富士急線三つ峠駅のすぐそばにある倉見山は便利な割にあまり知られていないし、登る人も少ない。
そういえば地理院の2万五千の地図には山名が書いていない。
私はこの山を横山厚夫さんの「一日の山中央線私の山旅」を読んで知っていたが、登ってみようと思い立ったのは今年の秋、この本を読み返してみてからだ。
東桂駅から歩いて鹿留川ぞいにある登山口へむかう。途中に発電所がある。
登山口はこのお寺の墓地の中を通っていく。
よく目立つ白い案内標識があった。写真を撮っていたら道の反対側にある民家のおばさんが「おはようございます」と声をかけてくれた。
墓地の裏は獣除けの柵が設置されていた。その扉をあけて山へとはいる。
山道はすぐに祠にぶつかるが、その前に同じような案内標識があって、上にむかう山道へと入っていく。
しばらく急登が続くが、足元は落ち葉でうずまっている。
その中に大ぶり黄色くなったカエデの葉があった。帰って調べたらイタヤカエデの葉だった。
黒々とした山をバックにして色づいた木々の葉がかがやいて見える。
クマ出没注意の看板があった。都留市の市街からすぐ近くなのだが、現れるときはあらわれるのだろう。
落ち葉で道がわかりにくいのだが、道をはずさないように気をつけて歩く。
急なところには階段状に横木(といってもゴム製?)が設置されていて歩きやすいし、迷わなくていい。
ようやく倉見山から北東に伸びる主尾根の一角にたどりついた。
尾根の左、南東側を見ると遠くに御正体山らしき大きな山が見えた。
この山も近いうちに登ってみたい。
落ち葉に埋め尽くされた斜面をガサガサ音をたてながら登り続ける。
ところどころ視界が広がる。今度は尾根の右側、桂川の谷のほうが見えた。
遠くに南大菩薩の黒岳と雁ケ腹摺山も見える。
先ほど倉見山の頂上らしきピークが見えたのでそろそろ大詰めの登りだと喜んだ。
でも上がってみたらさらに先にもう一段の急登が待ち構えていた。
かなり長く登りの尾根を歩いてきたので、急登はきつい。
こんどこそ頂上らしいぞ。
ようやくたどりついた。倉見山1256mの山頂だ。
頂上は松が数本あるが、富士山の方向は開けていて、松の木がちょうど額縁の役割を果たしている。
澄み切った空気のむこうに富士山。こんなくっきりした富士山は久しぶりだ。
望遠にしてしっかりと切り取ってみた。
富士山の見える地点から一歩下がったところの岩に腰かけて昼食休憩にした。
生えている木が風をさえぎって暖かい。
食後お湯を射わかしてゆっくりとコーヒーを味わう。
そして次のポイントへ移動。そこは、横山さんの本によれば山頂より富士の展望がすぐれているという。
頂上から5分ほどのそこには朽ち果てた木のベンチとテーブルがあって、よい休憩スポットだったことを物語っているが、いまは密な藪が背丈をのばしてしまってあまりいいとはいいがたい。
見晴らしはいいのだが、すわってしまうと見えなくなる。
さて下山は地図上に堂尾山公園と書かれている地点をへて寿駅へと向かう。
尾根をくだって登り返すとそこが下山に使う尾根のてっぺんで、標識には堂尾山と書いてある。
ほかのハイキング地図には「相定ヶ峰」と書いてあったと思う。
下ってみてわかったのだが、この尾根とこのピークをふもとの向原の人々が整備していいるようで、堂尾山公園の桜も向原の人たちが植えたようだ。その人たちはここを堂尾山と呼んでいるのだろう。
かつては木々におおわれていたのだろうが、ある時期に富士山方向の木を伐採して見晴らしを確保してあった。
富士山をゆっくりながめるのなら山頂が広いここが一番よさそうだ。
この山ではだれにも会わないと思っていたら、ここには地元の方らしい人が4人休んで富士山をながめていた。
そこで記念写真を一枚撮ってもらった。
そこからの「堂尾尾根」(これは私のかってな呼び方)は道も歩きやすく、葉を落とし始めた木の合間からは富士山も見え隠れしてなかなかいいコースだった。早くもふもとの民家が見え始めた。
上の方ではすっかり葉を落としていたカラマツも少し下ると黄金色にかがやく葉を残していた。
すみきった青空にカラマツの黄金色が映える。
道がよく整備されていて歩きやすい。
富士吉田の街並みも見え始めた。
堂尾山公園というところに出た。尾根の広い鞍部で昔は峠としての役割を果たしていたところだと思われる。
そこを整地して富士山の方向の斜面に桜が植えてあった。春は富士山を背景に花見ができるということのようだ。
この峠から寿ではなく三つ峠方向へくだるとクマガイソウの群生地があるようだ。
ついつい富士山を撮ってしまうが、富士だけでは同じような写真になるので少し趣向をこらしてみた。
さらに寿駅をめざしてくだると富士見台というところに出た。
山道から少しだけ尾根の先端へと迂回したところにある。大きな木は切りはらわれていて雄大に富士山が見渡せた。
ちょうどお昼の時間帯となって富士山の氷の斜面がひかり輝いていたのでアップで撮ってみた。
吉田口の登山道のジグザグがくっきりと浮かび上がった。
左を見るとこれも富士山の展望台として有名な杓子山。
私が登った時は、周囲は晴れているのに、富士山の方角だけ雲があってみえなかった。
里が近づいて標高も700mくらいになったので色づいた木の葉がまだ残っていて目を楽しませてくれる。
秋の深まった里山。いいねぇ。
今度は額縁を変えて撮ってみた(笑)
堂尾山尾根の登山口は鉄の階段だった。
逆コースで登るときにはわかりやすい目印になる。
寿駅へと向かう途中、はじめて倉見山の姿を遠望することができた。
無人の寿駅に到着。
電車まで少し時間があったので近くのコンビニでビールを仕入れて味わうことができた。
今回のコースを振り返ってみて、逆に歩くほうがいいのではないかと思った。
堂尾山コースのほうが展望が開けるポイントがけっこうあるし、道も極端に急なところはない。
東桂コースを下りにすれば、山頂直下の急なくだりをクリアすればあとはだらだら下りとなるので楽だと思う。
東桂までが長いと感じたら、道は急だが三つ峠に下ってしまうこともできる。
それより富士山を眺めながら同じ道を戻るほうがいいかもしれない。
三角点のある倉見山にこだわらないのなら、堂尾山で折り返してもいいと思う。