続・弓道の極意

私が一生をかけて極めようとしている弓道について、日々の気づきを積み重ねていくブログ

自然の離れはなぜ出るか?

2009年07月12日 | 極意探求
これまでいろいろと説明をしてきたが、要は、最深の会を生み出すための3つの条件を説明してきたに過ぎない。それは、以下のとおりである。

 ①縦線の安定
 ②肩根から手の内までの最深の詰合い
 ③的に向かってまっすぐに伸びる伸合い(背中に向かう開く勁力と手の内の作用)

これらは①から③までちょうど因果の関係になっている。つまり、縦線が完成して初めて深く詰めあうことができ、完全な詰合いがあって初めて伸合うことが出来るようになる。

そして、これらの先にあるものこそ、最深の会であり、自然の離れである。

ここでいう自然の離れとは、自分で離そうとすることなしに、弓力と身体の力(勁力)とが自然にはじけて離れを出すことを言う。

実は、上記3つの条件こそ、自然の離れを生み出す基本的なシステムなのである。

今回はこのことについて簡単に説明したい。

なぜ、上記3つの条件を満たすと、自然の離れが生まれるのか?

それは、これら3つの条件が、伸筋(勁力)のみを使わざるを得なくなる状態に持っていくからである。そういう意味では、詰合いの完成こそ本質といえるだろう。

勁力を矢印でイメージしてもらうと(写真参照)、縦横十文字に詰合い切った会では、両足(2本)、頭(1本)、両腕(2本)という5つの矢印が全て身体の中心から外側に向かって放たれていることがわかるだろう。(もし完全な詰合いでなかった場合、矢印はどうかわってしまうだろうか?)

これは、実際の会での感覚とイコールである。つまり、完全な詰合いによって最深の会に入ったならば、会では「身体で押し広げる」という感覚になるのだ。

これは例えば、四方を狭い、強固な壁で覆われていることをイメージしてほしい。体育座りでようやく入れるような狭い箱である。

そこに例えば閉じ込められているとして、そこから抜け出るために、全力でその箱を押し壊そうとしてみよう。

このとき、手足の力ではなく、身体全体で圧をかけていることが感じられるだろうか?

それでも、もちろん強固な壁はびくともしないのであるが、背中、首、足などは全力で壁を押していて、すごい圧力を感じることができるはずである。(腕はほとんど使わないことに注目。支えにはすれど、腕の力で押そうとすることはしないはずである)

この身体全体で弾けさせようとする感覚こそ、勁力による離れの発動のイメージである。

もし上記で突然箱が壊れたら、どうなるだろうか?自分も箱が壊れるとともに、転げ出てしまうだろうか?

否、そうはならない。四方八方に身体全体を使って圧をかけているならば、箱が壊れた瞬間に、身体全体から四方八方への力が抜け、伸びきった感覚になるだけで、微動だにしないだろう。

もちろん箱は、限界の圧を受けて、激しく四方に飛び散ることになる。

これこそ、自然の離れのイメージである。