**アカシアの木蔭で**

流れていく時間と逆らわずに流れていく自分を、ゆっくりペースで書いて行こうと思います

冬の雨が降る

2010年04月15日 | 庭便り
朝から 冷たい冷たい雨が 
やむことを知らず 降り続いています。
朝のニュースでは
柿の新芽が 寒さで茶色く枯れてしまったと
農家の方が がっかりしていました。

(膨らみ始めたバラのつぼみたちは
どうなっているかしら?)


我が家のバラたちは 凍えながらも
冷たい雨をぐいぐい飲み干して
葉っぱやつぼみを さらに大きく育てていました。

その調子!!
がんばれ!!

大ちゃん

2010年04月15日 | 病棟
大ちゃんは 96歳のおじいちゃん。
誤嚥性肺炎で入院中です。

でも、元気、元気!!

性格が明るく ひょうきんなので
大ちゃんの病室からは いつも笑い声が聞こえています。


「大ちゃんは 昔 何の仕事しとったの?」

「はあはあ、風が強いですなあ」

「そうじゃなくて、えっと、仕事 です」

「ああ、孫は もう大きゅうなって 元気にしとります」

「違う違う!! お仕事  だってば!!」

紀ちゃんが  耳元で 叫ぶようにして尋ねました。

「おおおぉ、お仕事聞いておったのかい。

 わしゃ もしかして 耳が遠いのか、のう?


…… 大ちゃん、今頃気付くなんて 遅すぎ!!

確執

2010年04月15日 | 病棟
「カ・エ・シ・テ」

じいが真っ直ぐに私を見つめて言いました。

「カ・エ・シ・テ」


「・・・なにを返すの?
    なにを探せばいいの?」


「…家二…帰シテ…」 

小さな声で 酸素マスクの下から。

一瞬返事に詰まって 手をさすりながら 答えました。

「今 家に帰ったら、苦しいよ。
 私たち 助けてあげられないよ。」

「…イイヨ。家デ 死二タイ。
  カエシテ。オネガイ…」

「…他に してあげられること、ある?」

「…フロ…」


お風呂に入ったら そのまま逝ってしまうかもしれない。
でも、もう命の終わりは見えています。
最後かも知れない じいの願いを 叶えたい。



紀ちゃんと一緒に 洗濯物を取りにに来た長女さんに
お願いしました。

「家に帰れませんか?
 移動は 今が最後のチャンスだと思います。
 せめて お風呂に入れたいんです。
 命が縮むかもしれないけど
 本人が 希望しているんです」


「母と相談しなくちゃ 決められません」

無表情に言われました。



返事がこないまま、二日後に じいは天国に旅立ちました。





家庭内に 問題を多く抱えた患者さんでした。
入院時に握り締めていたお財布には

たった五千円しか入っていませんでした。

それでも 「妻には渡さない!!」と 強い目で言い切りました。

妻は 「どうせ死ぬんだから必要ない」 と

訪問入浴も 介護サービスも 拒絶し続けていたそうです。



どちらに非があったのか 知る由もないけれど

看取る者として じいの最期の希望を叶えてあげたかった。