急傾斜の畑のあいまに、人が一人歩ける幅の径がある。
両側に栗の丸太を置いてそこが道であることをはっきりさせ
はしご状に、横にも短い栗の丸太を置いてある。
それは歩きやすくする役にも立っているが、常に下へと落ち続ける土を留める役割もしている。
径は大きな杉の木の下へと続く。
そこには心地よさげな暗がりがある。
その大木の根元に丸い石が据えられていたり、小さな鳥居があったりするかどうかは分からないけれど、座ってむらの耕地や家々を見下ろしたり、対岸の山を眺めたりするにはいい場所だろう。
鍬や種や作物を背負ってこの急傾斜の小径を上った人たちは、きっとこの木陰で足を止めて、汗をぬぐったに違いない。
こういった小さな径が、家と家、家と耕地を結んでいる。
この径は今も住宅地図の中ではっきりと点線で示されている、使われている径でもある。
古い時代にはこの径を主にして人が往来していただろう。ちょっと隣の家に行くのに、このかわいらしい径を辿っていただろう。
今よりももっと人は歩いていて、この土地に密着して生きていて、誰かと出会うことも多かっただろう。
続く
写真/長野県遠山郷・下栗(飯田市旧上村 2015年6月)
Simoguri, Tooyama-go, Nagano-pref.
ブログランキング参加中


