椅子に座ると、ランドセルを足下に降ろして、給仕の人が、飲み物を持ってきてくれるわずかな時間も待ちきれず、お腹をすかせた獣のようにガツガツと料理を頬張り始めた。
次々と席を移りながら、サトルはお腹がパンパンになるまでたらふく料理を食べると、「ごちそうさまでした……」と満足そうに言って、溢れてくるゲップをがまんしながら、椅子の背もたれにどっかりと体をあずけた。
「どうでしたかな? お城の料理は、お気に召していただけましたか――」と、テーブルの端の席に座っていたパフル大臣が、サトルとトッピーに聞いた。
二人とも、声も出せないほど苦しそうにうなずいた。
満足そうに微笑んだ大臣が、お茶の入ったカップを口に運びながら言った。
「それでは、少し休んでから、お城の中を見て歩くことにしますかな……」
椅子に腰掛けたまま、満腹になった心地よさで、ついつい眠気に誘われ、うたた寝をしてしまったサトルは、トッピーの声で目を覚ました。
「おい! いつまで寝てるつもりだよ。グズグズしてたら、元の世界に帰れなくなっちゃうぞ――」
「まぁまぁ……」と、大臣が声をひそめながら、トッピーをなだめるように言った。
サトルは、ぼんやりと焦点の定まらない目を開けると、独り言のように言った。
「ごめんなさい……」
眠い目をこすりながら、サトルはふらふらと席を立った。
パフル大臣の案内で、サトル達は城の中を見て歩いた。廊下が広く、天井も高かった。床には、ふかふかの絨毯が敷かれ、壁も天井も、多くの絵画や装飾品で埋め尽くされていた。たくさんの部屋があって、中に入らせてもらったどの部屋にも、それぞれのテーマに沿った装飾が施されていた。ほかの部屋はどうなっているのか、サトルは興味を覚えたが、駆け足ですべての部屋を見ることは、とうていできなかった。
城の中を足早に移動しながら、サトルはひとつだけ、奇妙に思ったことがあった。広い城にもかかわらず、ほとんど人がいないことだった。大臣はなにも言わなかったが、どこもかしこもガランとしていて、城中の人達が、なにかしらの行事に参加するため、全員出払っているかのようだった。
サトル達は、城の中央にある広間に戻ってきた。一階まで延びる階段が、ゆるりと弧を描くすべり台を思わせた。段差の低い階段を降りていくと、手すりの横の壁には、大小様々な大きさの額に入れられた肖像画が、所狭しと掛けられていた。大臣に聞くと、描かれているのは、歴代のねむり王とその家族の肖像画だという。中には、サトルが出会ったねむり王とそっくりな絵が掛けられていて、サトルは思わず指を差しながら、頓狂な声を上げてしまった。
「――トッピー、行儀の悪い真似やめなよ」と、顔を赤くしたサトルが、小声で言った。
ちゃんとした食事は、砂漠の町を出てから一度もしていなかった。旅をしながら、ほとんど干しイモだけでがまんしていたサトルは、テーブルの中央に近い椅子に座ると、ランドセルを足下に降ろして、給仕の人が、飲み物を持ってきてくれるわずかな時間も待ちきれず、お腹をすかせた獣のようにガツガツと料理を頬張り始めた。
次々と席を移りながら、サトルはお腹がパンパンになるまでたらふく料理を食べると、「ごちそうさまでした……」と満足そうに言って、溢れてくるゲップをがまんしながら、椅子の背もたれにどっかりと体をあずけた。
「どうでしたかな? お城の料理は、お気に召していただけましたか――」と、テーブルの端の席に座っていたパフル大臣が、サトルとトッピーに聞いた。
二人とも、声も出せないほど苦しそうにうなずいた。
満足そうに微笑んだ大臣が、お茶の入ったカップを口に運びながら言った。
「それでは、少し休んでから、お城の中を見て歩くことにしますかな……」
椅子に腰掛けたまま、満腹になった心地よさで、ついつい眠気に誘われ、うたた寝をしてしまったサトルは、トッピーの声で目を覚ました。
「おい! いつまで寝てるつもりだよ。グズグズしてたら、元の世界に帰れなくなっちゃうぞ――」
「まぁまぁ……」と、大臣が声をひそめながら、トッピーをなだめるように言った。
サトルは、ぼんやりと焦点の定まらない目を開けると、独り言のように言った。
「ごめんなさい……」
眠い目をこすりながら、サトルはふらふらと席を立った。
パフル大臣の案内で、サトル達は城の中を見て歩いた。廊下が広く、天井も高かった。床には、ふかふかの絨毯が敷かれ、壁も天井も、多くの絵画や装飾品で埋め尽くされていた。たくさんの部屋があって、中に入らせてもらったどの部屋にも、それぞれのテーマに沿った装飾が施されていた。ほかの部屋はどうなっているのか、サトルは興味を覚えたが、駆け足ですべての部屋を見ることは、とうていできなかった。
城の中を足早に移動しながら、サトルはひとつだけ、奇妙に思ったことがあった。広い城にもかかわらず、ほとんど人がいないことだった。大臣はなにも言わなかったが、どこもかしこもガランとしていて、城中の人達が、なにかしらの行事に参加するため、全員出払っているかのようだった。
サトル達は、城の中央にある広間に戻ってきた。一階まで延びる階段が、ゆるりと弧を描くすべり台を思わせた。段差の低い階段を降りていくと、手すりの横の壁には、大小様々な大きさの額に入れられた肖像画が、所狭しと掛けられていた。大臣に聞くと、描かれているのは、歴代のねむり王とその家族の肖像画だという。中には、サトルが出会ったねむり王とそっくりな絵が掛けられていて、サトルは思わず指を差しながら、頓狂な声を上げてしまった。