<2014年10月に書いた以下の記事を復刻します>
<先日、ある人から「北斎展」を東京・上野でやっていると教えられた。葛飾北斎の展覧会である。私は絵画や美術には素人だから、ネットで調べたら「ボストン美術館 浮世絵名品展」とあった。ボストン美術館?? さらに調べたら、北斎の名品140点ほどを展示しているという。つまり、葛飾北斎の傑作はほとんど日本にないということか。そんな馬鹿な!そこでもっと調べた . . . 本文を読む
過去の作品をまとめる必要が出てきたので、この場を借ります。ご了承ください。
http://blog.goo.ne.jp/yajimatakehiro/e/028f248b3f1ee86c9aed42aababd6d84http://blog.goo.ne.jp/yajimatakehiro/e/7db32a06e1cd806143ffd739c2750378http://blog.goo.n . . . 本文を読む
ちょうどそのころ、同僚の坂井則夫が婚約したと聞いて、啓太は多少うらやましく思った。相手は、日ごろ付き合っているSHIRAYURI(白百合)女子大卒のお嬢さんだ。
「則ちゃんは順調にいったね。おめでとう、うらやましいよ」
「いや~、僕は啓ちゃんより年上だからね。そろそろ年貢の納め時だよ、はっはっはっは」
「年貢の納め時か、よく言うね。いつごろ結婚式を挙げるの?」
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2月に入って、啓太はようやく京子と会えることになった。お互いに忙しくてデートができなかったが、彼はこの時、ある決意を胸に秘めていた。それは彼女が青年海外協力隊員になろうとも、終生 変わらぬ“契り”を交わそうというものだ。まだ早いかもしれないが、こうと思ったらじっとしておれないのが啓太の性分である。彼はこの日、自分の本心を伝えようと思った。デートの場所も新宿・歌舞伎町にして、 . . . 本文を読む
(23) 3億円強奪事件の発生
東大など大学紛争が激化する中でも、記者クラブにいる時は忙中閑ありで、気持が安らぐことがある。ある日、草刈が笑いながら啓太に声をかけてきた。「山本君、いま暇なら総務部に行ってみないか。とても可愛い子がいるんだ。紹介しておこう」「えっ・・・いや、いいですよ」啓太があわてて断わったが、草刈は強引に彼を促した。「いいから、いいから。ちょっとだけだよ」そう言って、草刈は勝手 . . . 本文を読む
こういう話を聞いても、啓太はあまりピーンと来ない。会社や系列局のことより、身近な仕事の方がどうしても気になるからだ。しかし、テレビ報道の重要性がいっそう増してきたことだけは、草刈の能弁によって分かった感じがしたのである。それから数日して、27日の火曜日が来た。その日は小雨が降るあいにくの天気だったが、啓太は弾むような気持ちでイタリアン・レストラン「T」へ向かった。午後1時前に店に着き待ち受けている . . . 本文を読む
(18)幼稚園児殺害事件
4月、春らんまんの季節になる。桜が散ったちょうどその頃、記者クラブに素晴らしい知らせが入ってきた。それは、この夏から『警視庁ニュース記者会』が2階のより広い部屋に移り、それに伴うようにNIPPON、FUJI、NETのテレビ3局が毎日「泊まり勤務」を行なうことになった。これまで毎日 泊まりをしていたのはTOKYO放送だけで、FUJIなどの3局は順番に交代で泊まっていた。し . . . 本文を読む
(15)1968年・昭和43年
キャップとのトラブルがあったあと、啓太と草刈の関係は多少の緊張感があったものの平穏に推移した。お互いが注意深く気をつけようと思ったのだろう。そして、大した事件・事故も起きずに年末を迎えた。啓太はたまたま大晦日が泊まり勤務だった。前にも述べたが、泊まりはNIPPONテレビ、NETテレビと交代で行なっていたが、その日はFUJIテレビの番だったのである。大晦日だろうと別 . . . 本文を読む
第3部・・・空想、夢想、妄想の懺悔・告白のような自伝的物語
(以下に主な登場人物)
山本啓太(主人公) 坂井則夫(啓太の同期) 草刈俊平(警視庁クラブ・キャップ) 蒲田二郎(先輩記者) 松本邦明(先輩記者) 森永徹郎(先輩記者) 石浜報道部長 花井久(ディレクター) 村井隆(デスク) 高山重男(デスク) 小出誠一(啓太の同期) 石黒達也(同期のアナ) 木内典子(雑誌社の記者) 白鳥京子(木内の . . . 本文を読む
季節は6月に入った。しばらくすると、景気が非常に良くて夏のボーナスは過去最高になるという噂が広まった。組合も協議会も会社側と交渉しているが、こんなに早くボーナスアップの話が出てきたことはない。世の中はどうだろうか・・・ 東京オリンピック後の反動で景気は一時 悪化したが、今や完全に回復している。それどころか、未曽有の“いざなぎ景気”というのが実現し好景気の話に沸き立っていた。 . . . 本文を読む
なかなか寝付かれない。今村や小出、それに木内典子ら組合員の顔が脳裏の浮かんでくる。彼らは啓太をじっと見据えて、「組合を脱退するのか?」と詰問しているみたいだ。それらの“幻覚”を振り払って啓太は眠りにつこうとする・・・しかし、眠れない。彼はベッドの上で上半身を起こし、しばらく放心状態になった。どうして俺は眠れないのだろうか。俺はそんなにも小心で気が弱いのか。啓太は自分が情けな . . . 本文を読む
そうして数日がたつうちに、啓太は25歳の誕生日を迎えた。誕生日といっても別にどうってことはない。ああ、そうかという感じだが、このテレビ局は変わった会社でいちいち「記念品」などをくれる。社長の陣内は、そうしたことに気を配るのだろう。家族主義的な会社経営が彼の方針だからだ。大きなガス爆発事故で例の討論集会は1週間延びたが、その日、ほぼ全員が出席して集会が開かれた。2階の会議室に20数人の社員が集まった . . . 本文を読む
時限ストの日が来た。みんな初めての体験だが、正午過ぎに会社の近くの○✖公園に集まる。啓太も小出や今村と連れ立って公園へ行った。すでに20人余りの組合員が集まっていたが、報道部では夜のニュースのADを務める木内典子(のりこ)が来ていた。「やあ、木内さんは早いね。張り切ってるな」今村が声をかけると彼女が答えた。「ええ、だって私は夜のニュースですもの。昼間はなんでもできます」木内がすっきりした笑顔を浮か . . . 本文を読む
第2部
<第1部に続いて空想、夢想、妄想の懺悔・告白のような自伝的物語。>
(6)報道部に戻る
5月の連休明けに山本啓太は報道部に戻った。顔なじみの同僚にまじって数人の新人がいたが、意外だったのは同期の大橋剛(つよし)がいたことである。彼はスポーツ部を志望していたはずなのに、どうして報道に移ってきたのだろうか。啓太はすぐに声をかけた。「大橋、君はどうして報道に来たの? 意外だな」「ハッハッハ . . . 本文を読む
「そうですか、蔵原さんはそういう人ですか・・・」啓太はそれ以上は聞かなかったが、蔵原になにか不吉な予感を覚えた。そして、西尾と啓太は喫茶室を出たあとドラマ制作部に戻り、明日の予定を確認してから別れた。翌朝、出社すると岡山ディレクターが嬉しそうな顔をして言う。「放送予定日がようやく決まったよ。4月14日と21日の2回に分けて放送する。これで落ち着いてやっていけるね」啓太も安堵した気分になって聞いた。 . . . 本文を読む