そんな老人たちの心を結び合わせ、その単調な生活を規定しているのは今でも軍隊だ。あるいは彼ら老人こそが影を持たぬ生活に最も適していたのかもしれない。彼らは朝早く目覚めると急いで朝食を済ませ、誰に命令されるでもなくそれぞれの仕事にとりかかるのである。あるものは古びた「官舎」の壁に白ペンキを塗り、あるものは花壇の雑草をつみ、あるものは配給食糧を取りに行く役所(それもきっとあの川沿いに並んだ正体不明の建物のどれかの中にあるのだろう)へとでかける。
老人たちは朝の労働を終えると、あとは「官舎」の正面の日だまりに腰を下ろし、」年金の計算をしたり、古い戦役の思い出話に耽るのである。