昔、ある本で、普通学級から養護学校に転校した6年生の少年のことを読んだことがありました。
転校の理由は、学校の受入れや級友との関係が悪いといったことではありませんでした。
親が付き添っての普通学級の学習についていくことに困難があった、というような感じだったと記憶しています。
本人は、養護学校に転校してよかった、と書かれていました。
私はそれらについて特に感想もなかったのですが、就学相談会に来る人の中にはその人の著作を参考にされている方が何人もいました。
そして、こう言われるのです。
小学校の低学年のうちは普通学級でいいかもしれないけれど、学年が進むと難しくなるのではないか、本人が苦しくなるのではないか。
彼のように高学年になったら、養護学校に移って専門的な教育を受けることが本人のためなんじゃないか、と。
そうした話題が出るたび、私は彼の事は知らないので、自分が出会った子どものことや、自分の考えを語ってきました。
ただ、その本の中でずっと気になっていたことがありました。
養護学校に転校して良かったという本人の理由の中に、ようやく親と離れて一人で勉強することができるようになった、という部分です。
普通学級では1年生から5年生まで、(自分だけが)親と一緒に普通学級に通った。
つまり、普通学級で学ぶためには「親の付き添いが必要」とされた。
養護学校は親なしで自分一人で学校に通い学べるようになってよかった。
…というふうに、私には聞こえたのでした。
だから、もし親の付き添いなしで通える普通学級だったなら、彼は養護学校に転校しよかったと言うのではなく、そのまま普通学級のなかで学ぶこと、考えること、感じることがあったんじゃないか。そんなことを思っていました。
でも、そんなことを彼と話すこともないだろうし、ずっと自分の中のこだわりの一つで終わるんだろうな、と思っていたのでした。
ところが、先日、彼の新しい著書を読んでいて、わたしの感じていたことがそれほど的外れではなかったと思えました。
(つづく)
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