乱鳥の書きなぐり

遅寝短眠、起床遊喰、趣味没頭、興味津々、一進二退、千鳥前進、見聞散歩、読書妄想、美術芝居、満員御礼、感謝合掌、誤字御免、

白いカラス /アンソニー・ホプキンス 二コール・キッドマン

2006-08-15 | 映画

  THE HUMAN STAIN 

      白いカラス    

http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3448

   カラスでなくって、ごめんなさ~~い。岡山後楽園の鶴です。

             満足度  ★★★★★

             感動度  ★★★★☆

             キャスト  ★★★★★

 

             2003年 アメリカ作品 108分

              監督  ロバート・ベントン

             原作   ハリー・レニックス

             キャスト  アンソニー・ホプキンス 

                    ニコール・キッドマン  

                    ウェントワース・ミラー 

                    ゲイリー・シニーズ 

                    エド・ハリス      他  

 

 テーマは人種差別と愛。

 カラスがカラスであることを隠して生活、しかし白くともカラスはカラス。

 自分を隠して得た安定した生活は人種差別とも取れる一つの単語(spook=幽霊→二グロ)から一挙に思わぬ方向に崩壊していく。

 白いカラスは無意識の意識下で故意に口にしてはいけない言葉を選び出していた。

 自分の内なる葛藤と孤独はこの上なく深い。

 地震の矛盾による空しさや侘しさ、悲しみが、しんしんとこちらに伝わる。

 

 カラスであるがゆえに初めの恋の結婚は失敗。

 差別発言にも取れる単語を発したばかりに教授の地位を追われ、とてを知った妻はカラスの腕の中で死ぬ。

 このときのほんの数分の出来事は実際映画上では一分程の時間だが、不樽はだんだんと暗くなっていき、次にカメラアングルは後ろに引いてゆく。

 同質だったカメラはドアを額縁のように使い、遠近感を出して時間の経過を表現した後、妻の右手は力を無くして宙に落ちる。

『もう今となっては昔のことですが・・・』といった男の言葉が聞こえてきそうで、表現が上手い。

 

 男は孤独な境遇のお互いにひきつけあう女と出会う。

 そしてすぐに傷の穴を埋めあう。

 女には暴力的で威嚇的な元夫が付きまとっていた。

 各人が言い表せない過去を背負った三人。

 色々な事件や気持ちの入れ違いの後・・・

 

 男は女にカラスであったことを初めて打ち明けようとする。

「君に本当のこと・・・言っておきたいことがある・・・」

 女は男を見つめる。

 後の言葉は続かず二人は車に乗り込む。

 雪深い一本道。

 しばらくすると二人を待ち受けていた二人をねたむ元夫が別の車で不樽が通りかかるのを待ち受けていた。

 元夫がタバコに火を付けようとしたとき、二人の車のエンジン音が近づく。

 元夫はエンジンをかけなおし、二人の乗った車はハンドルを切りそこね、道からはずれ、転倒して二人とも即死。

 だが・・・

 二人の死は元夫の車が一因をしめてはいるものの、直接的な原因は・・・二人の車内の会話『白いカラス』の『真実の告白』による物だった・・・

 

 映画でははっきりとは示されてはいない直接的原因の解明は、やはり孤独で過去を背負った作家と元夫の会話でぼんやりとほのめかされている・・・

 元夫は真っ白の世界の中で池の上で穴を開け、魚を釣っている。

 そこへ作家がとぼとぼと歩いてきて二人はぼそぼそと話す。

「本当は君くらいの息子と、ここで坂なる地をしていたかったんだ。」

その元夫のしみじみと切ない言葉は作家の心の奥底に染み渡る。

『この男も自分と同じで孤独な一個の人間に過ぎない・・・』

作家は今来た白い中とぼとぼと帰っていく・・・

「本が書きあがれば、一冊送ってくれよ。」

元夫の言葉に悪びれや悪意はなかった。

 

 この映画は後半から画面は『白』にこだわっている。

 自分の『黒』を女に伝える一本道は雪深く、あくまでも白い。

 その白さと道のつながりは男の将来の暗示でもあり、表現はヒッチコックの『白い恐怖』を思い浮かばせる。

 そしてラストの氷の上出の元夫と作家の対話シーン。

 ここでも画面は『寒色の白』で表現されている。

 広い池の上だが作家はいった道をまたとぼとぼと帰っていく。

 自分では変えることのできない運命に支配さレ、人は孤独という器の中で生きている・・・

 やはり一本道、それはまるで人生を切なさを暗示している肌寒さの感じられる表現だった。

 

 

 


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