ワニなつノート

普通学級と自立生活 (メモ2)

普通学級と自立生活 (メモ2)

ヒデの講演会とは別に、買っておいた本。
『助けてと言えない いま30代に何が』

この本は、一人暮らしの39歳の男性が、自宅で「孤独死」したことから始まります。死因は餓死。枕元には、「たすけて」と書かれた手紙が、投函されることなく置いてあったそうです。

何となく読み始めて、やっぱりNHKは面白くないなぁとか思っていました。ところが、ホームレス支援のNPOの奥田さんの話になって、がぜん面白くなりました。

もともと、ヒデの自立生活とは別物で読んでいたのですが、何かがつながりかけています。

    ◇      ◇     ◇

駅のアーケードで奥田さんが声をかけた、普通のスーツ姿の30歳の青年。路上生活を初めて二週間。声をかけられた日は、誕生日だった。
「誕生日にこんなところで寝たらアカンで」
そう言って、奥田さんは、若いホームレスの人宛のいつもの手紙と五千円を彼に手渡す。
彼は、戸惑いながらも、その夜は三千円台のビジネスホテルで熟睡。

「最初は警戒しました。…でも、スーツ姿の僕をホームレスだと見抜いてくれたことに少し安心したんですよね」

翌日から彼は、仕事の準備をする間だけでもと誘われ、奥田さんの家に世話になる。奥田さんの妻も子どもたちも自然体で迎える。
「なんか、いとこのお兄ちゃんが数日泊まるという感じなんです。子どもたちは普通に話しかけてくるし…」

それから、彼は奥田さんのサポートで生活保護を申請し、介護ヘルパーの訓練学校に進学を希望する。試験の日、彼が部屋に戻った後、奥田さんは取材の人たちにいう。
「これがダメでも次があるからな、僕はそう思っている……。彼だけじゃなくて、ホームレス状態になってる三十代の苦しみのひとつはね、失敗したとき、自分の周りに応援団がいないことなんよ。ひとつダメでつまづいてしまっても、誰かが隣で、「次いってみよ~」って応援したらええと思うんよ。かつて、それは親だったり友達だったりが担ってきた役割かもしれないけれど、あらためてそこを求めてもな。できる人がやったらいい。いまは僕が彼に「次行ってみよう~」っていう役割なんよ」

若くしてホームレスになった彼らが本当の意味で「自立」していくためには、失敗や挫折は避けられない…。

一週間後、彼は見事、合格。彼が引っ越す夜、取材者たちに話した言葉。
「奥田さんの家族との生活のなかで、当たり前のことが、毎日、自分に元気をくれたんです。ちょっと買い物の手伝いしたり、飯作ったり、風呂掃除したりしたとき、『ありがとう』って言ってもらえたり、『おいしい』って言ってもらえたのが、正直……嬉しいんです。人は一人では生きていけないなぁって思えたんです……」

自分で何とかしなければ、そう考え一人でホームレスになることを決めた彼が、奥田さんやその家族との出会いを通して、確実に自立への道を歩き始めていた。
「出会ったときの顔がウソみたいやな」
奥田さんは、男泣きしながら彼を送り出した。


『助けてと言えない いま30代に何が』
NHKクローズアップ現代取材班 文藝春秋
(164~178抜粋)

       ◇      ◇      ◇


hideの「自立」とは違う話として読み始めたのだけれど、この部分で、ふと「自立」ってなんだろうと思いました。

この本には、いったん仕事を失ってつまづきながらも、まだ若いし何とかなると思っている30代のホームレスの人のことが書かれています。調理師や運転免許などの資格をもち、一度はふつうに就職した人たちの自立がいかに困難か。そうであるなら、hideたちが同じ土俵で就職し、自立することがいかに困難であるかを思います。

そうして「資格」や「能力」がある人であっても、人とつながって生きている実感がなければ、失敗も何もかもを「自己責任」と感じ、自分一人で背負って餓死し、凍死していく社会。

「奥田さんの家族との生活のなかで、当たり前のことが、毎日、自分に元気をくれたんです。ちょっと買い物の手伝いしたり、飯作ったり、風呂掃除したりしたとき、『ありがとう』って言ってもらえたり、『おいしい』って言ってもらえたのが、正直……嬉しいんです。人は一人では生きていけないなぁって思えたんです…」

「そんなこと、30過ぎるまで分からないできたの?」と、
ふと思うのです。
「でも、出会えてよかったね」
「気づけてよかったね」
「hideは小学校の時からそうだったよ。
中学の時も。高校の時も。そして、きっと今も」


「彼」が学校で身につけてきた様々な「学力」と、
知らないままできた「人と人とのつながりの実感」。
hideが障害故にできなかった「学力」と、
学校にいる間いつも感じてきた「人と人とのつながりの実感」。

中学のとき、クラス全員が何らかの表彰を受ける機会に、
hideは、「一番、みんなをなごませたで賞」をもらいました(^.^)

小夜さんの声がする。
「人間関係をつくるには、いるべきときにいないとだめなのよ。」

私(たち)は、私たちの社会は、
本当に大事なことを、分からな過ぎなのだと思う。

hideは、「たすけて」という言葉も言わない。
そのひらがなの4文字さえ書かない。
でも、それを言葉にするまでもない、人と人とのつながりのなかで生きてきて、いまもその真ん中で生きている、そんな感じがしています。
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