続・弓道の極意

私が一生をかけて極めようとしている弓道について、日々の気づきを積み重ねていくブログ

角見のハタラキ

2010年01月19日 | 積み重ね
弓道の技術としては、詰合い、伸合いとともに、角見が特に注目を集めやすい。これは、それだけ本質的な技術であるからであろう。

しかし、実際、角見がなぜこれほどまでに重要なのか、どんなハタラキを持っているのか、についてはあまり認識がされていないように思う。

よく言われるのは、「矢を真っ直ぐに飛ばす」というハタラキである。

これは確かにごもっともで、弓の構造上、角見がなければ矢は必ず前に飛ぶ性質を持っている(※)から、それを補正する役目として角見が貢献していることは間違いない。

しかし、これよりももっと重要なハタラキを角見は持っている。それが「離れを誘うハタラキ」である。

離れを誘うというのは、離れの刹那にほんの少しでも弓が的に向かって動くことをいう。

これは、たとえばパチンコ(Y字型の二股の先にゴムをつけ、石などを飛ばすオモチャ)で石を飛ばすときのことをイメージすると分かりやすい。

パチンコで石を勢いよく飛ばすコツは、手で持つY字型の台座を飛ばす方向に傾けてやることである。そうすると、まさに石が発射される瞬間、あたかもY字型の台座に引っ張られるように石が勢いよく発射されるのである。

もし、Y字型の台座を真っ直ぐにして石を飛ばすと、どんなにがんばったとしても、台座はゴムの反作用でねらいとは逆の方向に引き戻される(刹那のレベルで)。これは当然、飛んでくる石とはぶつかる方向であり、勢いを二重にそいでしまうことになる。

これと全く同じことが弓でも起こる。つまり、弓が止まったまま離れが出ると、刹那のレベルで弓は引き戻され、飛んでくる弦矢とぶつかる。(これは関板と弦がぶつかる音によってわかる:よく弦音と勘違いされるが、バキャーンというどうにも鈍い音である)

ところが角見が効いていると、離れの瞬間に弓が的の方向にぐっと動き、その勢いがそのまま矢に加わり、弓の鋭い弾性とあいまって加速度的に矢を加速させる。

このとき、弦は関板とぶつかることはないから、純粋にキャンという鋭い弦音が鳴るわけである。

このように、弓が矢を押す、あるいは、弓手が矢を押すようなイメージで離れることが重要であり、そのために角見は欠かせない要素なのである。


※離れの際、弦(矢筈)は弓に向かってぶつかるようにまっすぐ飛んでいくのに対し、矢本体(矢尻)は弓の前側面を沿うように出て行くから、的に対し前に出て行く。