子どもたちからの贈り物 (その3)
たとえば、ひなのさんのような立場の子どもに出会ったとき、
私は何を伝えることができるでしょう。
二人の少女のように、
ありのままの今の自分に自信を持ち、
社会の偏見や無理解、無関心に負けないでほしい。
障害や病気とともに堂々と生きていることに
自信を持ってほしい。
もしも、そういう生き方を知らずに、
人を傷つけている人に出会ったら、
まっすぐに思いを伝えてほしい。
うなずいてくれる人は、必ずいるから。
そう願うとき、私はどうしたら
その思いを伝えることができるでしょう。
「ひなのさんは、こうしたよ。だから、あなたも…」
と伝えるだけでは、彼女たちの本当の思いが
届くことはないでしょう。
「みかさんのように、みんなの前で、説明すればいい」
そんな言葉では、大事なものが
全部ぬけ落ちてしまうでしょう。
ただ、「一年生の前で話をすればいい」という
形を伝えるだけでは、あとはその子次第、
ということになってしまいます。
その子の能力、その子の資質の問題にされてしまいます。
そうした行動ができないのは、その子が弱いから、
甘えてるからと言われかねません。
そして、障害があるんだから、
そんなことに負けちゃいけない、
もっとがんばらなくちゃ、人一倍努力しなきゃ。
そんな言葉につながります。
伝えたいのは、「出来事」や
具体的な方法そのものではありません。
私たちは、その子が自分の課題に向かう動機と、
揺れる自分を支える安心を、
どう伝えればいいのかというふうに、
考えることが足りなかったように思います。
二人には確かに素晴らしい勇気と行動する力があります。
でも、彼女たちが伝えたいことは
「私の能力」ということではありません。
誰もが差別されず、みんながひとりの命を気遣う
やさしさのある世の中になってほしいということです。
私たちが応えなければならないのは、そのことです。
たとえ、みんなの前で上手に説明できなくても、
たとえ、しゃべらなくても、作文が書けなくても、
それでもひなのさん、みかさんのように、
安心と自信をもって生きてほしい。
自分の抱いた夢やあこがれを大事に生きてほしい。
そのことを伝えるためには、何が大切なのか。
そうしたことを考えるヒントが、
二人の贈り物のなかに詰まっています。
(つづく)
コメント一覧
![](https://blogimg.goo.ne.jp/image/upload/f_auto,q_auto,t_profile_square_m/v1/noimage/user_photo/gb25_noimage.png)
茂田 英子
最新の画像もっと見る
最近の「8才の子ども」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
- ようこそ就園・就学相談会へ(423)
- 就学相談・いろはカルタ(60)
- 手をかすように知恵をかすこと(27)
- 0点でも高校へ(392)
- 手をかりるように知恵をかりること(60)
- 8才の子ども(160)
- 普通学級の介助の専門性(54)
- 医療的ケアと普通学級(90)
- ホームN通信(103)
- 石川憲彦(36)
- 特別支援教育からの転校・転籍(48)
- 分けられること(67)
- ふつう学級の良さは学校を終えてからの方がよくわかる(14)
- 膨大な量の観察学習(32)
- ≪通級≫を考えるために(15)
- 誰かのまなざしを通して人をみること(132)
- この子がさびしくないように(86)
- こだわりの溶ける時間(57)
- 『みつこさんの右手』と三つの守り(21)
- やっちゃんがいく&Naoちゃん+なっち(50)
- 感情の流れをともに生きる(15)
- 自分を支える自分(15)
- こどものことば・こどものこえ・こどものうちゅう(19)
- 受けとめられ体験について(29)
- 関係の自立(28)
- 星になったhide(25)
- トム・キッドウッド(8)
- Halの冒険(56)
- 金曜日は「ものがたり」♪(15)
- 定員内入学拒否という差別(76)
- Niiといっしょ(23)
- フルインクル(45)
- 無条件の肯定的態度と相互性・応答性のある暮らし(26)
- ワニペディア(14)
- 新しい能力(28)
- みっけ(6)
- ワニなつ(352)
- 本のノート(59)
バックナンバー
人気記事