子どもの自立 (その2)
前回、ホームに来る子のなかには、「子どもの自立」を認めてもらえない状況におかれた子が多い、書いた。
それは、「無条件の肯定的態度」が足りなかったということでもある。「無条件の肯定的態度」は、「子どもの自立」の素になるものだから。
◇
「子どもの自立」について書きたいのだけれど、「子どもの自立」って、どういうことだろう?
「自立」が、経済的自立、依存からの自立、親からの自立、無力からの自立、というイメージならば、そもそも「子どもの自立」はない。
むしろ、「自立」していないから「子ども」なんだという人もいるだろう。
このテーマで文を書いているとき、いつも浮かんでくる言葉がある。
「いきができる」
私の「子どもの自立」のイメージは、人工呼吸器をつけた1年生の女の子の言葉だ。
地域の小学校の普通学級に通い、1年生のおわりに、「この一年でできるようになったこと」をまとめる課題に、女の子は「いきができる」と書いた。
大人は、「自力呼吸ができない」から人工呼吸器をつけているのだと考えるだろう。
つまり、「いきはできない」だろうと、つっこみたくなる。
でも、生まれてすぐに呼吸器をつけて暮らしてきた子どもにとっての、呼吸器がいつも身の回りにあることは当たり前のことであり、「じぶんのできること」の感覚は違うのだ。
車の運転に眼鏡が必要な人は、「みえている」から運転が許されているのだ。そこで眼鏡がなきゃみえないだろう、とはならない。
呼吸器をつけているのが自分だけ、だというのも女の子は分かっている。
そのせいで、入学時にもめたことも分かっている。
そのせいで、みんなが2階の図書室に行くときは、一人で教室に残されてしまうことも分かっている。
そうした障害者差別の現実、呼吸器の現実を人生全部で分かった上で、「いきができる」と書いた。
「いきができる」と書ける子ども時代を生きることができた。
そのことが、立派な「子どもとしての自立」だと私は信じている。
「子どもの自立」が大切だとおもう理由の原点に、その言葉はある。
◇
※ 2009年に「ゆきみちゃんのこと」として4回ほど文章を書いています。
よかったら、こちらもどうぞ。
http://sun.ap.teacup.com/waninatu/564.html
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