武弘・Takehiroの部屋

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鉄道は「開通」と言おう。「開業」は業者の言い方ではないか

2024年06月22日 03時05分17秒 | 社会・事件・事故

<2015年4月24日に書いた以下の記事を復刻します>

書こうかどうか迷っていたが、やはり書こう。先月(3月)のことだが、北陸新幹線が金沢まで「開業」したことをテレビ、新聞などが大々的に報道していた。それを聞いた時、開業ではなく「開通」が正しい表現ではないかと思ったものだ。
それで、新幹線が初めて開通した1964年(昭和39年)10月当時の新聞記事などを調べてみると、ほとんどが「開業」という表現になっていた。私が調べたかぎり、講談社の『20世紀全記録』だけが「開通」となっていたが(さすが講談社である)、あとは全て「開業」という表現だった。正直言って、私はがっかりしたのである。
別に開業でも開通でも、間違ってはいない。そんなことはどうでも良いではないかと言われるかもしれないが、私は表現の違いにこだわるのだ。端的に言って、この新幹線の場合「開業」は事業者、つまりJRなどの立場に沿った表現である。これに対して「開通」は、一般の国民や県民、住民らに沿った表現だと思う。
どちらが正しいというのではなく、どちらの立場を取るかということだ。JRなど事業者は「開業」と言って当然だが、国民の立場から言えば「開通」がごく自然であり普通の表現だろう。日本で初めて鉄道が通ったのは1872年(明治5年)に新橋・横浜間だったが、私が調べたかきり全ての記事が「開通」となっている。「開業」ではない!
このように、国民一般の立場から見れば、北陸新幹線のことも「開通」と表現するのが妥当ではないか。もちろん「開業」と表現しても間違いではないが、これはJRなど事業者に立場に沿った言い方で、どちらかと言うと“上から目線”の感じがしてくるのだ。今回の場合、一部の航空会社は新幹線「開通」と言っていた。それが妥当だと思う。
開業か開通かの違いを述べたが、これはもっと一般的なことにも当てはまる。例えばデパートなどは「開店」すると言うが、決して「開業」するとは言わない。開業でも間違いではないが、お客さんを相手にするから開店と言うのだ。
同様に、遊園地が「開園」するとか、展覧会を「開催」するとは言うが、決して「開業」するとは言わない。どれもお客の立場に沿ってそう言うのだが、主催者側の立場になれば「開業」でも間違いではない。しかし、開業と言えば、どうしても“上から目線”になってしまう。
くどいようだが、オリンピックなどの公式行事は必ず「開幕」とか「開会」と言って、絶対に「開業」とは言わない。プロ野球だって「開幕」とは言うが、決して「開業」とは言わない。それは一般の人たちや、お客さんらの立場を尊重しているからだろう。
そう考えると、新幹線だけが「開業」と言うのはおかしな感じがする。新幹線にも国民の税金が使われているではないか! 決して事業者だけのものではない。同じような例では高速道路がある。○○高速道路が「開通」したとは言うが、決して「開業」したとは言わない。同じように税金を使っているのに・・・
このように、新幹線が通った時の「開業」という表現は妥当ではない。適切ではないと思う。これは事業者側に立った一方的な表現だ。今日はくどい話になったが、願わくば、リニア新幹線の場合も「開業」ではなく「開通」と言おうではないか!(完)

付記・・・スエズ運河本四架橋もみな「開通」と言っている。 「開業」だと言って威張っているのは新幹線だけだ!


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供給者側 (keitan)
2015-04-22 11:07:27
言葉の遣い方にも供給者側/サプライサイドの改革が必要であるということでしょう。
 サプライサイド改革がなされていた頃のフジテレビはテレビの供給者側の言葉を多用したり内輪受けをギャグに高めて人気を得ていました。スタジオに笑い声が響くなどがそうです。
 字幕の「4月22日放送」を「4.22 O.A.」と表示したり――尤も、英語圏では普通の言葉ですが――今では当然のようになっている「特ダネ」;「特落ち」も「開業」と同じことです。
 但し、そのように供給者側の言葉を受益者側へ用いるのはフジテレビが初めてではなく、そもそもはTBSが始めたことであり、その裏番――それもそれです。――攻勢でブレークを図るための手としてフジはTBSの『上から目線』をパロディーとしていたのです。
 TBSテレビに『Nスタ』という夕方の報道番組がありますが、スタジオの名称を「Aスタ」;「Bスタ」……と視聴者への説明においても約めて呼ぶのはTBSだけです。同じ系列でもMBSはそうはせずに『A-Studio』と呼んでいます。
 TBSがそのようにしている主旨は、受益者側である視聴者を供給者側である局の世界へ引き込み、『放送の場』を共にする雰囲気を作りたいとのものなのでしょう。皆さんも一緒ですという訳です。
 然しそのような在り方は原発の問題などにおいて電力会社等とそれを支持する与党の側に立つ国民などに見られるような供給者側への盲信を生み出してもいます。莫大な電力を消費する鉄道の「開業」と言うのもそれと同じことでしょう。
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開通と開業 (矢嶋武弘)
2015-04-23 05:11:09
非常に示唆に富んだコメント、ありがとうございます。
テレビ業界のことも詳しいですね。参考になりました。
鉄道こそ「通る」という意味で、「開通」が最も妥当な言葉だと思います。それをわざわざ「開業」と言うのは、ご指摘のようにサプライサイドの意向が強く出ていると思います。
ですから私は反発しますが、その意向を謙虚に表現することが肝心だと思います。そういう意味で、「開通」こそ鉄道に最もふさわしい表現ではないでしょうか。
「開業」はあらゆる職種に通じる言葉です。テレビも「放送業」です。しかし、開業とは言わず、やんわりと「開局」と言って一般化、普遍化します。その方が受けが良いでしょう。
そういう意味で、「開通」に最もふさわしい鉄道が、わざわざ「開業」という表現を使うことが残念でなりません。
供給者側の意向、論理が出すぎていますね。
テレビ業界の話は、とても参考になりました。言いたいことは多々ありますが、ひとまずこれで失礼いたします。

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Unknown (Unknown)
2015-09-01 16:12:20
開通は、線路が通じて列車が通れるようになる事。開業は、運賃をもらって旅客を運送できるようになる事。であるから、開業が適切でしょうな。
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開通と開業 (矢嶋武弘)
2015-09-02 05:28:18
高速道路なども“通行料”を取っていますが、必ず「開通」と言っていますよ。
JRだけが自己中心、上から目線の言い方をしているのです。改めるべきですね。
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