２０１６年２月１２日（金）
今日は、マンション生活のエッセイを・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「水漏れ、再び」
昼頃、外出する前にベランダの洗濯物を取り込もうとベランダに出ると、ベランダの端の
辺りの床が濡れている。はて？と上を見上げると、ベランダの天井にある継ぎ目から、水がぽたり、
ぽたりと落ちていた。まただ。一年ほど前、入居してまだ半年だった秋ごろにも同じことがあり、
その時、マンションの防災センターに連絡して調べてもらった。結果、上の階のベランダの防水シートが、
東日本大震災の折りにずれたとかで、一応の修理をしてくれた。一応というのは、根本的な修理は費用がかかりすぎ、
次回の大規模修理の時に一緒にするということになったと、管理会社から連絡があったのだ。
一年で、応急手当がダメになったのだろうか……。管理会社の係員を呼びだし、現状を確認してもらった。
それから先は、管理会社が対応してくれるだろうが、私は、上の部屋の方は、突然、管理会社から電話が来たら、
びっくりするのではないかと考えた。
去年の入居の際、友人に、「マンションでは、ご近所付き合いは無いよ」と言われていた。確かに、両隣の方たちとは、
半年に一回、顔を合わせるかどうかで、その時に、「こんにちは」と、言い合う程度だ。
ただ、上の階の七十代くらいの女性とは、引っ越しのご挨拶の折りに、お互い独り暮らしということで、
気安い思いを持ったうえ、前回の水漏れの際に、
「ベランダは、共有部分だから、お宅のせいじゃないって、分かっています」
「そう言ってもらって、ほっとしますわ。管理会社の責任ですよね」
と、意見も合った。その後、彼女とは、エレベーターでお会いすると、
「良いお天気ですね」「寒いですね」と、挨拶できる、数少ないご近所さんになっていた。お顔の分かるお相手となると、
たまに聞こえる軽い足音とか、何かを落とした音も、「おやまあ」という程で、私には、気にならなかった。
そこで、私は、ちょっと上着を羽織り、エレベーターに乗って、彼女の家に、水漏れを教えに行った。
ところが、インターフォンを鳴らし、名乗ると、思いもかけず、
「今、管理会社から、連絡がありました！去年、管理会社から説明がありませんでしたか！」
と、興奮した答えが返って来た。玄関先に出ていらしても、
「去年、管理会社と建築会社の責任って、お話があったでしょう！」
と、身構えている様子だ。私が、責めに来たと思っていらっしゃる。私は、
「はい、ありましたね。ベランダは共有部分だから、管理会社の管轄で、お宅が、どうこうしたからでは、ありませんよね」
と、ゆっくりと話した。彼女は、
「去年、ベランダの外側の罅のところに、テープを貼ってくれたんですよ。これで、当分大丈夫でしょうって。
もう、水がうちから落ちてくる場所、見せて下さい！」
と、言うので、
「はい、良かったら、参考にご覧になりますか？どうぞ……。」
と、答えたあたりで、私が文句をつけに来たのではなさそうと分かってくれ、彼女の声のトーンが変った。
「あれから、ベランダで水遣りするのも、気を付けているのに。うちの鉢物、もうからからですよ。今日は、曇りだから、
安心して、ちょっとたっぷり水をやっただけなのに」
と、愚痴を零した。その水が罅の個所に滲みたのが原因かもしれないと、ちらっと思ったが、日々、気を使って暮らすのも、
しんどいものだろう。私は、
「大変ですね。先週、天気が悪かったし、あの雨水が、滲み出てきたんじゃないんですか？」
と、頷いた。すると、彼女は、急に、
「じゃ、なんで、いらしたんですか？」
と、改めて聞いてきた。
「だから、いきなり管理会社から連絡が行ったら、びっくりされるかなと思って。でも、もう電話があったんですね。
こういう時、仕事が早いですね。まあ、管理会社の応急手当が、一年で劣化したってことね。とにかく、管理会社に任せましょう」
と、言うと、彼女は、「そう、そう」と、少し笑顔になった。私は、
「水が落ちてくるところは、ベランダの端で、洗濯物にかかる場所じゃないから、
気になさらないでね」
と、付け加えた。
現場を見る気は、もう無くなったようで、別れ際、彼女は、何度も頭を下げてくれた。
「そんな、お気になさらないで」と、言いながら、その姿に、私は、罅が我が家のベランダで、下の部屋の方が来られたら、
私も、理屈とは別に、被害を受けた方に、あのように、頭を下げて謝るだろうと、思わされた。
マンションライフ、「水」は、怖いと改めて噛みしめながら、私は、廊下を足早にエレベーターに向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水、本当に気を付けて暮らしています。
でも、ときどき、どこかの水の栓が外れて、どば～っと、水が溢れ出ていたら、どうしようと、
思ってしまいます。
冬、温かくて、住むのに、気に入ってはいるんですが・・。
今日は、マンション生活のエッセイを・・・
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「水漏れ、再び」
昼頃、外出する前にベランダの洗濯物を取り込もうとベランダに出ると、ベランダの端の
辺りの床が濡れている。はて？と上を見上げると、ベランダの天井にある継ぎ目から、水がぽたり、
ぽたりと落ちていた。まただ。一年ほど前、入居してまだ半年だった秋ごろにも同じことがあり、
その時、マンションの防災センターに連絡して調べてもらった。結果、上の階のベランダの防水シートが、
東日本大震災の折りにずれたとかで、一応の修理をしてくれた。一応というのは、根本的な修理は費用がかかりすぎ、
次回の大規模修理の時に一緒にするということになったと、管理会社から連絡があったのだ。
一年で、応急手当がダメになったのだろうか……。管理会社の係員を呼びだし、現状を確認してもらった。
それから先は、管理会社が対応してくれるだろうが、私は、上の部屋の方は、突然、管理会社から電話が来たら、
びっくりするのではないかと考えた。
去年の入居の際、友人に、「マンションでは、ご近所付き合いは無いよ」と言われていた。確かに、両隣の方たちとは、
半年に一回、顔を合わせるかどうかで、その時に、「こんにちは」と、言い合う程度だ。
ただ、上の階の七十代くらいの女性とは、引っ越しのご挨拶の折りに、お互い独り暮らしということで、
気安い思いを持ったうえ、前回の水漏れの際に、
「ベランダは、共有部分だから、お宅のせいじゃないって、分かっています」
「そう言ってもらって、ほっとしますわ。管理会社の責任ですよね」
と、意見も合った。その後、彼女とは、エレベーターでお会いすると、
「良いお天気ですね」「寒いですね」と、挨拶できる、数少ないご近所さんになっていた。お顔の分かるお相手となると、
たまに聞こえる軽い足音とか、何かを落とした音も、「おやまあ」という程で、私には、気にならなかった。
そこで、私は、ちょっと上着を羽織り、エレベーターに乗って、彼女の家に、水漏れを教えに行った。
ところが、インターフォンを鳴らし、名乗ると、思いもかけず、
「今、管理会社から、連絡がありました！去年、管理会社から説明がありませんでしたか！」
と、興奮した答えが返って来た。玄関先に出ていらしても、
「去年、管理会社と建築会社の責任って、お話があったでしょう！」
と、身構えている様子だ。私が、責めに来たと思っていらっしゃる。私は、
「はい、ありましたね。ベランダは共有部分だから、管理会社の管轄で、お宅が、どうこうしたからでは、ありませんよね」
と、ゆっくりと話した。彼女は、
「去年、ベランダの外側の罅のところに、テープを貼ってくれたんですよ。これで、当分大丈夫でしょうって。
もう、水がうちから落ちてくる場所、見せて下さい！」
と、言うので、
「はい、良かったら、参考にご覧になりますか？どうぞ……。」
と、答えたあたりで、私が文句をつけに来たのではなさそうと分かってくれ、彼女の声のトーンが変った。
「あれから、ベランダで水遣りするのも、気を付けているのに。うちの鉢物、もうからからですよ。今日は、曇りだから、
安心して、ちょっとたっぷり水をやっただけなのに」
と、愚痴を零した。その水が罅の個所に滲みたのが原因かもしれないと、ちらっと思ったが、日々、気を使って暮らすのも、
しんどいものだろう。私は、
「大変ですね。先週、天気が悪かったし、あの雨水が、滲み出てきたんじゃないんですか？」
と、頷いた。すると、彼女は、急に、
「じゃ、なんで、いらしたんですか？」
と、改めて聞いてきた。
「だから、いきなり管理会社から連絡が行ったら、びっくりされるかなと思って。でも、もう電話があったんですね。
こういう時、仕事が早いですね。まあ、管理会社の応急手当が、一年で劣化したってことね。とにかく、管理会社に任せましょう」
と、言うと、彼女は、「そう、そう」と、少し笑顔になった。私は、
「水が落ちてくるところは、ベランダの端で、洗濯物にかかる場所じゃないから、
気になさらないでね」
と、付け加えた。
現場を見る気は、もう無くなったようで、別れ際、彼女は、何度も頭を下げてくれた。
「そんな、お気になさらないで」と、言いながら、その姿に、私は、罅が我が家のベランダで、下の部屋の方が来られたら、
私も、理屈とは別に、被害を受けた方に、あのように、頭を下げて謝るだろうと、思わされた。
マンションライフ、「水」は、怖いと改めて噛みしめながら、私は、廊下を足早にエレベーターに向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水、本当に気を付けて暮らしています。
でも、ときどき、どこかの水の栓が外れて、どば～っと、水が溢れ出ていたら、どうしようと、
思ってしまいます。
冬、温かくて、住むのに、気に入ってはいるんですが・・。
