ワニなつノート

声の世界


声の世界


この子はどんな「声」に包まれて、生きているのだろう。
どんなふうに人やものの「声」を聞き、
どんなことを感じているのだろう。

私の「声」をどんなふうに理解し、
この「世界」を聞いてきたのだろう。

「声」を通じて、いったいどんな感情や思いを
受け取っているのだろう。


「言葉の発達が遅れています。」
「知的な障害があります。」
「コミュニケーションの障害があります。」

そんな説明はいくつも聞いた。
どの本にも、そんなことばかり書いてある。

でも、わたしが知りたいのは、
この子が「私の声」を、どんなふうに聞いているのか。
「発達の遅れがある」「言葉の遅れがある」と言われる子どもの、
「声を聞く」ことはどう成長しているのかということ。

専門家は、言葉の検査や、手作業、運動の課題を通して、
この子の「発達」を確かめようとするけれど、
この子が人の「声」を聞いて、感じて、
自分の生きることに必要な世界をやりとりする能力の
発達はどうやって測るのだろう。



言葉を話すこと、言葉でやりとりすることが、
大人になっても苦手なままだったとして、
この子は、その分、「声」を聞いて、感じて、伝えて、
人との関係のなかを生きていくのだと思うのです。

その能力を測る検査はないのですか。
その能力は何と言う能力なのですか。
それは、「個別」で発達させることができるのですか?

そうではないと、わたしは思うのです。
なぜなら、個別で「聞こえる声」は、いつも一人の声だから。


「言葉の理解が遅れている」という意味は、分かります。
「言葉をしゃべらない」「単語の意味」が理解できない、
というのも分かります。

でも、わたしが知りたいのは、言葉の意味は理解できなくても、
この子はいつも「声」を聞いています。
たとえ、言葉は理解できないとしても、
見て、聞いて、感じて、
この子は「世界」を理解し、生きています。
毎日の暮らしの中でこの子は、親の声、お兄ちゃんの声、
お姉ちゃんの声をいつも聞いています。
そして、できないことはいくつもありながら、
家族の一人として、ふつうの毎日を暮らしています。

そこでは、家族のコミュニケーションとして、
この子は「声」を聞き、自分の「声」と「言葉」で、
私たちに様々なことを伝えています。

私たちは、言葉を話さないこの子の、
「ことば」の意味よりは、「声」の違い、声の変化、
肌触りのようなものを感じるようになりました。

わたしたちがそうであるなら、
この子も、私たちの「ことば」ではなく、
私たちの「声」にコミュニケーションの世界を
持っていることを感じるのです。


この子は声や音楽を聞いている。
この子は、私の言葉ではなく、
声に反応しているのも分かります。

聞いている声を、どんなふうに読み取って解釈し理解しているのか。
この子のそういう能力が、どれくらいあるのか。
そういうことを「説明」してくれる言葉に出会ったことがありません。


この子が言葉の遅れや、知的な遅れという
「障害」を抱えているのだとしても、
言葉の発達が2歳だとか、知能は1歳半だとか、
そういうことは言われても、
この子が「親の声」を通して、
「自分がどんなふうに受けとめられているか」を
感じる能力が、どれくらいなのか、
そういう子どもの感性の能力とは、どう発達するのか。
それは「聴力」や「知能」や「言葉の発達」と、
そもそも関係があるのか。

子どもの「専門家」だというなら、
そういうことを説明してほしいのです。

言葉の発達が何歳レベルだとか、
そんなことは、検査してもらわなくても、
毎日「ことば」で生活している親は分かっています。
知りたいのはそんなことではないのです。

この子が「言葉」の遅れがあるのも本当でしょう。
それにまだ子どもなんだから、
難しい言葉の意味も知らないはずです。

でも、この子は、私が人と話すことの「意味」を、
確かに感じていることが、私には分かるのです。
これは、何ですか? 

親の機嫌を感じるのは、子どもにとって
当たり前のことかもしれません。
でも、障害の話ばかり聞いていると、
この子には、そういう感じる力も遅れているように聞こえるのです。

でも、それは違いますよね。
そもそも、そういうことを、調べる専門家がいるのでしょうか。

親の機嫌、親の子どもへの思い。
世間への気がねや遠慮。
障害のあることを恥ずかしいと感じたり、
将来のことを不安に思うこと。
小学校、中学校、その先。親が死んだら。兄弟のこと。

そうした親の揺れる胸のうちを、
子どもはどうやって、感じたり、理解したりしているのでしょう。
感じることは敏感でも、そこからの理解は、
本当に「正しいのかどうか」
それを、私は親としてどう判断したらいいのか。

子どもが「がっこういきません」といった時、
それは子どもの本心なのか、親の不安を、
間違って「子どもを学校に行かせたくない」と
子どもが受け取ってしまったんじゃないか。

この子の「障害」は、そうした「感性」や「理解」に
どんなふうに影響しているのか。

他の子どもの平均の発達から、何年、何カ月遅れているのか、
そんなことは調べてもらわなくても、
説明してもらわなくてもいいんです。

ひらがなも書けません。
1たす1も分かりません。
そんなことは、1年生の同級生だって分かることです。

私が知りたいのは、この子は、
この世界をどんな世界だと感じ、
どんなふうに生きていきたいと願っているのだろうか。
それを知るためには、親としてどうすればいいのか。
そのことを教えてほしいのです。

コメント一覧

yo
暑さのせいか、二人ともなんだか、よくわかんないこと言って~~~(-。-)y-゜゜゜

D-hahaさん、この原稿、「一部」じゃなくて、
前回のと「同じ」だよん(o|o)

手直ししたのは、語尾とか、そんなとこです。
たぶん、前回読んだとき、
何か他の原稿と、この原稿を、
関連させて読んだんでしょうね。
なんとなく、分かります。


それと、「文章の受け止め方」が違うのは、
私も勉強になります(-_-;)

D-hahaさんは、この「場面」を、
この物語の主人公である「母」の立場で、
読んだのだろうと思います。

でも、isizakiさんは、「物語」ではなく、
作者である「わたし」に対して、
「本気でそんなこと思ってるの?」と
聞いているんですよね。

《この子は、この世界をどんな世界だと感じ、
どんなふうに生きていきたいと
願っているのだろうか。》

私は、小学校でも、定時制高校でも、
ホームでも、児相でも、
どこでも子どもと向き合うときは、
そのことを知りたい、と本気で思ってきたかな。

少なくとも、自分とは違う「ひと」の願いを、
聞き落とさないように、
それが一番気をつけてきたことの一つかな(o|o)








Dーhaha
文章の受けとめ方って、随分違うのだと思いました。

この内容は、以前に削除された内容の一部です。本当はこの内容の前に、学校での担任(先生方)との関係についての件がありました。私にとっては、そこからの受けとめになっているので、私の受けとめた世界はisizakiさんが感じた世界より遥かに小さいな…と思いました。あの時にス~っと自分の中に入ってきた感情を忘れたくなくてyoさんに再掲載をリクエストしました。

言葉はときに難さを感じるけど、それでも言葉からたくさんの人がいろいろな感じ方ができるというのは大切なことで、重要な役割なんだと再確認しました。
isizaki
私的には、yoさんらしくない内容に感じました。

→ 《私が知りたいのは、
この子は、この世界をどんな世界だと感じ、
どんなふうに生きていきたいと願っているのだろうか。
それを知るためには、親としてどうすればいいのか。》
って、深刻にそう思っての内容?

普通に、どうなのかな??
っていう興味はあるけど
親として、そんなに深刻に
知りたいとは私は感じません。

だって、私自身もまだ、
この世界をどんなふうに感じ、
どう生きていきたいかを模索中です。

いろいろ考えれば、考えただけ
自分は変化していっているから、
考え始めた時の自分とは変わっているわけで。
人って、変化し続けるものですからね~(-.-)

子どもも、いろいろ変化していって、
その時その時刹那的に
しっかり生きていてくれればいいなと思います。

ちょっと、yoさんの原稿の意味と違うかしら・・・

けれど、1たす1は2、って
学校の算数での正解というだけで、
それって、きっと知的障害の子も実は
しっていると思います。
知的障害って答えがわからないということとは
違うと感じています。

世の中は、1たす1は2、とは
いかない事の方がいっぱいあって、
そのことを子どもには分かっていって欲しいと思います。




Dーhaha
要望に応えていただいて、ありがとうございましたm(_ _)m自
分では気づかない遠慮から、いつも後ろの方に置き去りにし
ている絶対に忘れてはいけない想い。やっぱり胸の奥に染み
込んでいきます。子供の気持ちを1番に考えること、考えて
もらえる関係を築くこと、肝に銘じなければ ‼ ( ^ ^ )ゝ
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