小澤勲さんの「認知症」についての説明に
次のような言い方がある。
ふつうの大人としての人生を送ってきた人が、
ある日「認知症」と宣告される。
そして、固有名詞を奪われ、
自己決定・自主性を奪われ、
自分の人生を自分で生きることを奪われる。
無理だから、分からないから、できないからと、制限される。
周囲の人が、決める。
この人の「程度」にあった環境、ゲーム、仲間、
を用意してくれる。
この程度の環境が、この人には合っていると、
誰かが良かれと決めてくれる。
そこで奪われたものを奪い返そう言う。
「奪われたものの中身は何?」
そして、またこうも言う。
「できたことが、できなくなっていく」
そうして、「自分が自分であるという認知的自己は失われても、
感情的自己は残る」。
感情的自己とは、
≪人と人とのつながりのなかにいる自分≫だという。
ふと、思う。
もし、子ども時代の最初から、
その機会を奪われていたら、どうなるのだろうか。
感情的自己を自らに育む機会を奪われた子どもは、
どうなるのだろう。
認知的自己(テスト100点自己)を「発達」させるために、
「分からない授業はかわいそう」だからと言って、
もっとかわいそうなことをさせているのではないか。
もう一人の感情的自己がいるのに、その子は見えない。
いや、感じない。
誰からも相手にされない感情を、
子どもは、自分の中で大事にすることは
できなくなるんじゃないか。
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