(写真は能面です。)
記録だけ 2008年度 24冊目
『木々高太郎全集 3』
著者 木々高太郎 朝日新聞社 上下有り・398ページ 980円 昭和45年12月25日 第1版発行
三月二十一日。 先日から読み続けていた『木々高太郎全集 3』を読了。 第1、第2にもまして第3も楽しめた。
第3巻には次のような作品が載せられている。
「風水渙」(1937) 「死人に口あり」(1937) 「秋夜鬼」(1937) 「柊雨堂夜話」(1938) 「永遠の女囚」(1938) 『笛吹 - 或るアナーキストの死』(1940) 「宝暦陪審」(1939) 「婚礼通夜」(1939) 「ベートーヴェン第十交響曲」(1940) 「ストリンドベルヒとの別離」(1940) 「東方光」(1941) 「葡萄」(1942) 以上短編10と長篇1作品。 短編においては「」、長篇は『』という形で今回も記録することにした。
「秋夜鬼」は奥深く、じっくりと読み上げると、そうとうおもしろい。
長篇の『笛吹 - 或るアナーキストの死』はかなりおもしろい。 単行本にもなったこの作品は、春陽文庫版では「或るアナーキストの死」というサブタイトルが付けられたらしいが、果たしてそれだけとは言いがたい趣深い小説といえる。 この作品も探偵小説というよりも、心情の揺れ動きが細やかに表現されており、純文学といって過言ではない。 非常に出来のよい小説で、のめりこんで 楽しむことができる。
「葡萄」の冒頭は良い。言葉の流れが美しい。 「君は果物で何が好きかね」そうきかれれば、己(おれ)は躊躇なく答える。葡萄だ。あの粒々の、紫色の房だ。それが棚から垂れ下がっていれば、尚のこといい。葡萄だ。 本書にしてこのたった三行だが、私の心をとらえる。 読み進むにつれ、木々氏の内面的考えをかいま見ることが出来る。 他の小説とはまた違った角度からとらえられた 特徴的な一作品と感じた。
朝日新聞社 木々高太郎全集 全6巻(1970-1971) 1 「網膜脈視症」(1934) 「睡り人形」(1935) 「青色鞏膜」(1935) 「恋慕」(1935) 「就眠儀式」(1935) 「完全不在証明」(1935) 「医学生と首」(1935) 「幽霊水兵」(1935) 「決闘」(1936) 「胆嚢」(戯曲)(1935) 『人生の阿呆』(1936) 「印度大麻」(1936)
2 「女と瀕死者」(1936) 「無気味な老医]師」(1936) 「緑色の眼」(1936) 「盲いた月」(1936) 「死の乳母」(1936) 「夜の翼」(1937) 「ヴェニスの計算狂」(1937) 「大浦天主堂」(1937) 「女の政治」(1938) 「水車のある家」(1940) 「文学少女」(1936) 『折芦』(1937) 「女の復讐」(1937) 「蝸牛の足」(1937) 「封建性」(1937)
3 「風水渙」(1937) 「死人に口あり」(1937) 「秋夜鬼」(1937) 「柊雨堂夜話」(1938) 「永遠の女囚」(1938) 『笛吹-或るアナーキストの死』(1940) 「宝暦陪審」(1939) 「婚礼通夜」(1939) 「ベートーヴェン第十交響曲」(1940) 「ストリンドベルヒとの別離」(1940) 「東方光」(1941) 「葡萄」(1942)
4 「呪縛」(1946) 「新月」(1946) 「月蝕」(1946) 「無花果」(1947) 『彼の求める影』(1957) 「冬の月光」(1948) 「老人と看護の娘」(1949) 「人形師の幻想」(1949) 「少女の臀に礼する男」(1950) 「夜光」(1952) 「幻想曲」(1952) 「X重量」(1953) 「六条執念」(1954)
5 『わが女学生時代の罪』(1949) 「タンポポの生えた土蔵」(1954) 「千草の曲」(1955) 「バラのトゲ」(1955) 「オリムポスの山」(1956) 「異安心」(1957) 「細い眼の孫娘」(1958) 「悪い家系」(1959) 「銀の十字架」(1962) 「失踪」(1967) 「幻滅」(1968)
6 『随筆・詩・戯曲ほか』
|