大学の哲学(臨床哲学・倫理学)の先生です。
本屋さんで、『「聴く」ことの力』とか『「待つ」ということ』、『〈弱さ〉のちから』というタイトルにつられてつい買ってしまいます。
で、うなずきながら読んだりもするのですが、私が知りたい「待つ」とか「弱さ」とは微妙に違うかなと感じます。
微妙の理由はよく分かりません。
先日も「自由のすきま」という新刊を見かけてつい手に取りました。
そこに「自尊心」について書かれている文章がありました。
NHK「課外授業へ ようこそ先輩」の撮影で、母校を40年ぶりに訪れたときのことです。
◇
【 「自尊心」という言葉がある。
「プライド」とも「誇り」ともいう。
これらの言葉はふつう、他よりも自分にどこか優れたところがあると感じたときに口にされる。
けれどもそんな「自尊心」はいつか砕かれる日がくる。
勉強ができても運動競技に強くても、上には上がいるからだ。
それはしょせん相対的なもので、高いとおもっていた鼻もいずれへし折られる。
その程度のものである。
撮影のために数日すごすうち、「自尊心」についてのこうした考えが誤りであることに思いいたった。
「自己を尊ぶ心」とは、自分を粗末にしない心のことである。
自分を粗末にできないとおもえるとすれば、それはどういうときか。
答えはかんたんで、他人がじぶんを大事におもってくれているとおもえるときであろう。
わたしはむかしと変わらぬ教室のたたずまいを見つめながら、しみじみおもった。
(丁寧に、立派に作られた校舎。)そういう気配のなかでわたしたちは幼い日々を送った。
そのときはそんなことは感じてはいなかっただろうが、気配は皮膚の下までたっぷり染み込んでいったはずだ。
他人にそのように大事にされてはじめて、ひとはじぶんを粗末にしてはいけないとおもえるようになる。
そう、自尊心は他者から贈られるものなのだ。】
(『「自由」のすきま』角川学芸出版)
◇
うなずきながらこの文章を読んだあと、私が思ったこと。
そうか、大学の総長をされていた人でも、臨床哲学・倫理学の先生でも、「自尊心」や「子どもが大事にされる感覚」について、六十歳を過ぎるまで、こんなふうには考えてこなかったのかー。
それなら、特別支援学校を熱心に勧める専門家の人たちが、考えたことがないのも仕方ないのかなー。
教えられたこともなく。考えたこともないことを、知っているはずもなし…。
まして、「分けて、個別に、教育すること」が、「子どもを大事にすること」だと信じているのだから、私たちの言葉が通じるはずがないのかもしれない。
私たちは、「分けずに、子どもを大事にする配慮・工夫」こそが、子どもの自尊心を守り育てることになると言い続けているのだけれど…。
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