武弘・Takehiroの部屋

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選挙報道の失敗談

2024年07月09日 03時55分43秒 | フジテレビ関係

〈2014年12月3日に書いた以下の記事を復刻します。〉

総選挙の公示で昔、テレビ局でいろいろな選挙報道を手がけたことを思い出した。大変だったが、今になれば楽しい思い出である。
冬の選挙となると、雪の多い地域の取材は大変だった。ある時、たしか北陸地方や長野などを担当したことがあるが、短い期間に強行スケジュールで取材をしなければならない。ちょうどこの季節だったと思うが、長野県のある所で一泊し、北陸の方へローカル線で行く予定を立てていた。ところが、朝になるとこの地域一帯が“猛吹雪”となり、列車が不通になってしまったのだ。
こうなると予定がメチャクチャに狂ってしまう。取材先を変更したり、列車時刻表と首っ引きで、遠回りして別の取材先に向かうなど苦労した。次の総選挙の時はたしか、東海地方や三重などに変えてもらったことを思い出す。あの頃は中選挙区(3~5人区)だったから良かったが、今は小選挙区なので記者はもっと大変だろう。
投票日が近づくとものすごく忙しくなる。開票速報の準備だとか票読みなどで休む間もない。事前にクタクタに疲れてしまうので、当日は投票に行かないことがよくあった。期日前投票制度も十分ではなかったと思う。われわれマスコミは口では投票に行こうと呼びかけながら、自分は行かないのだから困ったものだ(笑)。
こういう時は、ある“言い訳”をして自分を納得させる。マスコミは「公正中立」が大原則だから、投票に行ってある候補者に入れることはマスコミ人の倫理に反するというものだ。票を入れたい政党や候補者はあるが、あえて投票しないことで「公正中立」を守るというものだ。屁理屈だろうが、そう考えると堂々と棄権することができる。
おかしなもので、投票しないとかえって客観的に、第三者の立場で選挙報道に臨むことができるのだ。これがある政党や候補者に投票していると、どうしても“主観”が混じってくる。屁理屈(?)はこのくらいにして、いま思い出したが開票速報も大変である。特に「当落の判定」は最も重要な仕事だ。
昔は投票所の「出口調査」をあまりやっていなかったので、あくまでもデータ分析が主流だ。当日の有権者の投票行動はほとんど分からない。このため、当落判定のミスがよく起きた。そこでもう時効だから、私の大きなミスを紹介しよう。
1976年当時、新潟県に稲葉修(おさむ)という法務大臣がいたが、年末の総選挙で非常な苦戦を強いられた。現職の法務大臣だけにその当落が注目されたが、開票率が96%ぐらいを超えても僅差で次点(第5位)だったので、私は落選確実の判定を出してテレビの開票速報でそう伝えた。
つまり、競り合っていた社会党の某候補(第4位)を当選確実にしたのだが、稲葉氏の票田である地元の村上市の開票はかなり遅れていた。その直前、私は新潟総合テレビ(NST)に“稲葉落選確実”を出して良いかどうか聞いたのだが、NSTの担当者は「まだ早い」と慎重な姿勢を示したのである。しかし、他局が稲葉落選確実を報じたこともあって、功を焦る私はそういう判定を下したのだ。
ところが、残票は村上市だけであり、最終的集計でアッという間に稲葉氏は社会党の某候補を抜いた。私は「稲葉、落ちろ!」と心の中で念じたのだが、結果は、稲葉氏が93票の僅差で滑り込み当選を果たしたのである。私はガックリと落ち込んだ。

以上が開票速報における私の失敗談だが、今でも忘れられない。その後、開票速報は「出口調査」の普及によって精度を高め、今では判定ミスはほとんど無いだろう。しかし、あの頃はよく起きたものだ。こんな話になったのは、よもやと思われていた解散・総選挙が現実のものとなったので、私はあえてマスコミの立場に戻り語っているのだ。
選挙は大変だ。国家的行事だから報道も大仕事だが、金もずいぶんかかる。あの当時でも、取材や世論調査、開票速報などで2億円はかかった。今ならもっとかかるだろう。年末に、急に大きな“出費”がいるのだ。誰がこんな総選挙をやるのだ!? 恨み節がマスコミから聞こえてくるようだ。


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