【業務連絡】
「定員内不合格の説明」についての報告
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①【「学ぶ意欲がない」という丁寧な説明】
秋季入学者選抜において、生浜高等学校が「障害のある受検生」を「定員内不合格」を出した理由について、8月27日に県教育委員会から説明がありました。
その「説明」は合格発表の前日(8月26日夜)、生浜高等学校校長と千葉県教育委員会で協議した内容に基づく「説明」ということでした。「定員内不合格」の説明の際、「総合的に判断した」では説明責任を果たしたことにならないため、「入学許可」の権限を持つ校長と、「設置者」の権限を持つ県教育委員会が合意した内容ということでした。(※ 合否の発表前に、校長が県教育委員会と協議して「定員内不合格」を決定すること自体に問題があるが、一旦脇に置きます)
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今回の説明は、会発足35年目にして初めての、「丁寧な説明」でしたが、これは文部省の令和6年6月25日通知『高等学校入学者選抜等における配慮等について』に、「定員内でありながら不合格を出す場合には、各教育委員会等及び各校長の責任において、当該受検生に対し、その理由が丁寧に説明されることが適切です 」によるものと思われます。
結論から言えば、「障害」が理由でなく、「学ぶ意欲がない」という説明、でした。
それが事実なら、「絶対にあってはならない」と文科大臣が繰り返し述べている、「障害を理由」にした不合格ではないし、また「学ぶ意欲を有する生徒に対して、学びの場が確保されること」にも反しません。
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②【学ぶ意欲がない???????】
県教委の説明によれば、今回は『調査書(135点)、面接(150点)、作文(80点)合計365点』で評価された。学力試験はないので、「学力試験の点数」による不合格ではない。「調査書」も「審議対象」にされていない。つまり「知的障害」による「学力試験」の点数や内申書の不利益はなかった。つまり「障害が理由ではない」。
一方、「作文」、「面接」においては、本人が希望する「特別配慮申請」(意思疎通支援のための介助者配置、カード選択による回答方法等)を認めている。したがって「障害による不利益はない」「障害が理由ではない」という理屈にはなります。
しかし、そうであれば、「定員内不合格」にされる理由はどこにもないことになります。
でも結果は、障害のある受検生の一人は合格でしたが、1人は定員内不合格でした。
二人とも今春の受検では複数回の「定員内不合格」にされています。それでもあきらめずに8月の秋季募集を目標にがんばってきたのです。その15歳の子を「学ぶ意欲がない」と評価したのはなぜか。入学試験の何によって判断されたのか。
県教委によれば、「面接」試験の結果、3名の評価者のうち2名以上が「審議対象」という評価をした。作文試験も同様に、2名の評価者が「審議対象」という評価を行った。そのため、判定会議で審議について検討した結果「学ぶ意欲がない」という結論に達した。したがって「定員内不合格」となったという説明でした。
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③【丁寧な差別の説明・作文編】
「作文」のどこに「審議対象」となる点があったか。
『ルールを守るということについてどう考えるか。また、高校生活でどのようにしていきたいか。400~600字以内』という課題に対し、500字以上の作文を作成したので、「白紙」ではありません。「未提出」でもなく、「試験放棄」でもありません。では、作文の「内容」が著しく逸脱していたのでしょうか。
しかし、今回の合理的配慮による作文の作成過程は、予め作成されたキャプション付きの写真・絵を本人が選択し、意思疎通支援のための介助者がキャプションを原稿用紙に「代筆」する。それを繰り返すことで作成される作文でした。つまり、「文章」そのものは、予め作成されたものであるから、著しく課題と無関係な文章は書きようがありません。
課題に対しての本人の選択が、妥当かどうかという評価の余地は残りますが、その点を考慮しても、そもそも「作文」という課題が、自らの言葉で文章を作成することが困難であるという「不利」な課題であり、やむを得ず「キャプション」の選択・代筆という「配慮」を認めて実施していることを考えれば、得点が低くなることはあっても、「本人の学ぶ意欲がない」とまで判定することは理不尽であり、「障害による不利益」そのものです。
また、先の文科省通知=「学ぶ意欲を有する生徒に対して、学びの場が確保されることは重要であり、そうした観点から、各教育委員会等においては、・・・定員内不合格を出さないよう取り扱っている例を含め、他の教育委員会における入学者選抜の実施方法等を参照するなどしていただくとともに、合理的な説明となっているかについて改めて御検討いただくようお願いします。」の主旨に反することは明白です。
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④【丁寧な差別の説明・面接編】
「面接」の評価についても同様です。
面接においても、合理的配慮として「意思疎通支援」のための介助者が認められています。質問に対し、本人が「〇(はい)×(いいえ)△(どちらともいえない・どちらでもない)」の3つのカードの選択によって回答する、という配慮も認められています。
ただ、実際の面接ではカード選択では回答ができない質問(その理由を述べなさいという趣旨)が繰り返されたため、意思疎通支援者が面接官の了解を得ながら、わかりやすく質問を繰り返し、カードによる回答を行いました。したがって、すべての質問に、本人なりの意思を示すことで回答を行ったことになります。
しかし、面接の評価においても二人の評価者が「審議対象」という評価を行ったため、判定会議で検討した結果、「本人の学ぶ意欲がない」という結論になったと説明がありました。
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本人が、社会的障壁の除去を求めて認められた「合理的配慮」による回答を、「学ぶ意欲がない」と評価するのは「障害」についての無理解であり、試験で認められた合理的配慮という「要考慮事項」の不考慮によるものです。
したがってそれを根拠として出された「定員内不合格」という校長判断は、「裁量権の逸脱」であり無効です。拠って、8月27日の県教育委員会の説明の「学ぶ意欲がない」という評価の取り消し、および、「定員内不合格」という校長判断の見直しを求めます。