ミヤマカラスアゲハとコクサギ。
コクサギ ( Orixa japonica ) は一属一種のコクサギ属ミカン科の落葉低木で朝鮮半島南部、中国大陸南部およびわが国では本州、四国、九州に分布しますが、北海道には自生しません。
ただ何事にも例外があり、北海道オホーツクの北見市の私の家の庭には3mほどの大株があります。
北海道でコクサギを庭に植えている方は極めて稀ではないかと思っていますがどうでしょうか。
このコクサギの由来は昔、東京目白の蝶愛好家大野義昭さんと一杯やったおり、彼の自宅庭のコクサギを株分けしてもらったものです。JALで北海道に運びました。
ところで、従来、蝶類図鑑その他で、ミヤマカラスアゲハ の食樹としては、もっぱらキハダ、カラスザンショウ、ハマセンダンがあげられ、コクサギは出てきません。
コクサギは飼育で与えても利用されないとする図鑑もありました。
北海道ではキハダしか分布せず、そのためミヤマカラスアゲハの食樹はもっぱらキハダあるのみです。
ある時、我が家のキハダが完全にアブラムシにやられ利用できなくなり、この時、試みにミヤマカラスアゲハの採卵、飼育にコクサギを利用してみました。
思いがけずミヤマカラスアゲハ 母蝶は、キハダと同じようにコクサギの葉によく産卵し幼虫はコクサギを一見よく食べて発育しました。
しかし、令が進むにつれ少しづつ弱って、ついには死亡するものが続出し、最終的に蛹化できたのは10%ほどに過ぎませんでした。ただ蛹化した蛹は全て普通のミヤマカラスアゲハが順調に羽化しました。
蛹化直前のベチャ糞。
その後もキハダがだめになったこともあり、ダメ元でコクサギを利用し続けたのですが、その結果いろいろわかってきました。
すなわち、きちんと糞などの処理を怠らず、飼育環境をとくに清潔に保ち、常に新鮮なコクサギを与えて温度、湿度環境にも気を配って丁寧に飼育すると蛹化率は80-90%になりました。
要するにこれまでのようなズボラほったらかし飼育(キハダならこれでもうまく飼育できた)ではだめだがとりわけ丁寧に飼育すればコクサギによるミヤマカラスアゲハ飼育は十分可能ということでした。袋がけではうまくいかなかったのでおそらく自然環境ではだめでしょう。
幼虫の種々の免疫力、抵抗力、体力など、総合的な環境適応力がコクサギ飼育では不十分になるということだとおもいます。きっとキハダに比べ何かが足りないのでしょう。
蛹化したものは、キハダで飼育したものよりやや小型になりますが、順調に羽化します。
これはごく普通の夏型として羽化したオス。
これは普通の夏型タイプとして羽化したメス。
これらの経過をブログなどSNSで何度か発信したことがあります。
そうすると、その後、話が飛躍してミヤマカラスアゲハ の食樹としてコクサギがあげられたりしているのを見かけることがあります。しかし、未だ自然界での産卵や幼虫発見の記録はないように思われますがどうでしょうか。
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