≪HalとNaoちゃんの待ち時間≫(3)
Naoちゃんが、廊下で仰向けに倒れている風景。
「実は、Naoさんは先月ほとんど席についてませんでした。
…廊下でゴロゴロ寝ていました。
ゴロゴロしていると言っても、廊下で何をする訳でもなく、
ただまっすぐ天井を見上げて寝そべってるんです。」
これを読んで、すぐに頭に浮かんだのは,
アトムが横たわっている姿でした。
それから、修理中のアラレちゃんの首がしゃべっている姿。
アトムがアトムであり、
アラレちゃんがアラレちゃんであるように、
NaoちゃんはNaoちゃんでした。
それと同時に感じたのは、
Naoちゃんの周りの人たちの「日常感覚」のなかに、
Naoちゃんを「障害児」にしないでいる「チカラ」でした。
その「チカラ」が働いていることが、
『水着とゴーグル』からはとてもよく伝わってきます。
ただ、そのチカラが何かを表現するのに悩みます。
たとえば、Naoちゃんが、「特支学級」でこの「行動」をした場合には、
「障害児の行動」として受け取られることでしょう。
その場合には、私の中でも、
アトムやアラレちゃんのイメージが浮かぶことはないような気がします。
そこにはNaoちゃんを「障害児」にしないチカラが働いていないからです。
このブログの読者に説明はいらないと思うのですが、
私は「障害」そのものを否定したり、否認する気持ちはありません。
むしろ「大切な障害」といえるものがあることも感じてきました。
(※この「大切な障害」という言葉も、
表現できなくてずっと抱えたままです…)
障害を隠したり、否認するつもりはありませんが、
一人の子どもに「障害」や「病気」があることと、
その子がまるごと「障害児」や「病児」であることは
まったく違います。
☆ ☆ ☆
「レッテルを貼ること」で、失われるものがあります。
しかも、ふつうの子どもの所属を失うことと、
レッテルが同じ意味であるとき、
その失うものは、さらに大きくなります。
「特支学級の子どもであること」で、
多くの子どもたちの視界から消えるものがあります。
同じクラスの仲間であることや同じ所属であること、
そして残念なことに「ふつうの子ども」であることが、消えます。
普通学級にいる障害児の場合には、
「障害」というレッテルの意味するところが分かっていても、
実際のところ、その詳しい中身は、子どもたちには分かりません。
子どもだけでなく、親も教師も専門家も分からないことですが…。
「この子は自閉症です。」「それで?」
「こだわりがあります云々…。」「それで?」
「この子はダウン症です。「それで?」
「染色体が云々…。」「それで?」
「この子は障害児です…。」「それで?」
「この子は言葉をしゃべれません…。「それで?」
その他いろいろ。
普通学級にいることで、「障害」というレッテルは分かっても、
そのこと以上に、同じクラス、同じ所属、同じ子ども、
その大元のところで対等である感覚の方が、
子どもにとっては実感しやすいものであり、
日常であり、確かなものなのです。
そこでは、「障害のあるふつうの子ども」の
「ふつうの子ども」が、ちゃんと見えています。
「見る」までもなく、日常的に視野に収まっています。
周囲の大人も子どもも、そうした「観察学習」をしています。
ある「障害」を持った子ども、今まで出会ったことのないタイプの子どもが
そこにいるだけで、学習し続けているのです。
その学習の積み重ねによる「膨大な理解の量」は、
個人が個別で学ぶものとは比べものになりません。
(つづく)
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