ワニなつノート

手をかすように知恵をかすこと 2014(メモ)

手をかすように知恵をかすこと 2014(メモ)



目が見えないなら学校に来るな
とは、だれも言わない。
見えないという「障害」だけで、15歳の子の希望を奪おうとする人はいない。
障害だけを見るのでなく、その子の学びたいという意欲を受けとめ、
どんな配慮ができるかを考えるのが、私たち大人と学校の仕事。

耳が聞こえないなら、学校に来るな
とは、だれも言わない。
聞こえないという「障害」は、15歳のその子の一部にすぎない。
障害だけを見るのでなく、その子の将来への希望を受けとめ、
新しい学び方への工夫を考えるのが、私たち大人と教育の仕事。

1991年。
歩けないなら、学校に来るな
と、15歳の子を不合格にした校長がいた。
裁判所は、校長の判断が誤っていたことを示した。
障害のために卒業できる見込みがないから入学もさせないという校長判断に対し、裁判所は障害に応じて履修方法を柔軟に対応するのが教育だといった。


ところが21世紀になってもこの国には、
勉強ができないなら、学校に来るな
と言われる15歳の子どもたちがいる。

99%の子が高校に進学する中、
1%の子どもたちだけは、
勉強ができないなら、学校に来るな
と門を閉ざされる。

20年以上子どもの数が減り続ける少子化の時代、
高校の数もまた減らし続け、
その上、たとえ席が空いていても学校に来るなという。

学校の先生たちも教育委員会も、社会も、
誰もそれをおかしいと言わない。
点数が取れない1%の子どもに、
勉強ができないなら学校に来るな、
と、この社会は言い続ける。

500点満点で77点?
それしか勉強できないなら、学校に来るな
と言われる15歳の子どもがいる。
どんなに席が空いていても、
勉強ができない子は学校に来るなという校長が大勢いる。

でも、勉強ができないからこそ、学校に行きたい子もいる。
高校に行きたいから、勉強をがんばるという子もいる。
その子たちに知的障害があるというだけで、
席が空いているのに、学校に来るなという校長は、
自らが教育者であることを捨てている。

学校は点数を取らせるだけの子どもの居場所だろうか。
点数を取れない子を切り捨てて、教育は成り立つか。


目が見えない子は、障害を治すために学校に通うのではない。
見えない姿で生きていく子どもの将来の希望としての教育がある。

耳が聞こえない子は、障害を治すために学校に通うのではない。
聞こえない姿で生きていく子どもの生きる意欲を支えるという教育がある。

歩けない子は、障害を治すために学校に通うのではない。
歩けない姿のままで、人と出会い、世界を学ぶための教育がある。

知的障害の子は、障害を治すために学校に通うのではない。
ありのままの姿で、仲間と生きていくことを学ぶ教育もある。

見えない障害、聞こえない障害、歩けない障害があっても、
ありのままの姿で豊かな未来に向かって歩む道がある。
たとえ知的障害があっても、子どもの学びたいという希望、仲間と共に生きたいという意欲に障害も遅れもない。

それぞれの障害によって、できないことがあるのは事実だ。
それだけのこと。

障害があることは人として恥ずかしいことではない。
障害があることは人として劣っているわけではない。
ただそれだけのこと。

障害があることで、子どもが子どもでなくなるわけじゃない。
障害や病気を持ちながら生きていく子どもが、ここにいるだけ。

親の愛情がいらない子どもはいない。
友だちがいらない子どもはいない。
仲間とともに一日一日おとなになっていく、
子どもの時間がいらない子どもはいない。
99%の同級生が高校に行くとき、
いっしょにそこで学び生きたいというこの子たちの思いの強さを、
障害を理由に切り捨ててはいけない。


学校は障害を排除するためにあるのではない。
学校は子どものいまと未来のためにある。

それぞれの障害によって、できないことがあるのは事実だ。
それだけのこと。
それなら、この子にはどんな障害があるのかを知り、
どのような学びが可能かを考えるのが教育の仕事。

その子その子の状況に応じて支援することが大人の仕事。


勉強ができないなら、学校に来るな。
漢字が読めないなら、学校に来るな。
計算ができないなら、学校に来るな。
小学校ではそんなことをいう人は誰もいなかった。
この子たちはみんなと一緒にたくさんのことを学んできた。
小学校の教育の豊かな成果がここにある。

勉強ができないなら、学校に来るな。
英語ができないなら、学校に来るな。
中学校ではそんなことをいう人は誰もいなかった。
この子たちはみんなと一緒にたくさんのことを学んできた。
中学校の教育の確かな学びがここにある。

それが0点でも高校に行きたいという、子どもたちの生きる声だ。

コメント一覧

川瀬浩子
すごく的を得ていて、そして実体験のもと、共感し感動して涙が出ました!ρ(・・、)
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