野生生物を調査研究する会活動記録

特定非営利活動法人 野生生物を調査研究する会の会員による活動記録です。

みずばしょう公園

2018-12-24 | 資料を読む
ミズバショウといえば尾瀬が有名ですが、兵庫県でも自生しています。
養父市の加保坂湿地です。
4月の中ごろから、約2000株のミズバショウが白い花を咲かせます。(ただし、白い花びらは、中央にある棒状の花の集まりをまもる仏炎苞と呼ばれるものです。小さな花は棒の表面についています。)
ミズバショウはサトイモ科の植物で、本州の中部地方以北、北海道、サハリン、カムチャッカ、東シベリヤの温帯から寒帯にかけて分布し、山中の湿地や湿原に群生する多年草です。
現地にはボランティアガイドもおられ、じっくりと観察できます。

加保坂湿地のミズバショウ発見・確認の経緯と日本のミズバショウ分布域
日本でのミズバショウの南西限のミズバショウを見学に行った時のパンフレットより紹介します。
 ミズバショウは寒帯から亜寒帯及び日本の高山から亜高山の湿地に自生する湿生植物です。1970年以前の日本のミズバショウ分布を見ると中部地方以北です。ところが1970
年春、大屋町(現養父市大屋町)加保の住民のひとりが加保坂峠周辺を歩いた時、大きな白い花に出会い"写真にしよう”と地元の写真家を案内しました。
 写真家は現地の植物体と写真を兵庫県生物学会員に届けました。当時、周辺一帯は農地への高原開発の予定地となっていましたが、生物学会を始め近畿の植物研究者の
"西日本初のミズバショウ湿地を保護すべき"との声の高まりの中、翌々年に湿原植物の専門家である故矢野教授(神戸女学院大学)に再調査を依頼しました。その結果、現地の貴重性が再確認され、天然記念物指定への流れとなりました。
兵庫県北部の山地で、標高僅か500m余の暖温帯域に"自生とは!?”と疑問視されましたが、三好教授(岡山理科大学)によって湿地内ピート(植物遺体)層を調査した結果、深さ95cmでミズバショウの花粉が確認され、
"炭素14年代測定法による分析の結果、約8,000年前のもの"と発表されました。従って、当地のミズバショウは氷河期末期から今日まで生き続けていることになります。
 発見時、湿地にはミズバショウ以外に亜寒帯や亜高山の湿地に見られる植物が次々と確認されています。
西日本の暖温帯域に氷河期末期の植物が今日まで生き残ったわけ。
(1) 当湿地(標高620m)の湧水温を数年に亘り測定した結果は次の通りです。
 4~5月 11.4~11.6℃
 7~8月 13.1~13.6℃
 11~12月 10.8~10.9℃
 年平均は12.1℃です。
比較データとして、鵜縄湿地(標高880m)の湧水温測定結果は次の通りです。
 4~5月 8.7~9.1℃
 7~8月 9.4~9.8℃
 11~12月 8.4~8.0℃
 年平均は9,0℃です。
以上のデータでも分かるように生育環境は亜寒帯や亜高山の湿地に近い条件を備えています。
(2) 地元の古老の話では「加保坂峠付近には"恐ろしい沼地があるので近寄るな!」
と聞いていました。この言い伝えがあったので、牛の餌草刈の人々も近寄らなかったといいます。
 1970年、現地調査に協力した県立八鹿高等学校大屋分校生の一人は、この湿地の泥沼に沈み、引き上げられましたが、長靴は今も湿地内に残っています。
(3)当地は蛇紋岩地でアルカリ性が強く貧栄養なので、新たな植物の進入や繁茂がありませんでした。従って、敗戦直後の農地不足の時代でも地元民は開墾をしませんでした。
(4)この他、但馬の山岳山地の湧水湿地を調べたところ、北方系の寒地性湿生植物のリュウキンカやチョウジギク、オオバミゾホウズキなどが生き残っています。

経過など、インターネットからはわかないところまで詳しく説明してありました。
約2万年前の寒冷な時期(氷河期)から生き残ってきた植物です。大事にしたいものです

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