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日本鋼管事件最高裁第二小法廷昭和49年3月15日判決(労判198-23)

2010-12-23 | 日記
本最高裁判決は,私生活上における従業員の行為について,懲戒処分等の会社の規制を及ぼしうるかどうかについて判断し,これを肯定しています。
しかし,その要件として,
「従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには,必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが,当該行為の性質,情状のほか,会社の事業の種類・態様・規模,会社の経済界に占める地位,経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から綜合的に判断して,右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない。」
と判断しており,解雇等の重い処分については,限定された場面でのみ行うことができるものと考えられます。

弁護士 藤田 進太郎


営利を目的と知る会社がその名誉,信用その他相当の社会的評価を維持することは,会社の存立ないし事業の運営にとって不可欠であるから,会社の社会的評価に重大な悪影響を与えるような従業員の行為については,それが職務遂行と直接関係のない私生活上で行われたものであっても,これに対して会社の規制を及ぼしうることは当然認められなければならない。
本件懲戒規定も,このような趣旨において,社会一般から不名誉な行為として非難されるような従業員の行為により会社の名誉,信用その他の社会的評価を著しく毀損したと客観的に認められる場合に,制裁として,当該従業員を企業から排除しうることを定めたものであると解される。
所論は,右懲戒規定にいう「会社の体面」とは,会社の社会的評価のほかに,会社がそのような評価を受けていることについての会社の経営者や従業員らの有する主観的な価値意識ないし名誉感情を含むものであり,同規定は,従業員の不名誉な行為がこのような会社関係者の主観的感情を著しく侵害した場合にもこれを懲戒解雇の対象とする趣旨である旨主張するが,会社の存立ないし事業運営の維持確保を目標とする懲戒の本旨にかんがみれば,右「会社の体面」とは,会社に対する社会一般の客観的評価をいうものであって,所論指摘の諸点を考慮しても,なお,同規定を所論のように広く解すべき合理的理由を見出すことはできない。
しかして,従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには,必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが,当該行為の性質,情状のほか,会社の事業の種類・態様・規模,会社の経済界に占める地位,経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から綜合的に判断して,右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない。


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