ワニなつノート

ひとりごと(その2)


今回は、あるインタビュー記事を紹介します。

私個人の意見、感想は抜きで、インタビューの言葉を紹介したいと思います。

普通学級から養護学校、そしてまた普通高校へという道をたどる人は少ないですし、ましてそれを自分の言葉で話せる「重度の自閉症者」(著者紹介欄より)の人は珍しいと思います。

これから、自分の子どもが小学校高学年、中学校、そして高校進学について悩まれている方には、とても貴重な言葉だと思います。


      ◇


【 interview③  
自分が望むように学びたかった。】



……東田さんは小学校入学後から普通学級に在籍していましたが、小学校六年生の時に養護学校(現在の特別支援学校)へ転校。中学三年生までの四年間は、養護学校に通われました。


         


・・・高校生活は、東田さんに何を与えてくれたのでしょうか。


東田: 障害に関係なく、人は誰でも学ぶ権利があるということです。

僕は普通の高校生が学ぶ勉強をしたかったので、有意義な三年間でした。
おわり。



・・・高校生活で、特に印象的だったことはありますか。

東田: 高校一年生の時に行った、石川県でのスクーリングです。

小学六年生と中学の三年間は養護学校に通っていたので、障害のない同級生に接することが久しぶりでした。

僕には、普通のみんながすごく大人びて見えて、自分だけ時が止まったような四年間を過ごしていたことにショックを受けました。

僕はパニックになったり逃げ出したりしましたが、同じクラスの同級生たちが自然体で受け入れてくれたので、僕ももう一度この社会で居場所を探すことを決心しました。
おわり。



・・・先ほどは、どうして外をながめていたのでしょうか。

東田: 車のタイヤの動きを見るのが楽しくて、いつも見ています。遠くで見るタイヤの動きと、近くで見るタイヤの動きが違うので、それがおもしろく、長いあいだ見続けることもあります。

どうしてあんなふうに見えるのか、ずっと考えています。
 
近くのタイヤは、動く方向にちゃんと回っているのがわかるけれど、遠くのタイヤは、どちらに回転しているのかわからないように見えることがあり、それがすごく興味深いです。
おわり。



・・・小学五年生まで、普通クラスに通われていたそうですね。

東田: 授業中も、母が隣や後ろにいてくれました。

集団での指示が通りにくかったり、どこを勉強しているのかわからなくなったりすると、母が僕を助けてくれました。

もちろん、先生や友達も助けてくれましたが、それだけではみんなのように勉強するのが難しかったのです。
おわり。



・・・どうして、六年生の時に養護学校に転校されたのでしょうか。


東田: 確かに普通クラスではさまざまなことを体験することができ、僕にとって充実した日々だったと思います。

けれども、学年が上がるにつれて、みんなとの差は努力だけでは埋まらないことに気づきました。

僕にはみんながまぶし過ぎたのです。

それで、逃げるように、養護学校に転校しました。

クラスの友達は急な転校に驚いていました。
みんなが引き止めてくれた時は嬉しかったです。

「共生」ということを考える時、僕はこの小学校時代を思い出します。
おわり。



・・・養護学校は、いかがでしたか。

東田: まず驚いたのは、こんなにも多くの障害児がいることでした。

専門の勉強をされてこられた先生や優しい友達に囲まれて、ありのままの僕でもいいことを知りました。
おわり。



・・・養護学校の中学部を卒業後、養護学校高等部ではなく、普通高校に進学しようと思った理由を聞かせてください。

東田: 養護学校のみんなにとって必要な場所が、僕にとっても必要な場所ではないことに気づいたからです。

養護学校では、自分のやりたいことが見つかりませんでした。

僕は、もっと広い場所で自分の力を試してみたかったのです。
おわり。


・・・「養護学校から、普通高校へ進学する」ということは、よくあることなのでしょうか。

東田: ほとんどないと思います。

僕は勉強が好きだったので、もっといろいろなことを学びたかったのですが、養護学校では、発達検査やみかけの言動で僕の知能を判断されたため、自分が望むような勉強はできませんでした。
おわり。



・・・勉強の中でも、特に興味がある分野などはありますか。


東田: 歴史から学ぶことは多いです。

戦争や差別についてなど、人が繰り返し同じ過ちを犯すことに興味があります。
おわり。


・・・東田さんは「学ぶ」ということについて、どのように考えていらっしゃいますか。

東田: 僕は知的障害があると診断されたのにもかかわらず、みんなと同じような教育を受けることができました。

それが僕にとっての幸運だったと思います。

人生にとって重要な学びはふたつあるのではないでしょうか。

ひとつ目は、勉強をして、考える力を身につけること。

ふたつ目は、自分の幸せに気づくことです。

外から知識を吸収するだけでなく、自分の内面を豊かにするのも大事なことだからです。
おわり。



『跳びはねる思考  会話のできない自閉症の僕が考えていること』
東田直樹 著  イースト・プレス 2014年9月発行 1300円+税

(P124~133抜粋)
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