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軽音楽談話室(廃屋)

「琥珀色に魅入られてしまった人生・・」

人間まがい / 山崎ハコ

2012-05-20 02:00:00 | 音楽
1.誰が呼ぶ
2.きょうだい心中
3.ムラサキの花
4.からす
5.呪い
6.人間まがい
7.暗闇
8.三つの花
9.心だけ愛して
1979

「貞子3D」が話題となってますが、そんな程度のものは一瞬にして地の底へ葬り去ってしまう日本最強の闇の音楽、山崎ハコの「人間まがい」です。日本最強のスプラッター・ブラック・メタル(メタルじゃないしスプラッターじゃないけれど)。確かに暗い雰囲気の曲が多かったハコちゃんですが、元々この時代のフォークというのはそんな物でした。デビューアルバムの「気分を変えて」なんか勢いがあって素敵な曲でしたが。それが突然究極の極地に至ってしまったのがこの作品です。で「呪文」につきるのですが、恐ろしすぎると言う感想しか浮かびません。

1曲目 静かなオルガンの音色、沈みきった様なイントロ。典型的な暗いギターの弾き語り、行き場のない居場所のない、生きる術も奪われた様な、実はとても暗い歌。他の曲が図抜けすぎていて「普通」に聞こえてしまいますが、切々と歌い上げる雰囲気はこの世の物ではない。

2曲目 近親相姦の歌、妹を好きになった兄が妹の恋人を殺したが、実は変奏した妹であった。結局兄弟心中となり、ドロドロドロドロ・・・・昭和か大正の歌謡演歌の様な雰囲気がまた不気味さを助長する。悲壮感は漂うけれど「暗さ」と言う感じではない。

3曲目 これは普通ですね、「ムラサキの花見つけた」と言うだけ、裏はない。オクターブ奏法のジャズ・ギターとエレピの雰囲気が最高に素敵なナンバー。このアルバムではジャズ系の音が所々で活躍しています・・・・・が超弩級の不気味の曲で満載。

4曲目 沈みきったギターのアルペジオ、弾き語りで朗々切々と歌い上げる。これも凄い曲です。カラス版なまはげ、「泣く子はどこじゃい カァ」「さらっていこかい カァ」、風の音が不気味に響き、東北の何も無い原野を想い浮かべる。

5曲目 日本最高のブラック・メタル。フルブラストで一寸釘を叩きまくる・・・・そんなことはないか。
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  こんこん、こんこん、釘をさす
  こんこん、こんこん、釘をさす
  畳が下から笑ってる
  こんこん、こんこん、釘をさす
  ワラの人形、釘をさす
  自分の胸が痛くなる。

  こんこん、こんこん、釘をさす
  歌いながら、釘をさす
  くぎを覚えろ、覚えろこの歌を 

  こんこん、こんこん、釘をさす
  亡くなるまでは、釘をさす
  涙ポトリと、またくぎになる 

  こんこん、こんこん、釘をさす
  ワラの人形、血をながす
  泣いてるように、いったい誰の血

  こんこん、こんこん、釘をさす
  あたしいつまで、釘をさす
  誰がこうした、恨んで、釘をさす

  あたしを、こうした、恨んで、首をさす

  こんこん、こんこん、釘をさす
  こんこん、こんこん、釘をさす
  こんこん、こんこん、釘をさす
  こんこん、こんこん、釘をさす 

  こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん、こんこん…
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始まりの曲の雰囲気に、それほどの不気味さは感じられないのですが(後からギターのアルペジオが不気味に思えますが)、ボーカルが始まった瞬間。聞き手の体に呪いが絡みついているのに気が付いてしまう。可憐で健気で病弱な少女が、感情を全て失った無機質な声で歌う上の歌詞・・・・・まさに「恨み」の塊、「呪い」の権化。異空間から響く様なボーカルがとにかく凄い。

6曲目 勢いのある歌謡ナンバー、昔良く聞いた青春ドラマの主題歌の様な雰囲気。ただし地縛霊が歌う歌。妙な明るさが漂うのが逆に不気味。地縛霊にこんな気さくに歌われてもねぇ・・・・

7曲目 踏みしめる足音、ブルージーなギターが鳴り響くイントロは最高の雰囲気で。「ふと気が付くと、ここは何処・・・・」既に死んでます。ユッタリとしたブルース・ロックに乗って死後の後悔・・・幽体離脱出来ない・・・死体に縛り付けられた霊の呟き・・・歌詞の内容はどうしようもなくダーク、ブラック・メタルなんて吹っ飛んでしまいます。ブルージーな演奏は一聴の価値有り。

8曲目 アコギのアルペジオ、漂うスキャット、典型的なフォークナンバーのイントロ。儚げなボーカルが漂うテーマ、音域高いですねぇ、死んでしまうぐらい。白い花、赤い花咲いた・・・倒錯しきっています・・・スキャットの嵐、歌詞は殆ど無い。おおっ黒い花?落ちたのか??不気味なナンバーです。 

9曲目 ラストは郷愁を誘う演歌風・歌謡曲風・フォークナンバー、恋の歌かな?「心だけ愛して」と連呼し、「あなたが欲しい」・・・・間奏の泣きのギターが素晴らしい。普通すぎて逆に怖い。シングルカット用か?

何回聞いても凄い作品ですね、人間として超えてはいけない一線を何のためらいもなく一瞬にして越えてしまい、魔の世界に違和感なく溶け込んでいる様な作品、特に「呪い」の凄まじさは筆舌に尽くし難し。

私のテリトリーの不気味ちゃんと言えば

谷山浩子:初期作品はまさに「不気味」の塊、幻想的でオカルトチック、「幸せなんて来るはずがない」と言う捻くれた不気味さ。時々・・・バラバラにするのが好きです。スプラッター。

森田童子:とにかく「暗い」と言う言葉はこの人のためにある。「幸せ」なんて言葉は聞いたこと無いのでしょうね。自殺系チェンバー・ブラック・メタル。

戸川純:「狂気」と言う言葉がこれほど似合い、「本物だろう」と思ってしまう人もいるのでは。でもその爆発する狂気が背中ゾワゾワ物の最上級の音楽。大好きです。

中島みゆき:殆ど聴きませんし1曲飛び切りの「アザミ城のララバイ」だけですが、知的な不気味さ。清々しささえ感じます。



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