映画に 乾杯! / 知の彷徨者(さまよいびと)

名作映画に描かれている人物、物語、事件、時代背景などについて思いをめぐらせ、社会史的な視点で考察します。

奇妙な銀行強盗

2010-12-19 15:24:58 | 現代アメリカ社会
  1. 第94回 インサイドマン(2006年)
    原題 Inside Man(内部の男/内部に潜んでいる人物)
             (もっと穿った見方をすると「内情=秘密を知る人物」ということになる)

    見どころ: これは、警察の捜査によっては襲撃の目的がついに明らかにされず、容疑者の見当もつかなかった銀行強盗事件の物語である。襲撃者たちは銃で武装して荒々しく銀行に侵入し、内部にいた銀行員と客を人質にして立てこもる。強盗団と警察との交渉やら駆け引きののち、タイムリミットが来てSWATが突入しようとしたときに、催涙弾や発光弾が炸裂したところに、人質たちが我勝ちに逃げ惑ったことで、結局、容疑者は跡形もなく消えてしまう。つまり、人質たちのなかに完全に紛れ込んでしまって、容疑者の特定は不可能になった。
     奇妙なことに、銀行の金庫からは1ドルの現金すら奪われなかった。では、強盗団は何を目的として銀行を襲撃したのか。
     ところで、被害にあった信託銀行の会長には、ナチスのホロコウスト犯罪に協力してユダヤ人たちから没収した資産を横領したという「闇の過去」があった。あろうことか、その証拠となる書類(当時のナチス党員の身分証)と宝石をその銀行支店の貸金庫に隠匿しておいた。
     会長はその証拠物件を強盗団から守るために、やり手の弁護士を雇い、政治的影響力を行使して、警察や市長を動かそうとする。
     強盗団の目的は、その「闇の過去」の証拠を奪うことだった。
     では、強盗団は頭取から雇われたのか。それとも、頭取の弱みを握って脅すために、襲撃したのか。なぜ、深く秘匿された秘密を知りえたのか。
     そもそも、会長は、なぜそれほど危険な書類をいつまでも(焼却せずに)保存したのか。
     結局、これらの疑問への答えは物語のなかでは示されることはない。暗示すらないように見える。
     そうなると、私たち視聴者自身が、(好き勝手に)これらの疑問を考えていくしかない。
     それにしても、意外で巧みなプロットの作品である。
    記事を移設しました⇒映画に乾杯!「インサイドマン」


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