Niiと「わたしのものがたり」(その6)
1~2歳のころから読んであげていた絵本が、
娘のなかで、どんなふうに受け取られていくのかを
感じた日の会話を、いまもよく覚えています。
Niiが年中クラス、5才の時のことでした。
☆ ☆ ☆
「しゅんぺいくんが、ともひこたたいて、
おこられて泣いてた…」
「またぁ。ともくんも、こりないね~」
「つよしくんも、けんちゃんたたいて、
こんな悪い手は切っちゃおうか…って、
ハサミで切られそうになったんだよ」
そう言いながら、Niiは、自分の右手をチョキにして、
左手を切るマネをした。
「えっ?」
私は一瞬、返事につまった。
「チョキの手で?」
《手のハサミ》かと思い、聞き直してみた。
「ううん、ほんとうのハサミだよ」
「えーーー」
それでも、にわかには信じられなくて、
近くにあった本物のハサミを手に取って、
私は自分の手を切る仕草をした。
「こうやって?」
「うん。そうだよ」
「ええー、つよしくん、こわかったでしょう!」
「うん…」
「Niiだって、見てて恐くなかった?」
「こわかった…」
そう言いながらも、Niiの表情に、
「つよしくんはいつも悪い子だから…」
という気配を感じて、私は話を続けた。
「ともだちをたたいたら、つよしくんも悪いけど、
ハサミで脅かす先生と、どっちが悪いと思う?」
「…せんせい」
「こんど、ハサミは恐いからやめてくださいって
言わなくちゃね」
私がそう言うと、ようやくNiiははっとした顔をして、
本棚の本を取りに走った。
『これを、よませてあげればいんだよ』
その時、Niiが手にした本が、
『わたしのからだよ!』でした。
☆ ☆ ☆
わたしね、とっても だいじなもの もってるの。
それは、わたしだけのものよ。
…それは、わたしの からだよ!
…からだは いつも、とっても
だいじな わたしだけのものよ!
あなたが すきで、なかよくしたら、
とてもいいきもちになるよ。
だけど、いやーな きもちがしたら、
なかよくしては だめよ!
わすれないでね、からだは、とっても
だいじな、あなたのものだってこと!
『わたしのからだよ!』
ロリー・フリーマン著 キャロル・ディーチ絵 木犀社
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