裴緒が偽の使者であることを見破って、馬遵の出撃をおしとどめたのは姜維という若武者であった。さらに姜維は城外に伏せる趙雲の勢を急襲し、これを敗退せしめた。やむを得ず孔明はみずから全軍をひきいて天水の攻略にとりかかる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6a/23/df88e452bc70b8f640b80e662cb4138a.jpg?1703389476)
(以下、引用。)
各部の部将にたいしその孔明はかく訓示して押し寄せた。壕をわたり、城壁にとりつき、先手の突撃はさかんなるものだった。けれど城中は寂として抗戦に出ない。すでに一手の蜀軍は城壁高き所の一塁を占領したかにすら見えた。
すると、轟音一声、たちまち四方の櫓から矢石は雨のごとく寄手の上に降ってきた。なお壕の附近にある兵の上には、大木大石が地ひびきして降ってきた。
昼の間だけでも、蜀軍はおびただしい死傷者を壁下に積んだ。さらに、夜半の頃に及ぶや、 四方の森林や民家は炎々たる焰と化し、鬨の声、鼓の音は、横にも後にも、城中に湧きあがり、四面まったく敵の火の環と鉦鼓のとどろきになったかの思いがある。
「心憎き前立てではある。遺憾ながらわが兵は疲れ、彼の士気はいよいよ昂い。如かず、明日を期せん」
ついに孔明も総退却を令せざるを得なかった。彼自身も急に車を後ろへかえした。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます