エピソード11

エピソード11


「ねえ、人間って依存しないと生きられないの？」

朝、台所の片づけをしているときに、Ａに聞かれた。

「そうだね～」と答えながら、《自立とは適切な依存である》という三好さんの言葉を思い出した。

「だって、人間は赤ちゃんのときから、依存しないと生きられない状態で生まれてくるじゃん。ほかの動物は、生まれてすぐに立ち上がったり、餌を取ったりできるし…。
赤ちゃんにいっぱい《依存》をあげるために、人間の赤ちゃんは超未熟なままで生まれてくるみたいだよ。だから、人間は一人じゃ生きられないようにできてるんじゃないかな」

洗い物をしながら、そんなことをしゃべった。

でも、しばらくして「依存」という言葉が気になってきた。
「依存症」とか「共依存」とか、気になる言葉が浮かんできて、「依存」のイメージも違うような気がしてきた。

タバコや酒、薬に依存というのも違うし…。
「彼氏がいないと生きていけなぁーーい」って叫ぶ依存も、なんだかな～と思うし。

依存と、縛られるってことも違うよな。

依存しながら、自分の意志で、自分の希望、自分の向かうが大事っていいたいけど、これじゃあまりに理屈っぽいよな～。


そもそも、彼女が、「依存しないと生きられないのかな？」と聞いているのは、なにを聞いていたんだろう？

「ふと浮かぶ疑問の生まれる場所」が見えないと、こうしていくら考えてもだめなんだろな。

ここまで書いて、カレンダーを見て、ふと気づく。
Aがホームにきてちょうど半年。

…15歳で家を出てきたんだよな。

家族への依存…は、なしにして、ここにきたんだよな…。


さて…と。